イスラエル軍 再びの退避通告 人道状況の悪化に国連が強い懸念

イスラム組織ハマスとの戦闘を続けるイスラエル軍が、ガザ地区南部の一部に再び退避通告を出したことについて、国連は一連の衝突が始まった去年10月のあと、最大規模の25万人が避難を強いられるとして、人道状況のさらなる悪化に強い懸念を示しました。

ガザ地区への攻撃を続けているイスラエル軍は1日、ガザ地区南部のハンユニスやラファなどの住民に対して直ちに退避するよう再び通告しました。

国連のデュジャリック報道官は、2日の定例会見で、退避通告の対象となったのはガザ地区全体のおよそ3分の1にあたる117平方キロメートルの地域で、避難を強いられる人は25万人に上ると明らかにしました。

そのうえで「一連の衝突が始まった去年10月に北部の住民に退避を迫ったとき以来の規模で、人々にさらなる苦しみを強いて人道支援の必要性を増大させるものだ」と非難しました。

また、2日には国連の安全保障理事会で、カーフ上級人道復興調整官が報告を行い「ガザ地区全域で、すでに190万人が避難を強いられている。市民への影響は深刻で、ガザに安全な場所はどこにもない」と憂慮を示しました。

イスラエルのネタニヤフ首相は6月、「ガザ地区での激しい戦闘の段階は終わりつつある」と述べていましたが、一部のメディアは、ハマスが態勢を立て直す動きを見せる中、イスラエル軍も各地で攻撃を続けているとの見方を伝えています。

退避した医師「絶望的な様子」

イスラエル軍が退避通告を出したガザ地区南部の病院で活動していた外国人の医師が、2日、NHKの取材に応じ現地の様子を語りました。

ガザ地区で医療活動にあたるNGO、FAJR Scientific(ファジュル・サイエンティフィック)のハシーブ・ハワジャ医師は6月13日から南部の拠点病院の1つ、「ヨーロッパ病院」で治療に当たってきましたが、1日の通告を受けて退避したということです。

病院には数千人の患者や家を追われた人々が身を寄せていたとみられ、ハワジャ医師は「ベッドを押して逃げる人や、足に固定器具をつけたまま歩こうとしている人もいて、絶望的な様子だった。医療従事者たちは、医療機器が壊れると分かっていても持てるだけ持ち出そうとしていた」と話していました。

一方で、移動ができず病院に残らざるを得なかった人たちもいたということで、「患者を置き去りにしたまま、自分は助かってもいいのかと心が痛んだ。攻撃を止めるために、すべての人にできるだけのことをしてほしい」と訴えていました。