酷暑 各地で熱中症を防ぐ取り組み

4日は西日本と東日本を中心に猛烈な暑さとなりました。厳しい暑さが続くなか、各地ではさまざまな対策が行われています。
消防の現場では、スマートフォンのカメラ機能を使って、迅速な応急処置につなげる取り組み。また、公共施設を「シェルター」として利用してもらう取り組みなど。
各地の動きを追いました。

熱中症で搬送増加 “「Live119」を知って” 消防

119番通報の際にスマートフォンで現場の映像を送るシステムの導入が広がっています。熱中症などで搬送者数の増加が見込まれる中、消防はシステムを知ってほしいと呼びかけています。

「Live119」というこのシステムは、スマートフォンで現場の映像を消防の指令室に送るシステムで、導入が広がっています。

このうち、さいたま市消防局では去年4月に導入し、これまで、火災や救急事案など、あわせて11件で活用しています。

消防局によりますと、通報者と消防側、双方にとって、より正確に情報を伝えられるのがメリットで、これまでに心肺停止状態の人への応急処置の方法を伝えたり、通報者のいる場所がわからないときに、送ってもらった映像で特定するなどのケースがあったということです。

さいたま市消防局の管内では去年1年間で7月の搬送者数が最も多く、今後、熱中症などで搬送者数の増加が見込まれていることから、システムの周知を図っていきたいとしています。

さいたま市消防局警防部指令課の澁谷信之主査は、「熱中症の通報の際にも必要に応じて、Live119をお願いする可能性がある。依頼があったら指示に従って落ち着いて対応してほしい」と話していました。

「Live119」 32都府県の143消防本部で導入

「Live119」は、スマートフォンのカメラ機能を使って現場の映像をリアルタイムで消防の指令室に送るシステムです。

指令室が119番通報を受理し、音声通話だけでは状況の把握が難しい場合など、職員が必要だと判断した際に、通報者のスマートフォンにURLが記載されたショートメッセージを送ります。

そして通報者が送られたURLにアクセスすると、現場の映像がリアルタイムで指令室に送られる仕組みで、救急車が到着するまでの間、指令室の職員が映像を確認しながら通報者に具体的な応急処置の方法などを指示することができます。

システムを開発した企業によりますと、4年前に初めて導入されて以降、ことし5月末時点で32の都府県の143の消防本部で導入されているということです。

今後、通報者がよりスムーズに処置ができるようにシステムの改良も進められています。

一方、システムのことを知らずに興味本位で撮影していると勘違いして撮影を制止されるケースもあるということで、一般の人たちへの周知が課題となっています。

神奈川の病院 熱中症の救急患者の対応に追われる

関東地方の各地で熱中症警戒アラートが発表され、猛烈な暑さとなった4日、神奈川県内の病院では、熱中症の救急患者の対応に追われました。

神奈川県川崎市の新百合ヶ丘総合病院には、4日午前11時40分ごろに90代の男性が熱中症の疑いで運ばれてきました。

男性は1人で外に出かけていたところ路上で歩けなくなり、近くにいた人が通報して搬送されました。

男性は一時、歩くのが難しい状態で発熱もあったということで、医師が体の様子を確認していました。

男性は熱中症に伴う脱水症状があるものの、検査では異常はなく、軽症だということです。

この病院では例年、6月ごろから熱中症の患者が増え、この1か月で1日に平均2人から3人が搬送されていますが、ことしは5月の大型連休明けから暑さが厳しくなるなど、患者の増える時期が前倒しになってきているということです。

新百合ヶ丘総合病院救急センターの伊藤敏孝センター長は、「高齢者は水分を取る量が少ない人が多く、脱水傾向になりやすいので、熱中症には警戒が必要だ。梅雨の時期は湿度が高く、発汗しづらくなるので、気温が高くなくても休憩をとるとか、意識的に水分や塩分をとるなど対策をしてほしい」と話していました。

東京・荒川区 1人暮らしの高齢者を訪問 熱中症対策を呼びかけ

熱中症の予防に特に注意が必要とされる高齢者。東京・荒川区は、1人暮らしの高齢者の自宅を訪問して、エアコンの適切な利用やこまめな水分補給などを直接、呼びかけています。

東京・荒川区は、日常的に、高齢者の安否確認などの見守り事業をおよそ200人の民生委員などと連携して行っています。

4日は見守りを担当する女性が高齢者の自宅を訪ね、体調や水分補給の頻度などを質問しながら熱中症の兆候がみられないか確認していました。

また、温度計がついた「熱中症対策シート」を高齢者に手渡すと、室内の温度が30度になる前にエアコンを利用するように呼びかけました。

自宅に1人で暮らす91歳の女性は、「エアコンはめったにつけないけど、暑くなったらつけるように意識を変えていきたい」と話していました。

荒川区高齢者福祉課の山下英男課長は、「高齢者の方は気温に気づきにくくなったり、夜間にエアコンをつけないということもあります。熱中症は命に関わるので注意を呼びかけていきたい」と話していました。

鹿児島 公共施設10か所を「クーリングシェルター」として開放

鹿児島県奄美市では、7月から市役所や支所など冷房の効いた10か所の公共施設を涼みながら過ごすことが出来る「クーリングシェルター」として開放しています。

原則としては、環境省から「熱中症特別警戒アラート」が発表された際に開放することになっていますが、厳しい暑さが続いていることから、アラートの有無にかかわらず7月から10月末まで開放するということです。

水分補給などは個人で行ってもらうことが前提ですが、体調不良の人がいた場合にそなえ、スポーツドリンクなどを用意しているということです。

施設を利用していた30代の女性は、「ここが涼しいので利用しようと思ってきました。外にいるだけでクラクラしそうです」と話していました。

奄美市世界自然遺産課の久保和代課長は、「ことしは本当に暑いです。買い物に行くときなど休みながら活用してもらえればと思います」と話していました。

札幌市 公立小中学校などに簡易型エアコン

札幌市では、去年の夏、観測史上最も高い36.3度を観測するとともに、熱中症の疑いで救急搬送された人の数は562人と、統計を取り始めた平成20年以降最も多くなりました。

これを受けて札幌市は、市内に319ある公立の小中学校や幼稚園などの普通教室と特別支援教室に順次、簡易型のエアコンの設置を進め、4日、設置が完了した中央区にある幌南小学校の様子を報道各社に公開しました。

公開された6年生の教室では、縦75センチ、横33.5センチの簡易型エアコン1台が窓に取り付けられていて、そこから出る冷風を扇風機で教室全体に行き渡らせながら、授業が行われていました。

男子児童のひとりは、「体育のあと、教室に帰ってきたときに涼しさを感じられるので、エアコンが導入されてうれしいです」と話していました。

幌南小学校の大宮健一校長は、「エアコンのほかに、水筒などの持ち込みも許可するなどして、対策を進めていきたい」と述べ夏本番に向けて暑さ対策を進めると強調しました。

宮崎の小中学校 熱中症アラートの出た日は 屋内で活動

3日連続の猛暑日となった宮崎市の小中学校では、熱中症警戒アラートが発表された日は子どもたちに屋外で活動せず、屋内で過ごすよう指導しています。

アラートの発表を受けて、4日、市内の江平小学校では、昼休み前に放送委員が校内放送で、「熱中症の危険性が高いので、外遊びはできません。教室などでゆっくり過ごしましょう」と呼びかけました。

昼休みの間、子どもたちは冷房の効いた教室でおしゃべりをしたり、タブレット端末で自習をしたりして過ごしていました。

6年生の女子児童は、「暑いので、昼休みは教室で読書などをしています。登下校の時に暑さを感じたら日陰で休むなど、自分でも熱中症対策を心がけています」と話していました。

男子児童は、「外では夕方になってから遊ぶようにしています。なるべく早く涼しくなってほしいです」と話していました。

江藤千恵教頭は、「暑さが年々厳しくなり、熱中症対策をより意識している。子どもたちが水分補給や服装調節などを自分たちでできるよう、指導していきたい」と話していました。