天皇皇后両陛下 思い出の地オックスフォード大学を訪問

イギリスを公式訪問中の天皇皇后両陛下は、滞在最終日となる28日、かつておふたりが学んだ思い出の地、オックスフォード大学を訪問されています。おふたりでオックスフォード大学を訪問されたのは、初めてです。

両陛下は、現地時間の28日午前11時半すぎ、ロンドン中心部から80キロほど離れたオックスフォード大学のベーリオールコレッジに到着し、出迎えた大学関係者らと笑顔で握手を交わされました。

オックスフォード大学は、30あまりのコレッジに分かれていて、皇后さまは、昭和63年から平成2年にかけて当時勤務していた外務省の研修生としてこのコレッジに留学し、国際関係論を学ばれました。

おふたりは、皇后さまの留学当時の主任教授や指導教官、それに寮長とともにコレッジ内を散策したあと、大学総長主催の昼食会に臨まれました。

そして、赤いガウンと帽子を着用して大学関係者とともにゆっくり行進し、皇后さまへの名誉学位の授与式が行われる建物に向かわれました。

このあと両陛下は、オックスフォードの街を散策して思い出の場所をめぐり、天皇陛下が昭和58年から2年間留学したマートンコレッジも訪ねられる予定です。

天皇陛下は、イギリス訪問を前にした記者会見で、初めて皇后さまとともにオックスフォード大学を訪問し市内を散策することを、心待ちにしていると話されていました。

両陛下とオックスフォード

天皇陛下は、留学のため、昭和58年6月から昭和60年10月まで2年4か月、オックスフォードに滞在されました。

留学先のオックスフォード大学は、30余りのコレッジに分かれていて、天皇陛下はマートンコレッジで学び、150人の学生とともに寮生活を送る中でその後の人生に大きな影響を及ぼす経験をされました。

身の回りのことをすべて自分でしたイギリスでの暮らしは天皇陛下にとって初めてのことばかりで、留学中の体験を記した著書「テムズとともに 英国の二年間」には、警護官に教わって衣類にアイロンをかけたりクレジットカードを使って買い物したりした1人暮らしのエピソードが数多くつづられています。

天皇陛下は、留学中の記者会見で「生まれて初めて寮生活をしてみたわけです。洗濯機の中にモノを多く入れすぎて、それがあふれてしまったこと。いろいろな失敗をしたこともありました」と話していて、帰国したあとの記者会見では「自分でものを考え、自分で決定し、そして自分でそれを行動に移すということができるようになったのではないかと思います」と話されています。

著書では、音楽やスポーツを通じてさまざまな交流を重ね、友人たちとパブやディスコに行くなど、日本では経験できないような自由な時間も楽しんだエピソードも紹介されています。

学習院大学で中世・日本の海上交通を研究した天皇陛下は、留学先でも18世紀におけるテムズ川の水運の歴史を研究テーマに選び、指導教授のもと史料集めに奔走して当時のテムズ川の水運の実態を河川改修や輸送業者などの側面から分析し、論文にまとめられました。

著書では「今にしてみれば夢のような充実した留学生活」だったと振り返り「再びオックスフォードを訪れる時は、今のように自由な一学生としてこの町を見て回ることはできないであろう。おそらく町そのものは今後も変わらないが、変わるのは自分の立場であろうなどと考えると、妙な焦燥感におそわれ、いっそこのまま時間が止まってくれたらなどと考えてしまう」と記されていました。

皇后さまは、昭和63年から平成2年にかけて、当時勤務していた外務省の研修生としてオックスフォード大学のべーリオールコレッジに留学し、国際関係論を学ばれました。

天皇陛下は今回の訪問を前にした記者会見で、皇后さまのイギリス留学について「オックスフォード大学の歴史や伝統、荘厳な建物や庭の美しさなどに感銘を受けるとともに、先生方や友人たちからも多くのことを教わり、かけがえのない貴重な経験ができたということです。また、英国各地の美しい風景や人々の親切も深く心に残り、私(わたくし)同様、思い出深い2年間になったようです」と話されました。

天皇陛下は、去年、著書が30年ぶりに復刊された際、巻末の文章に「遠くない将来、同じオックスフォード大学で学んだ雅子とともに、イギリスの地を再び訪れることができることを願っている」と記されています。

訪問を前にした記者会見でも「私(わたくし)たちにとって、英国は、それぞれ留学生活を送った思い出の地であることもあり、今回の訪問を楽しみにしています。今回の訪問で、初めて雅子と一緒にオックスフォードのマートン・コレッジやベイリオル・コレッジなどを訪れ、市内を散策することを心待ちにしております」と述べられています。