ことしも海や川での水難事故相次ぐ どう防ぐ?

「『川や海で危険でない場所はありません』『大丈夫だろう』の油断が取り返しのつかない結果に繋がります」(日本水難救済会のXより)

猛暑の夏、海やプールなどでの水遊びの機会も増え、全国各地で水の事故が相次いでいます。この土日も10歳の女の子を含む8人が死亡、1人が行方不明になっています。

水難事故が繰り返し起きている場所があるのを知っていますか?
また、被害に遭わないための備えとは?

水難事故が繰り返し起きる場所 最新のマップは

全国で相次ぐ水難事故。同じ場所で何度も、事故が発生している場所もあり、川や湖でおきた事故の調査や研究をしている河川財団は、危険な場所を事前に把握したうえで出かけてほしいと呼びかけています。

河川財団は6月、過去に水難事故が発生した場所などを記した最新のマップを発表しました。

過去10年間に3件以上の水難死亡事故が発生した場所

それによりますと分析を始めた2003年以降、過去10年間に3件以上の水難死亡事故が発生した場所は東京の多摩川や埼玉の荒川など全国で46か所にのぼっています。

このうち、岐阜県を流れる長良川水系では上流から中流までの8か所で複数回、水難死亡事故が発生していて、特に岐阜市の千鳥橋付近では20年余りの間に8件発生し、9人が亡くなっています。

河川財団によりますと、こうした水難事故が多発している場所は地形などが影響して川底が急に深くなっていたり、流れが速かったりする特徴があるということです。

また、近くに河原やキャンプ場などがありレジャー目的で大勢の人が訪れる所も複数あり、川で遊んだり泳いだりしている際に溺れるなどして事故にあう人が多いとみられるということです。

河川財団河川・水教育センター 菅原一成主任研究員
「水難事故が発生しやすい場所を事前に把握し、ライフジャケットなどを準備することで水難事故を防ぐようにしてほしい」

水難事故の再現映像で注意を呼びかけ

河川財団は水難事故がおきたときの水中の状況を人型の模型を使って再現した映像をホームページで公開し、注意を呼びかけています。

流れの速い川で足が川底の石に挟まる「フットエントラップメント」。

水中の木やコンクリートブロックなどに体が引っ掛かる「ボディエントラップメント」と呼ばれる状況では、水圧で体に大きな力がかかり、ライフジャケットを着ていても浮上するのが難しくなる様子がうかがえます。

去年5月、群馬県みなかみ町の利根川でラフティングのボートが転覆し19歳の大学生が死亡した事故がありましたが、地元の消防などによりますと水中の木に体が引っ掛かり動けなくなったとみられるということです。

このほか、堰堤の近くでは流れが反転する「循環流」に巻き込まれ脱出できなくなったり、空気を含んだ泡の多い水「ホワイトウォーター」の中ではライフジャケットを着けていても十分な浮力が得られなかったりするほか、大きな岩の下にできた隙間に体が引っ張られるとおぼれたりするおそれがあるということです。

水遊びの前に 事前の準備が最重要

水難事故の際に救助を行うボランティアの支援をしている日本水難救済会は、水難事故を防ぐには事前の準備が最も重要だとしています。

具体的には海や川へ行く前に天気予報を確認すること、目的地の海や川で過去に水難事故が起きていないか、また遊泳禁止の場所がないかを確認することです。

もし、天候が悪くなる予報となっている場合などは中止することも必要だとしています。

また、海や川へは1人で行かず、連絡が取れるようにしておく必要があるほか、泳ぐ際には救命胴衣を身につけることや河原や海水浴場でお酒を飲んだあとなどに思いつきで水に飛び込まないことも水難事故を防ぐうえで重要だとしています。

特に子どもと一緒の場合には保護者もそばで泳ぐことが大切で川の場合は、子どもが流されても救助できるよう保護者が子どもの下流側にいることもポイントだということです。

海上保安庁で救難や警備の業務に長年携わる

日本水難救済会の遠山純司理事長
「自分には泳力があると思い込み、備えがおろそかになっているケースも報告されている。自然を甘く見るのは極めて危険で、100%安全な海や川はないと認識していただきたい」

また、もし流されてしまった場合には、救助が来るまでの水面上での待ち方が重要だといいいます。あおむけに静止をして、大の字になって水に浮かぶ「背浮き」の状態で平泳ぎのように手や足をゆっくり動かすと揚力が加わり、より浮力を得られるということです。また、川の場合には、顔に水がかからないように足を下流に向けるほか、川底の岩や木などにぶつからないように体を浮かせることが大切だということです。

遠山理事長
「守るべきポイントをしっかりと頭に入れて危険な状態に陥らないための準備を最大限行って、そのうえで海や川を楽しんでほしい」

SNSで毎年話題に 岐阜県の水難事故に関するQ&A

岐阜県は、水難事故を防ごうとウェブサイトに水難事故の危険性や川などで遊ぶ際の注意点などについてQ&A方式で答えていて、その熱心な回答ぶりからSNSで毎年、夏の時期に話題になります。

「Q&A」は全部で101あります。

Q1
「岐阜県内の河川で、安全に泳げる場所はありますか?」
A1
「ありません。河川は自然そのものであり、安全は一切保証されていません」

Q4
「泳がなければ、少しくらいなら川の中に入っても大丈夫ですか?」
A4
「川を甘く見ると重大な事故につながります。少しでも川の中に入るときは、ライフジャケットを必ず着用するとともに、十分注意して行動してください」

Q24
「川で少し子どもと水遊びするだけなのに、ライフジャケットを着用するのは大げさではないですか?」
A24
「毎年、全国の河川で痛ましい水難死亡事故が数多く発生しています。ライフジャケットを着用することは大げさどころか、最低限の水難事故リスク対策です」

Q37
「要するに、ライフジャケットを着用すれば安全なんですよね?」
A37
「『100%安全』ではありませんが、溺死リスクの低減になります」

101の回答の中で「ライフジャケット」は240回登場し、安全対策の基本としてライフジャケットの着用を何度も繰り返し、強く呼びかけています。

Q&Aは岐阜県内の川で毎年、水難事故が発生していることから啓発活動の一環として2020年6月にスタートさせました。

当初は29問でしたが、毎年のように更新を繰り返し、5年目のことしはついに100問を突破しました。最後の101問めの質問は…。

Q101
「岐阜県の夢は何ですか」
A101
「私たちが愛する川での水難事故がなくなり、世界中のすべての人々が幸せに生きることです」

それでも岐阜県が統計を取っている一級河川ではことし1月から6月末までに水難事故で12人が亡くなっているということです。

岐阜県河川課の担当者
「水難事故は減っていないので、これからも地道な啓発活動が必要だと考えています。水難事故がなくなるように、そしてライフジャケットの着用が通常のことになるようにこれからも啓発活動に力を入れていきたい」