100年ぶりパリ中心に開催 日本選手団選手数 史上最多の見通し

パリオリンピックの開幕まで、26日であと1か月となりました。日本選手団の選手数は海外で行われる大会では史上最多となる400人余りとなる見通しで、7月の結団式を経て17日間の戦いに臨みます。

約1万人の選手が参加見込み セーヌ川で開会式

パリオリンピックは1か月後の7月26日に、セーヌ川で行われる予定の開会式で開幕します。

100年ぶりにフランスの首都・パリを中心に開催される大会では、32の競技のあわせて329種目におよそ1万人の選手が参加する見込みです。

日本選手団の選手数は海外で行われる大会では2008年の北京大会の339人を上回り、史上最多の400人余りとなる見通しです。

日本選手団は7月5日に結団式が行われ、下旬に尾縣貢団長を含めた本隊がパリに向かいます。

現地・フランスでは、7月18日に選手村が開村し、開幕に先立って24日からサッカーと7人制ラグビーが、25日からはアーチェリーとハンドボールも行われ、開会式を経て本格的に競技が始まります。

日本勢は、“お家芸”と呼ばれる柔道やレスリングのほか、スケートボードや新競技のブレイキンといったアーバンスポーツなどでメダル獲得が期待されています。

また、世界ランキングで上位につけ、52年ぶりのメダル獲得をねらうバレーボール男子やバスケットボールなど団体競技の活躍にも関心が高まっていて、コロナ禍を経て再び観客が戻る17日間の大会で日本勢がどのような戦いを見せるか注目されます。

競泳 パリ郊外で合宿スタート

競泳の日本代表27人のうち、3大会連続出場で個人種目では2大会ぶりとなる池江選手や、リオデジャネイロ大会以来のメダル獲得を狙う瀬戸大也選手など4人は、イタリアでの国際大会を経てフランスに移動し、25日からパリ郊外のナンテールでの合宿をスタートさせました。

競泳 池江璃花子選手「リオデジャネイロ大会の記録を超える」

池江璃花子選手

池江璃花子選手は、出場予定の100メートルバタフライに向けて、ラスト15メートルの粘りなどを強化していて、まず瀬戸選手とともにバイク型のトレーニング器具をこいで汗を流しました。

このあとプールに移動し、スピードを上げた泳ぎも混ぜながら、バタフライやクロールなどをおよそ2時間泳ぎ込み、1か月後の本番に向けた調整を進めていました。

池江選手は「エッフェル塔やオリンピックのマークを見て、いよいよだなという実感がわいてきた。フランスに入って、『始まるんだ』、『やってやるぞ』という気持ちに切り替わった。練習をしっかりこなすことと、しっかり体調を整えること、気持ちを整えていくことが自分には必要かなと思う」と話していました。

そのうえで「残り1か月、しっかり集中して、できることは限られているのでそれを悔いなくやりたい。目標は高校1年生のときのリオデジャネイロ大会の記録を超えることだ。当時、決勝まで進んだとき会場がキラキラして見えたのでまたそういう気持ちを味わえたらいいと思う」と開幕を前にした心境を語りました。

瀬戸大也選手「自分の“ゾーン”に入ってきた感じがする」

瀬戸大也選手

瀬戸大也選手は「この1か月間で、自分に何ができるかを1つ1つ洗い出してしっかりとコンディションを上げていきたい。久しぶりの自分の“ゾーン”に入ってきた感じがするので、いい景色をイメージしながらこの1か月を過ごしたい。フィニッシュのタッチをしたあとに笑顔で終わっている姿を見てもらえるように頑張りたい」と話していました。

水沼尚輝選手「切磋琢磨するようなチームを作りあげたい」

水沼尚輝選手

競泳・日本代表のキャプテンを務める水沼尚輝選手は「この土地でオリンピックをやるという実感がわいてきてモチベーションが高くなった。あとは上げていくだけなので、得意のレース後半の泳ぎを仕上げていくことと、スピードを上げていく作業をしていきたい。キャプテンとしては切磋琢磨するようなチームを作りあげていきたい」と話していました。そのうえで「自己ベストを出すことと、パリで自分たちが泳ぐ姿を見てもらって、1人でも多くの人の心に残るレースをしたい」と決意を語りました。

柔道女子 都内で強化合宿

パリオリンピックに向けた柔道女子の強化合宿は東京・北区のナショナルトレーニングセンターで25日から始まり、東京大会でいずれも金メダルを獲得した52キロ級の阿部詩選手や78キロを超えるクラスの素根輝選手など代表に内定している7人の選手全員が参加しています。

阿部選手は実戦形式の乱取りで、自分よりも階級が上の選手とも組んで精力的に調整し、最後には投げ込みを行いました。

また、素根選手は自分よりも体格が大きい男子選手やコーチを担ぎ技や足技で投げるなど力強さを見せ、ただ1人、3大会連続のオリンピックとなる63キロ級の高市未来選手も男子選手を相手に厳しく組み手争いをするなど稽古に打ち込んでいました。

初めてのオリンピック代表となる4人の選手のうち、世界選手権で3連覇を果たした女子48キロ級の角田夏実選手はことし痛めたひざを気にする場面はありましたが、乱取りや打ち込みを行って調整していました。

また、57キロ級の舟久保遥香選手と78キロ級の高山莉加選手はいずれも得意の寝技などの確認をていねいに行っていました。

一方で去年の世界選手権を制した70キロ級の新添左季選手はウォーミングアップのあと、投げ込みや乱取りは行わず、軽めのメニューで終えました。

パリオリンピックの柔道は開会式の翌日となる7月27日から始まります。

阿部詩選手「豪快に勝てるようにしたい」

阿部詩選手

女子52キロ級の阿部詩選手は「体の状態はよく、あとは技を磨き上げる段階だ。簡単に勝てる試合は1つもないが、豪快に勝てるようにしたい」と意気込みを話しました。

新添左季選手「自分のオリンピックだと考えて調整したい」

新添左季選手

70キロ級の新添左季選手は、この階級が日本勢の3大会連続金メダルがかかることについて「プレッシャーはあるが、そこばかり考えると全力を出せないので、あくまで自分のオリンピックだと考えて調整していきたい」と話していました。

高山莉加選手「自信を持って準備していきたい」

高山莉加選手

初めてのオリンピックとなる78キロ級の高山莉加選手は「自分のやるべきことに集中して、いつもどおりやっていこうと思っている。自信を持って準備をしていきたい」と気負いはありませんでした。

素根輝選手「必ず金メダルを取りたい」

素根輝選手

78キロを超えるクラスの素根輝選手は、「出し切れば、あとは結果はおのずとついてくる。必ず金メダルを取りたい」と東京大会に続くオリンピック連覇を誓っていました。

日本選手団 多くの競技でメダル獲得が有力

自国開催となった3年前の東京オリンピックでは過去最多となる58個のメダルを獲得した日本。

東京大会での成果を土台に継続した強化が進んでいてパリ大会でも多くの競技でメダル獲得が有力となっています。

お家芸 体操・柔道・レスリングでは

まず、日本の“お家芸”とされる競技です。

体操 橋本大輝選手に大きな期待

橋本大輝選手

体操では東京大会で個人総合と種目別の鉄棒で金メダルを獲得した橋本大輝選手に大きな期待がかかります。

去年の世界選手権では内村航平さん以来となる史上4人目の個人総合2連覇を果たしたほか、種目別の鉄棒と団体も制して3冠を達成するなど若きエースとして不動の地位を築き上げました。

パリ大会では個人総合と鉄棒の2連覇、そして団体での2大会ぶりの金メダル獲得を目指します。

柔道 阿部一二三選手と詩選手 きょうだいで2連覇挑む

阿部詩選手 阿部一二三選手

柔道では、ともに東京大会の金メダリスト、阿部一二三選手詩選手が史上初のきょうだいで2連覇という偉業に挑みます。

柔道 斉藤仁さんの次男 立選手 親子2代での金メダル目指す

斉藤立選手

また、男子100キロを超えるクラスではオリンピック2連覇を果たし、9年前に亡くなった斉藤仁さんの次男、立選手が親子2代での金メダル獲得を目指します。

日本柔道界は東京大会で金メダル9個を獲得し競技発祥国としての威信を示しましたが、柔道大国であるフランスで行われる大会でどこまで実績を残せるか真価が問われます。

レスリング女子 圧倒的な強さ誇る藤波朱理選手

藤波朱理選手

東京大会で6階級中4階級で金メダルを獲得したレスリング女子では、この3年の間に世代交代が進みました。

代表に内定した6人のうち連続出場となるのは2連覇をねらう50キロ級の須崎優衣選手のみですが、公式戦133連勝中の53キロ級の藤波朱理選手が圧倒的な強さを誇るなど選手層の厚さは世界でも群を抜いています。

女子やり投げ 北口榛花選手 東京大会後に躍進

北口榛花選手

東京大会の後、飛躍した選手たちにも注目が集まっています。

その代表格が陸上、女子やり投げ北口榛花選手です。

初出場となった東京大会では12位でしたが、その後は徹底的に体作りを見直すとともに高いパフォーマンスとけがをしないための柔軟性を両立させるトレーニングなどさまざまな取り組みを行ってきました。

その成果が実を結んで国際大会で表彰台に上がる回数が増えると、去年の世界選手権ではこの種目で日本選手初となる金メダルを獲得する快挙を達成しました。

投てき種目では、2004年のアテネ大会で金メダルを獲得した室伏広治さん以来の頂点をねらいます。

フェンシング 江村美咲選手 日本女子初のメダル獲得が期待

江村美咲選手

また、フェンシング女子サーブルの江村美咲選手も去年の世界選手権で日本選手として史上初の2連覇を果たすなど東京大会後に急成長しました。

パリ大会では欧米が主流とされるフェンシングにおいて、日本女子初のメダル獲得が期待されています。

ブレイキン 男子の注目は「Shigekix」半井重幸選手

半井重幸選手

オリンピックに若者の関心を引き付けようと東京大会から採用されたスケートボードやスポーツクライミングなどのアーバンスポーツでは、10代の若い選手たちが超人的な技を繰り出す姿が世界に大きなインパクトを与えました。

そして、パリ大会で初めて採用されるブレイキンで日本は男女ともにメダルをねらう選手がそろっています。

男子の注目はダンサーネーム「Shigekix」の半井重幸選手です。

強じんなフィジカルを生かしたスピード感のあるムーブが持ち味で、世界最高峰の国際大会を18歳で制し、全日本選手権を3連覇するなど日本男子のエースとして金メダル候補にあげられています。

ブレイキン 女子の注目は「AMI」湯浅亜実選手

湯浅亜実選手

女子ではダンサーネーム「AMI」の湯浅亜実選手

一つ一つの動きに区切りがない流れるようなダンスが持ち味で、2018年に世界最高峰の国際大会で初代女王に輝き、世界選手権でも過去2回金メダルを獲得するなど抜群の実績を誇ります。

躍進続く団体競技

日本は団体競技でも期待が高まっています。

JOC=日本オリンピック委員会によりますと、パリオリンピックに臨む日本選手団の選手数は、海外で行われる大会では史上最多となる400人余りとなる見通しです。

これはバスケットボールバレーボール、それにハンドボールなど長年、世界の壁に阻まれてきた団体競技で自力で出場権を獲得できたことが背景にあります。

バスケ男子 強化合宿に八村塁選手と渡邊雄太選手が合流へ

バスケットボール男子のパリオリンピックに向けた強化合宿にNBA=アメリカプロバスケットボール、レイカーズの八村塁選手と今シーズンまでNBAでプレーした渡邊雄太選手が合流することになりました。

パリ大会で準々決勝進出を目指す世界ランキング26位の日本は5月から2回に渡って強化合宿を行ってきました。

28日から始まる3回目の合宿に参加する16人のメンバーが26日発表され、NBAのレイカーズに所属する八村選手と今シーズンまでNBAでプレーした渡邊選手の2人がメンバー入りしました。

このうち八村選手は日本が48年ぶりに自力でのオリンピックに出場を決めた去年のワールドカップではメンバー入りしておらず、日本代表として活動するのは東京オリンピック以来となります。

パリ大会で海外の強豪と対戦する日本にとって世界最高峰のリーグでのプレー経験を持つ2人の合流は明るい材料となります。

このほか、今回の合宿のメンバーにはキャプテンの富樫勇樹選手や司令塔の河村勇輝選手、シューターの富永啓生選手などが選出されました。

日本代表は7月、国内最後の強化試合として韓国との2連戦に臨み、パリオリンピックに出場する12人のメンバーが決まります。

ハンドボール男子 都内で合宿 攻撃や守備の連係を確認

ハンドボール男子の日本代表はパリオリンピックのアジア予選で1位になり、自力では36年ぶりにオリンピックに出場します。

パリ大会の開幕まで1か月となった26日は、都内で合宿を公開し、ことし4月に新たに就任したカルロス・オルテガ監督のもとおよそ2時間にわたって攻撃や守備の連係を確認しました。

このうち、フランスの1部リーグでプレーする攻守の要の吉田守一選手は中央突破からシュートを連続で決めるなどキレのある動きを見せていました。

吉田選手は「オルテガ監督の戦術は細かくて戸惑うことも多いが、非常にいい学びになっている。守備からチームをまとめて、勝ちにこだわった全力プレーを見せたい」と意気込みを話しました。

一方、司令塔の安平光佑選手は、右足首に違和感があるということで別メニューでの調整となりました。

日本代表は、7月1日と3日に都内でフェロー諸島と強化試合を行ったあと、ドイツで事前合宿を行いオリンピック本番に備えるということです。

パリオリンピックでは6チームずつが2つのグループに分かれて戦う予選リーグで各グループの上位4チームが準々決勝に進むことになっていて日本は来月27日に初戦でクロアチアと対戦します。

バレーボール男子日本代表 石川祐希選手を中心に“歴代最強”

注目は4大会ぶりに自力での出場権を獲得したバレーボール男子日本代表です。

世界最高峰のイタリア1部リーグでプレーするキャプテンの石川祐希選手を中心に高橋藍選手や西田有志選手など実力ある選手がそろうチームは“歴代最強”とも呼ばれています。

パリオリンピックの前哨戦となる国際大会「ネーションズリーグ」でも予選ラウンドで東京大会金メダルのフランス代表を破るなど勢いに乗っていて、パリ大会では1972年のミュンヘン大会以来、52年ぶりのメダル獲得を目指します。

競技行われるセーヌ川の水質改善が課題の1つ

パリオリンピックではトライアスロンなどの競技が行われるセーヌ川の水質の改善が課題の1つとなっています。

これについて大会組織委員会の広報責任者は25日「競技を開催できるように施策を積み上げている」と述べセーヌ川以外の代替策は現時点で考えておらず、予定どおり競技を実施できると強調しました。

セーヌ川は、パリオリンピックでトライアスロンやマラソンスイミングの競技会場となっています。

しかし、パリ市によりますと、市内の下水施設が古いため、まとまった雨が降ると処理しきれない下水があふれて川に流れ込んでしまうということで、選手たちが泳ぐためには水質の改善が必要だと指摘されてきました。

このため、ことし5月には巨大な貯水施設を新設して対策に取り組んでいますが、大会組織委員会の広報責任者は25日、報道陣の取材に対し「政府やパリ市、関係各所がセーヌ川で泳げるようにこれまでになかったレベルで作業を進めている。

大きな施策である貯水施設が完成しているし、現在は定期的にパリ市が水質検査を行っている」と対策を説明しました。

そのうえで「夏にはすばらしい好天のもと、トライアストンなどの競技が行えると考えている。私たちは自信を持っている。大会開催中は毎日検査を行い、国際競技団体とも連絡を取り合う態勢でいる。大会当日に競技を開催できるよう施策を積み上げている」と述べセーヌ川以外の代替策は現時点で考えておらず、予定どおり競技を実施できると強調しました。

今回のパリオリンピックの中心的な取り組みの1つである「泳げるセーヌ川」を実現し、無事、競技ができるのかその対応に注目が高まっています。

真夏の五輪 課題は暑さ対策

フランスでも真夏にあたる時期に開催されるオリンピックで課題となるのが暑さへの対策です。

パリ市内では訪れる観客などのために町なかに給水器やミストを設置して対策が進められています。

ヨーロッパでは去年、各地で記録的な猛暑となって40度を超えることもありました。

ことしもすでに厳しい暑さとなり、6月下旬にハンガリーで行われたアーバンスポーツのパリオリンピック予選シリーズでは最高気温が35度を超える日もあり、強い日ざしに多くの選手が苦慮しました。

スポーツクライミングの野中生萌選手は20日の予選のあと、「とにかく暑い。扇風機を常に使うなどの対応はしたが、待機室がすごく暑く、選手はみんな苦しそうな感じだった」と明かしていました。

夏のオリンピックでは暑さ対策がこれまでも大きな課題となり、前回の東京大会ではボランティアなどが熱中症とみられる症状を訴えるケースが相次いで、競技時間を急きょ変更するなど対応に追われました。

東京大会は新型コロナウイルスの影響で原則、無観客でしたが、今回のパリ大会は多くの観客が世界中から訪れる見通しで、暑さ対策の重要性が増しています。

パリ市は去年、飲料水の給水器を70基以上、新たに町なかに設置したほか、通りや広場などにミストや日よけを増設してきました。

また、車道だった場所に植樹などの緑化を行う温暖化対策も進めました。

体操などが行われる「ベルシー・アリーナ」近くの広場に設置された日よけで暑さをしのいでいたフランス南部に住む女性は「7月になるともっと暑くなると思う。日よけは非常に快適に過ごせるので、多くの人にとてもよい対策だと思う」と話していました。

こうした一方で、競技を行う選手や大会運営を担うスタッフ、ボランティアへの暑さ対策をどのように進めるかは引き続き重要な課題で、毎年、世界中が想定外の猛暑に見舞われるなか、新時代のオリンピックを目指すパリ大会でどんな取り組みが見られるか注目されます。

テロへの警戒 警備が大きな課題

パリオリンピックではテロへの警戒が高まる中、警備が大きな課題となっています。

このうち開会式は、およそ1万人の選手がおよそ90隻の船に乗ってセーヌ川の6キロほどの距離をパレードする予定で、川沿いには、32万人余りの観客が訪れる見込みだということです。

大会の組織委員会によりますと、夏の大会の開会式が競技場以外で行われるのは初めてだということで、多くの人が訪れるため、警備の難しさが指摘されています。

地元当局は、開会式の8日前にあたる7月18日から、川の周辺にテロ警戒区域を設け、立ち入りを厳しく制限する予定です。

こうした区域には、観客や関係者以外は原則入れず、この区域内に住んでいる人や、仕事などでこの区域を訪れる人は専用のウェブサイトで通行許可証を申請してQRコードを取得し、提示する仕組みになっています。

また、開会式当日には、警察官など4万5000人を動員し、周辺の警備にあたるとしています。

フランスでは、ことし3月以降、全土でテロ警戒レベルを最高水準に引き上げているほか、5月には、フランス中部の競技会場でのテロを企てたとして、ロシア南部チェチェン出身の男を逮捕しています。

21日に記者会見したパリ警視庁のヌニェス総監は「テロの脅威、何よりもイスラム過激派のテロリストによる脅威を懸念している」と述べ、万全の警備体制を敷くと強調しました。

一方で、テロ警戒区域に指定された地域の飲食店などからは、厳しい警備が営業に影響しかねないとして懸念の声があがっています。

テラス席も含めて200席あるセーヌ川沿いのレストランでは、店を訪れる客は通行許可証の申請が必要なことや、食材などが無事に届くかも見通せないとしてこの期間、営業を続けるか悩んでいるといいます。

周辺の店では、店を閉じて地元当局に補償を求める動きも出始めているということです。

レストランのマネージャーは「オリンピックで客が多く来るだろうと当初は考えていたが、むしろ大きな損失だ。警備の難しさは理解できるが、飲食店と両立させるバランスが必要だ」と話していました。

五輪とテロ事件

オリンピックを標的にしたテロ事件は過去にも起きています。

《ミュンヘン大会》

1972年に当時の西ドイツで開かれたミュンヘンオリンピックでは、選手村のイスラエル選手の宿舎がパレスチナの武装集団に襲撃され、選手など11人が殺害されました。

警察との銃撃戦の結果、犯人5人、警察官1人も死亡しています。

《アトランタ大会》

1996年のアトランタオリンピックでは、大会期間中に会場付近の公園に仕掛けられた爆弾が爆発し、2人が死亡、100人余りがけがをしました。

テロへの警戒が強まるなか すでに事件も

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻や、イスラエルとイスラム組織ハマスとの対立など国際紛争が続くなかでのパリオリンピック。

テロへの警戒が強まるなか、すでに事件も起きています。

フランス政府や検察当局によりますと、ことし5月末にはパリオリンピックでサッカーが行われる競技会場でのテロを企てたとして、ロシア南部チェチェン出身の18歳の男が逮捕されたということです。

また、6月にはパリ近郊のホテルの一室で爆発物を作ろうとしていたとしてウクライナとロシアの二重国籍を持つ26歳の男がテロを企てた疑いなどで拘束されたということです。

各競技会場は大会に向け着々と整備進む

パリオリンピックの開幕まで1か月となり、各競技会場は仮設の観客席が設置されるなどの工事が進んでいて、大会に向け着々と整備が行われています。

このうち、6月中旬に公開された競泳などの会場となる「ラデファンス・アリーナ」では1万4000席余りの観客席の一部が完成していて、仮設のプールも組み上がりました。

また、スケートボードやブレイキンなどのアーバンスポーツが行われる「コンコルド広場」はすでに仮設のスタンドや競技会場の一部が設置されていて、周辺の道路では交通規制が行われていました。

さらに大会組織委員会は25日、パリの観光名所、エッフェル塔近くにある、柔道などが行われるシャンドマルス・アリーナとビーチバレーが行われるエッフェル塔競技場の内部を報道陣に公開しました。

この2つの会場はともに配線工事などを残して全体の90%が完成していて、このうちエッフェル塔競技場では、会場におよそ400トンの砂が敷き詰められ、観客席の上部からはビーチバレーコートだけでなく、パリの町並みを望むことができるということです。

大会組織委員会の広報責任者は「残り1か月となり、準備も大詰めを迎えている。パリ大会は歴史に残る大会になるだろう。会場整備も予定どおりだ」と話していました。

選手村ではレストランがテスト営業

パリ近郊にあるパリオリンピックの選手村では25日、テスト営業が行われ、選手に提供される予定の料理が関係者にふるまわれました。

パリ近郊のセーヌサンドニ県にある選手村にはオリンピックでは1万4000人、パラリンピックでは6000人の選手や関係者が滞在する予定です。

選手村の中央には6つのレストランが入った食事棟があり、このうちの1つで関係者向けに調理や提供の手順などを確認するためのテスト営業が行われました。

この日は200人ほどが参加し、大会組織委員会のエスタンゲ会長などがレストランの責任者から料理にはフランス産の旬の食材を多く使っているなどといった説明を受けていました。

また、環境への配慮から使い捨ての食器は使われておらず、メインの料理には、植物由来の代替肉を使ったハンバーグなども出されていました。

選手村のレストランは大会期間中、24時間営業し、1日に最大4万食の提供を想定しているということです。

レストランの責任者を務めるシャルル・ギロワさんは「私たちは、アスリートに必要な栄養を提供し、彼らの食習慣にも応えつつ環境問題にも対応することを目指している。大会への参加を誇りに思う」と話していました。

選手や関係者が滞在する部屋も報道陣に公開

パリ近郊の選手村では25日、選手や関係者が滞在する選手村の部屋も報道陣に公開されました。

公開されたのは3つの寝室を備え選手6人が滞在できる部屋で、東京大会でも使用された日本の寝具メーカーのベッドが設置されています。

環境への配慮から、マットレスは大会後にリユースされるほか、ベッドフレームは段ボール製でリサイクルされるということです。

また、電力消費を抑えるため室内にエアコンはありませんが窓ガラスが二重になっているなど断熱効果が高められているほか、床下にはパイプが張り巡らされており、ここに冷たい水を流すことで部屋を冷却する仕組みだということです。

それでも部屋が暑いという要求が選手側からあった場合には、小型のエアコンを貸し出すことにしています。

選手村は今回の大会後には、改修を加えた上で、マンションやオフィスビルなどとして利用されることになっています。

大会組織委員会のジョージナ・グレノン環境担当局長は「選手村は大会後のことを考えて設計されています。断熱の設備などによって夏でも冬でも快適に過ごすことができます」と話していました。

選手村近くに新たな駅が開業

選手村や陸上などが行われるスタジアムの近くには新たな地下鉄の駅が開業し、大会開催へ向けた動きが加速しています。

パリ近郊のサンドニに24日、新たに開業した「サンドニ・プレイエル駅」は、パリ大会の選手村や、陸上などが行われるフランス最大のスタジアム、「スタッド・ド・フランス」までおよそ1キロほどの場所に位置しています。

工期はおよそ10年で、建物は日本の国立競技場などを手がけた建築家の隈研吾さんが設計し、外壁や天井に木材を活用したデザインが特徴的です。

また、車いすを利用する人のために傾斜の緩やかなスロープを設置するなどバリアフリーにも配慮されています。

パリ大会の開催期間中には、1日におよそ4万人の利用が見込まれているということで、大会を支える交通の要所の1つとなりそうです。

開業初日から駅には多くの人が行き交い、駅近くに住む女性は「こんな大きな駅ができたことは思いがけないことでびっくりしている。オリンピックではたくさんの人が来ると思う」と話していました。

また、駅を訪れていた男性は、「とても広くて驚いた。美しい駅に仕上がっている。たくさんの人の移動をより円滑にさせようという強い信念があり、開業が開幕に間に合ったんだと思う。オリンピックは始まれば注目されるだろうし、私もバレーボールやサッカーが好きなので競技を見るつもりだ」と話していました。