「何も変わっていません」能登半島地震 半年 被災地の現状は?

自宅はぺしゃんこのままで何も変わっていません
業務を再開できてよかった

元日に起きた能登半島地震から半年が経ちました。

復旧が少しずつ進む一方で、倒壊した建物の多くが残されたままです。

現地では何が変わり、また変わっていないのか?

現状と課題、1日の動きを随時更新でお伝えします。

<避難生活>

・2000人超 避難所で生活

石川県珠洲市で1次避難所となっている生涯学習センターには、かつて保育所だった建物に今もおよそ50人が身を寄せています。自宅が全壊した人や、修理中のため自宅に寝泊まりができない人がほとんだといいます。

4月のはじめまでは水も通っていなかったということですが、6月には冷房やシャワーが新たに設置されるなど環境面の整備は進んでいるということです。

避難所の責任者を務める橋本豊美さん
「半年はあっという間でした。その時その時で課題は違いましたが、皆さんに要望や悩みを聞いてもらいここまでやってこられました。珠洲市にはいまだに潰れた家も多く、公費解体が進めば皆さんの気持ちは変わると思います。『復興』ということばがピンとこないので、まずは『復旧』を優先してほしい」

また、2次避難所となっている石川県加賀市の旅館ではいまも80人ほどが避難生活を送っていて、避難生活が長期化する中、「早く地元に帰りたい」という声が聞かれました。

輪島市の70代の女性
「自宅は準半壊と判定され、すぐに住むことができる状態ではなく工事を待って避難を続けています。半年は、長くも短くも感じる複雑な時間でした。友人にも会いたいのでできるだけ早く輪島に戻りたいです」

避難者数(6月25日時点)
石川県内 2288人
1次避難所 970人
宿泊施設など 1318人

<朝市通り>

・焼けた車や骨組みだけの建物がそのままに

大規模な火災が起きた輪島市の「朝市通り」周辺では、焼けた車や外壁の一部を残して骨組みだけになった建物などが、地震から半年がたった今もそのままになっています。また、被災した建物の解体や撤去を進める重機も置かれています。

輪島市内の仮設住宅に暮らす75歳の女性
「半年がたちましたが今も自宅はぺしゃんこのままで何も変わっていません。隣の家に寄りかかって迷惑をかけてしまっているので早く片づけてほしい。家もつぶれて何もなくなってしまいましたがやっぱり輪島がいいです。輪島が好きです」

若手事業者らが復興構想案

朝市通りの露店や商店の若手事業者たちは、これまで6回にわたり「どのような街を再建するか」についての検討会を開き、復興構想の案を話し合ってきました。

7月1日は構想案に生かそうと地元住民などへの聞き取りが行われ、住民の1人は「津波の避難場所となる高い建物がほしい」と要望を伝えていました。

若手事業者たちは8月、復興構想の最終案をとりまとめ、輪島市の復興計画に反映させるよう求めていく考えです。

干物の露店を出していた南谷美有さん
「これまで観光客に向けた案にかたよっていたので、参考になりました。街を見るとなかなか前を向けないですが、みんなで集まって朝市について話し合うのは楽しいです」

<各地で黙とう>

・7月1日午後4時10分 各地で黙とうささげられる

【動画】

「朝市通り」では、地震が発生した午後4時10分にあわせて朝市に店を出していた組合のメンバーなどが黙とうをささげました。

冨水長毅組合長
「地震の記憶や風景がよみがえってきます。一日も早く復興できたらと改めて思いました」

30年余り海産物など販売していた遠島孝子さん
「地震が起きてからあっという間の半年でした。朝市は私の大事な居場所です。朝市がないのはとてもさみしいことなので、早く仕事をしたいです」

また、石川県の「のと鉄道」の穴水駅では、社員や駅を利用する人が午後4時10分に駅の放送にあわせて黙とうをささげました。

子どもと毎日列車を見に来るという30代の女性
「たくさんの人に助けてもらっていると感じる半年でした。電車を見送ったり駅員の方と話したりできると日常に戻ってきたと感じます」

「のと鉄道」中田哲也社長
「発災後、困難に直面しましたが社員みんなの頑張りがあってこの時を迎えられました。復興ではなくまだ復旧半ばだと思うので、地域に寄り添ってのと鉄道も一緒に頑張りたいです」

<住宅再建>

・8月中には仮設住宅完成予定
・地元から離れた「みなし仮設」入居者も

石川県では、6月30日までに5006戸の仮設住宅が完成。県が必要と見積もる6810戸の7割を超えています。8月中に必要なすべての仮設住宅を完成させ、希望する被災者全員に入居してもらいたいとしています。

一方、県内外のいわゆる「みなし仮設住宅」に入居しているのは、6月27日の時点で3798世帯・8925人。能登地方にはもともと賃貸住宅が少ないうえ、建物への被害が大きかったことから、「みなし仮設住宅」に入居するほとんどの被災者が地元から離れた場所での生活を余儀なくされています。

アンケートでも困りごとの9割は「居住環境」

NHKは6月、東京大学の関谷直也教授の研究室と共同で奥能登地域に建てられた仮設住宅の入居者を対象にアンケートを行い270人から回答を得ました。

この中で、現在の困りごとについて複数回答で聞いたところ
▽「居住環境」が91%と最も多く
▽「生活環境」が72%
▽「仕事」が48%
▽「医療・福祉」が47%となりました。

さらに、具体的な困りごとについては、次のような結果となりました。

<人口流出>

・奥能登地域 5か月間で人口5.4%減

奥能登地域では、地震のあとふるさとを離れてほかの地域に移る人が増え、6月1日までの5か月間で人口は5.4%減少しました。

転出した人(ことし1~5月)
奥能登地域 2510人(去年の2.5倍)

【自治体別】
▼輪島市 1246人(去年の2.4倍)
▼珠洲市 556人(3.5倍)
▼能登町 426人(1.9倍)
▼穴水町 282人(2.5倍)

転入した人
406人(去年の半数)

人口
推計 5万5213人(1月1日時点)
推計 5万2231人(6月1日時点)-2982人(5.4%減)

<教育>

・輪島市 集約授業 単独で授業可能は1校のみ

輪島市内には小学校と中学校があわせて12校ありますが、地震の前と同じように単独で授業を続けているのは中学校1校だけです。

残りの学校の多くは校舎などに被害を受けたり避難所として使われたりしているため、被害の少なかった3つの学校に集まっています。

輪島市の中心部にある輪島中学校では、地震のあと市内の6つの小学校が校舎の一部を使って授業を行っていました。

小学生は複数の学校の児童が学年ごとにまとまって授業を受けていて、はじめのうちは緊張した様子も見られましたが、今では打ち解けているということです。

6年生の女子児童
「元の学校より遠くなったので早起きが大変です。クラスメートが金沢に引っ越してしまい、少しさみしいけど、新しい友達もできたのでよかったです」

小学1年生の児童の母親
「たくさんの友だちができて、子どもは楽しそうに通学しています。人数が増えた分目が行き届かないのではないかといった心配はしていません」

<医療・介護>

・地震後に退職相次ぐ 職員確保が課題

サービスを休止していた能登町の介護医療院が1日、町内の公立病院の病棟を借りて再開しました。

院内では半年ぶりに集まった30人の職員たちが業務内容を確認し合い、再開後1人目となる入所者が一時的に移っていた金沢市の施設から到着すると、家族とともに入り口で出迎えていました。

一方、元の施設は地震で被害を受け、再建には数年かかると見込まれるほか、職員の半数にあたる60人ほどが退職し残った職員の多くも休職が続いていて、今後、本格的な再建に向けて十分な職員を確保できるかが課題となっています。

柳田温泉病院介護医療院 野村清一事務長
「早く戻りたいという声も多く再開できてよかった。もとの場所での本格的な再建を目指して改めて頑張りたい」

<行政や政治の動きは>

・復旧復興を支援する省庁横断の専門チームが発足

石川県の馳知事は7月1日、県庁で幹部職員を集め、能登半島地震で亡くなった人たちに黙とうをささげたあと、幹部職員に訓示しました。

馳知事
「発災当初に県庁内で『非常事態宣言だ』と申し上げたが、この『非常事態』はまだ解除していない。しっかりと前を向いて頑張っていこうとしている被災者の皆さんに寄り添った対応が必要だ」

「今回の地震は能登半島という地理的な要因も含めて特異な条件での災害だった。これまでの大震災などの前例を踏まえながらも、それを乗り越える判断も求められる。国の支援を受けながら、制度上の課題を乗り越えるような対応をしてほしい」

岸田総理大臣は石川県で開かれた復旧・復興を支援する省庁横断の専門チーム「能登創造的復興タスクフォース」の発足式に出席し、国が一体となって被災地を後押ししていく考えを強調しました。

岸田総理大臣
「現在も避難生活を余儀なくされている人がいる。家屋の公費解体や水道の復旧など、さまざまな課題、難問が残っている。復興のあいろとなる課題を、霞が関が一体となって解決するなど、被災自治体のニーズに沿った創造的復興まちづくりを全力で支援していく」

立憲民主党の泉代表は、東京都内でNHKの取材に対し次のように述べました。

立憲民主党の泉代表
「私も現地に行ったが、まだ家が復旧しておらず、水道も通っていないし、建物などの解体も進んでないという声を多く聞いた。さらに岸田政権の対応が遅いという声も上がっていた。復興支援を加速させるため、政府の態勢をさらに強化すべきだ。本来であれば国会で補正予算案を審議し、漏れのない復興対策をつくらなければならないのに『裏金問題』があり、岸田政権は予備費だけでの対応を繰り返している。これでは復興に足りないところも出てくるし、『裏金問題』の残念な状況が影響を与えている」