羽田空港事故の再発防止策が公表 新たに補佐役の管制官配置へ

羽田空港で起きた航空機どうしの衝突事故を受け、対策を話し合ってきた国の専門家委員会は、管制官の負担を軽減するため、離着陸の調整を補佐する管制官を新たに配置するなどの再発防止策を取りまとめました。

ことし1月の事故の直後に設置された国土交通省の専門家委員会は24日、7回目の会合を開き、再発防止策を取りまとめて公表しました。

それによりますと、航空機に離着陸の許可を出す滑走路担当の管制官の負担を軽減するため、この管制官に対し、離着陸の調整を補佐する別の管制官を1人ずつ新たに配置するということです。

新たな管制官は新千歳、成田、羽田、中部、大阪、関西、福岡、那覇の着陸回数などが多い主要な8つの空港に配置する予定で、このうち一部ではことし夏の繁忙期に間に合わせたいとしています。

設備面では、航空機や車両が滑走路上にいる場合に路面のランプが点灯してほかの航空機などに警告する「滑走路状態表示灯」を主要空港に導入するほか、現在も管制業務で使用している機体の位置を確認するモニターに、音での警告機能を追加するということです。

一方、今回の事故では、出発の順番を意味する「ナンバーワン」ということばを海上保安庁の航空機が離陸許可だと取り違えた可能性もあるとして、事故後、事前に出発順を伝えるのを取りやめていましたが、現場からの声に応じて来月末までに再開するとしています。

国土交通省は今後、再発防止策の具体化のため、さらに調整を進めるということです。

林官房長官「抜本的な安全・安心対策を」

林官房長官は午後の記者会見で「先ほど斉藤国土交通大臣から報告が行われ、岸田総理大臣からは、取りまとめられたさらなる安全・安心対策を速やかに実施するため、主要空港に配置する航空管制官を緊急に増員することをはじめ航空安全対策の拡充を行うよう指示がなされた」と述べました。

そのうえで「今後、国土交通省で、取りまとめられた対策を着実に進めるとともに、運輸安全委員会による事故調査報告も踏まえ、抜本的な安全・安心対策を講じていくものと考えている」と述べました。

斉藤国交相「夏の繁忙期前に管制官を増員」

斉藤国土交通大臣は、記者団の取材に対し、夏の繁忙期前に、主要な空港に配置する管制官を増員する考えを明らかにしました。

斉藤国土交通大臣は、国の専門家委員会が事故の再発防止策を取りまとめたことを受けて、総理大臣官邸で岸田総理大臣に報告を行いました。

その後、斉藤大臣は、記者団の取材に対し、総理大臣からは、主要な空港に配置する管制官を緊急に増員するなど安全対策の拡充を行うよう指示があったと明らかにしました。

そのうえで、斉藤大臣は、「取りまとめられた対策をしっかりと実施していくとともに、総理からの指示を受けて航空機の離着陸の際の監視体制の強化を図るため、まずは、夏の繁忙期前に管制官を増員できるよう、至急、準備を進めてまいりたい」と述べ、対策を急ぐ考えを示しました。

1月2日に羽田空港で衝突事故

ことし1月2日の午後6時ごろ、新千歳空港を出発した日本航空の旅客機が、羽田空港に着陸した直後に、滑走路上で海上保安庁の航空機と衝突して炎上しました。

この事故で海上保安庁機に乗っていた保安官6人のうち5人が死亡したほか、機長が大けがをしました。

日本航空機に乗っていた乗客乗員379人は全員が脱出しましたが、乗客17人が医療機関を受診しました。

事故後に国土交通省が公表した管制官と双方の機体との交信記録には、管制官から海上保安庁機に対し、滑走路への進入を許可する記録はありませんでした。

一方、海上保安庁によりますと、事故のあと海上保安庁機の機長は、「進入許可を受けたうえで滑走路に進入した」と報告したということです。

また、
▽日本航空によりますと、3人のパイロットは会社の聞き取りに対し、滑走路への進入中、海上保安庁機を「視認できなかった」と話したほか、
▽関係者によりますと管制官は国土交通省の聞き取りに対し「別の航空機の調整などがあったため、指示を出したあとの動きは意識していなかった」と話したこともわかっています。

このため、海上保安庁機が誤って滑走路に進入し、管制官や日本航空機がこれに気がついていなかったとみられています。

原因の調査を行っている国の運輸安全委員会は、これまでに、海上保安庁機の機長、管制官、日本航空機のパイロットなどから聞き取りを行っています。

さらに、双方の機体から回収したボイスレコーダーやフライトレコーダーの分析も進めています。