仏 議会下院選挙 きょう決選投票 極右政党が第1党の勢い

フランスでマクロン大統領が電撃的に解散した議会下院の選挙は、7日に決選投票が行われます。マクロン大統領の与党連合と左派の連合は選挙協力を進めていますが、事前の議席予測では、極右政党が第1党になる勢いです。

フランスではマクロン大統領が6月、電撃的に解散した議会下院にあたる国民議会の選挙の決選投票が、7日に行われます。

1週間前に行われた1回目の投票では、極右政党の国民連合と連携する勢力が、得票率で30%あまりを獲得して首位に立ちましたが、577の選挙区のうち当選者が決まらなかった501か所で決選投票が行われます。

これを受けて国民連合に対抗しようと、マクロン大統領率いる中道の与党連合と左派の連合、新人民戦線が競合する選挙区で候補者の一本化を行いました。

調査会社イプソスが5日に発表した、世論調査に基づく議席予測では
▽国民連合が連携する勢力とあわせて175から205議席
▽新人民戦線が145から175議席
▽与党連合が118から148議席
を獲得するとしています。

新人民戦線と与党連合は1週間前の予測よりも議席を伸ばす見通しですが、国民連合が初めて第1党になる勢いです。

また、1回目の投票では投票率が66.7%で2年前の前回に比べ19ポイントと大幅に上がりましたが、決選投票でも同じ水準の投票率が見込まれています。

決選投票は日本時間の7日午後3時から始まり、即日開票されます。

与党連合と左派連合の選挙協力

決選投票に向けてマクロン大統領の与党連合と、左派の連合の「新人民戦線」は、極右政党の国民連合の勢いに歯止めをかけようと、候補者の一本化を進めてきました。

地元メディアは当初、6月30日に行われた1回目の投票で当選者が決まらなかった501の選挙区のうち、決選投票で3人以上で争う構図の選挙区が、300を超えるという見方を伝えていました。

このため与党連合と左派の連合の指導部は、国民連合に対抗する票が分散することを避けるため、候補者を1本化する方針を示し、地元メディアの集計では、決選投票に向けた立候補の締め切りとなる現地時間の今月2日夕方までに、与党連合と左派の連合から200人以上が立候補を辞退したということです。

この結果、3人以上で争う選挙区は大幅に減り、5日に公開された複数の世論調査機関の予測では、候補者の一本化の前と比べ、国民連合と連携する勢力の獲得議席は減少する可能性があるという見通しが示されています。

一方で、選挙協力がどこまで効果を上げるか、疑問視する声も出ています。

背景には与党連合と、左派の連合の最大勢力で急進左派の政党「不服従のフランス」が、互いの政策を厳しく批判してきたことがあります。

両陣営の協力について、フランス政治に詳しいパリ大学のバンジャマン・モレル准教授は「『国民連合の絶対多数に反対する』ということだけが両陣営の唯一の共通点だ。これを除けば両者の間に共通点はない」と指摘し、辞退した候補者の支持者が、決選投票を棄権するケースも出てくるという見方を示しています。

躍進の背景 若き党首のバルデラ氏の存在

極右政党・国民連合が大きく躍進した背景の1つに、若き党首であるジョルダン・バルデラ氏の存在が指摘されています。

バルデラ氏は、1995年生まれの28歳。イタリア系の両親をもち、パリ郊外のセーヌサンドニ県の公営団地で育ち、高校生のときに国民連合の前身、「国民戦線」のメンバーとなりました。

この地域は貧困や治安の問題も深刻で、バルデラ氏は政治家を志した理由について、「母親と郊外での貧しい生活を経験したことでこの国での暮らしをより良いものにしたかった」と話しています。

そして、党の顔であるマリーヌ・ルペン氏に認められ、23歳でヨーロッパ議会の議員に当選したのち、2022年にルペン氏のあとを引き継いで党首に就任しました。

濃紺のスーツを着こなし、テレビの討論番組でも堂々とした発言ぶりで、地元メディアでも「極右のスター」と表現され、18歳から24歳の若者が選ぶ若手政治家の人気ランキングで、与党のアタル首相を抑えてトップとなりました。

選挙戦略ではSNSを積極的に使い、動画共有アプリTikTokのフォロワーは190万人を超え、党の支持層を、若者や女性に広げたと指摘されています。

今回の議会選挙ではみずからの勢力が、過半数を握れば、首相に就任する意欲を見せています。

バルデラ氏についての本をことし5月に出版したジャーナリスト、ピエールステファン・フォール氏は、バルデラ氏の党首への起用は、穏健化路線を進める国民連合の戦略だったと分析しています。

フォール氏は「バルデラ氏はルペン氏の要求で作られたマーケティングの産物であり、脱悪魔化を体現する存在だ。彼の最初の任務は人に好かれることだった」と述べ、ルペン氏とタイプが異なるバルデラ氏を党首に据えることで党のイメージを変えるとともに、若者や女性のみならず、都市部に住む人や穏健派の右派など、幅広い層を取り込む狙いもあったと指摘します。

そのためバルデラ氏は、相手に好印象を与えるための表情や話す内容などについての訓練を、徹底して受けたということです。

一方で、本人は日和見主義であり、強い政治的な主張はないと指摘します。

そのうえで「彼にとって最も重要なのはイデオロギーではなく、キャリアと成功だ。もし彼が首相となれば本当の首相はルペン氏とその側近になるのは明らかだ」と述べ、バルデラ氏が首相に就任した場合、ルペン氏の意向に沿った政権運営を行うという見方を示しています。