林官房長官 米軍の性暴力事件 自治体に情報伝える運用を開始

沖縄でアメリカ軍兵士による性暴力事件が相次いでいるのをめぐり、林官房長官は、今後は捜査当局が公表しないものであっても、可能な範囲で政府側から自治体に情報を伝える運用を、5日から始めたことを明らかにしました。

沖縄では、去年以降相次いだアメリカ軍兵士による性暴力事件の情報が、政府側から県側に伝えられていなかったことが明らかになり、政府は、被害者のプライバシーなどを配慮した判断だと説明してきましたが、地元では反発が強まっています。

こうした状況を踏まえ、林官房長官は午後の記者会見で、これまでの対応を見直し、今後は、沖縄県内でのアメリカ軍関係者による性暴力事件については、捜査当局が公表しないものであっても、可能な範囲で政府側から自治体に情報を伝える運用を、5日から始めたことを明らかにしました。

具体的には捜査当局の事件処理が終了したあと、捜査当局から外務省を経て防衛省に情報を共有し、最終的に防衛省が地元自治体に伝えるとしています。

一方、運用に際しては、被害者のプライバシー保護などに留意する必要性を強調し、情報の不適切な取り扱いが生じれば再発防止策を検討し、それが十分順守されない場合には伝達をとりやめることもありうるとしています。

林官房長官は「沖縄ではアメリカ軍人による犯罪予防の観点から迅速に対応を検討する必要があることに留意し、可能な範囲で地方自治体に対しての情報伝達を行う」と述べました。

沖縄 玉城知事「情報共有の運用見直しは一歩前進」

沖縄県の玉城知事は5日夕方、県庁で記者団の取材に対し「政府が情報共有の運用を見直したことは一歩前進だ。迅速に見直しに取り組んだことは大きなことだと思う」と述べました。

また、玉城知事は、5日、沖縄県警察本部の本部長から、在日アメリカ軍の性犯罪で広報しない案件については、那覇地方検察庁と相談の上、容疑者を検挙や送致した際にできるかぎり情報を県に提供する方針が伝えられたことを明らかにしました。

玉城知事は「県警のこれまでの対応について、しっかり考えていただいた上で県と協力しようということなので、県民にとってはより安全・安心な生活に向けての大切な一歩だ」と述べました。

このほか、アメリカのエマニュエル駐日大使が兵士への研修や教育に重点的に取り組むなど、改善策を講じる考えを示したことについて「大きな一歩だと思うが、県としては、いつの段階で、どういう対象にどういう内容のプログラムの研修をしたかの情報を提供してもらえれば、県民の安心につながると思うので、機会があれば要請したい」と述べました。

県民の声 “しっかり伝えてほしい”

沖縄県内でのアメリカ軍関係者による性暴力事件をめぐり、政府が、可能な範囲で自治体に情報を伝える運用を始めたことについて、うるま市の40代の男性は「いまさらという感じで、沖縄のことが後回しにされているように感じます。自分にも子どもがいるので注意しないといけません。米兵が起こした事件に関する情報は県民に知らせてほしい」と話していました。

那覇市の40代の女性は「あまり信用していないです。変わらないだろうという思いは心のどこかにあります。ことばで発するなら責任を持ってほしいです」と話していました。

浦添市の70代の女性は「今回のような事件はちゃんと伝えるべきだと思うので、起こったことはしっかり伝えてほしい」と話していました。