新紙幣発行迫る 各地で準備に奔走 渋沢栄一ゆかりの地は

20年ぶりとなる新たな紙幣が7月3日に発行されるのを前に、各地で準備が大詰めを迎えています。
新一万円札に肖像が描かれている渋沢栄一ゆかりの地ではお祭りムードの一方、発行までに対応が間に合わず、頭を悩ませる現場も。
各地の奔走ぶりを取材しました。

渋沢栄一の出身地・埼玉 深谷の道の駅では

新しい一万円札の顔・渋沢栄一の出身地、埼玉県深谷市の道の駅。

大きなポスターや、「発行まで、あと9日」のボード。お祭りムードが高まっています。

訪れた深谷市在住の女性
「明るいニュースで、深谷市民としては誇りです」

深谷市在住の女性
「発行されたらすぐ見てみたいっていうのはあります」

「近代日本経済の父」と呼ばれる、渋沢栄一。
こちらの道の駅では、ことし3月に、関連商品の売り場を拡張。

現在およそ60の商品を販売しています。

深谷市役所には「渋沢栄一政策推進課」

そして、市役所には「渋沢栄一政策推進課」という部署が。

新紙幣発行に向けて街を盛り上げようと、準備を進めています。

新札関連のイベントも、数多く予定。

深谷市 渋沢栄一政策推進課 田部井真一郎課長補佐
「今まで渋沢さんは、なかなか(深谷市の)外に出ると知られていないっていうところがあったんですけど、市民の皆さんにとっても渋沢栄一を自慢できる機会が増えるんじゃないかと思ってますので、どんどん渋沢栄一を宣伝してもらいたい」

東京 北区の信金「しぶさわくん支店」ではカウントダウンボード

東京・北区は渋沢栄一が本邸を構えたゆかりの地で、地域に店舗をもつ城北信用金庫では、新紙幣の発行に合わせて地域を盛り上げようと、さまざまな取り組みを進めてきました。

このうち5月には、渋沢栄一の邸宅があった場所の近くにある王子銀座出張所を、通称「しぶさわくん支店」としてリニューアルしました。

店舗の入り口には新紙幣が発行される7月3日までの日数を表示する専用のボードが設置され、きょう24日は、あと9日と表示されていました。

また、店舗内では、渋沢栄一をモデルにしたキャラクターの人形と写真を撮ることができるフォトスポットも設置されています。

店舗を訪れた80代の女性は、「地元にゆかりのある人がお札になるのはうれしいです」と話していました。

また別の80代の女性は、「どんな紙幣か気になります。新紙幣に1枚変えてみようかと思います」と話していました。

城北信用金庫の王子営業部長小山田晃裕さんは、「早く新札を見たいという声をよく聞くようになりました。お札が早くみなさんの手元に届くよう、準備しているところです」と話していました。

広島 券売機の販売会社 6月の問い合わせ ふだんの3倍以上

広島県内では、券売機の販売会社などが対応に追われています。

券売機の販売やメンテナンスを行っている広島市東区の会社では、新紙幣への対応に関する問い合わせが、6月に入ってふだんの3倍以上に増えているということです。

この会社によりますと、券売機を新たに設置すると100万円程度かかることから、費用を抑えるために、券売機の読み取り部分の機械のみを交換することなども提案しているということです。

会社の久保英範社長は、「最近の物価高騰による値上げで券売機の値段設定の変更の相談に加え、新紙幣の対応にも追われている。今回は対応が間に合わない店舗なども出てくると思う」と話していました。

広島の食堂 新紙幣発行を見据えて3年前に投資

広島市安佐北区にある病院の食堂では、3年前のオープンの際に券売機の一部を更新すれば新紙幣に対応できる食券の券売機を導入していました。

この券売機は一般的な機種の2倍程度の費用がかかりましたが、今回の新紙幣発行を見据えて投資を行ったということです。

食堂の運営会社の田川敬祐社長は、「経営する上では厳しいと思うところもあったが、先々を考えて最初にしっかり費用をかけておこうと考えた」と話していました。

秋田 バス会社で両替機のシステム更新 間に合わず

一方、秋田県北部の大館市などで路線バスを運行する「秋北バス」では、およそ120台あるバスすべてで、新紙幣に対応するために両替機のシステムを更新する作業が、7月3日の発行の開始に間に合わないということです。

ことし4月に両替機のメーカーに問い合わせましたが、注文が相次いでいることなどからシステムを更新するための機材の納品は大幅に遅れると伝えられたということで、納品はことし9月ごろになる見通しです。

このため、紙幣の両替が必要な場合は運転手が対応することにしています。

バスを利用する80代の女性は、「バスを乗るときに小銭を持っていないこともあるので、両替に手間がかかるようになると困ります」と話しています。

「秋北バス」の路線バスの事業は、人口減少などに伴って毎年6000万円ほどの赤字が続いていて、会社側は、両替機の更新作業にはおよそ700万円かかることから経営にも大きな負担がかかるとしています。

「秋北バス事業管理部」の棚谷貞一部長は、「新たな紙幣への対応は、増益に結び付く投資ではないので経営に与えるインパクトは非常に大きい。乗客に迷惑をかけないようできるだけ早く更新したい」と話しています。

偽情報がSNSで拡散「詐欺行為に注意を」財務省

こうした中、Xや動画共有アプリ「TikTok」などでは、今の紙幣が使えなくなるなどといった偽情報が広がっています。

「タンス預金を半強制的にあぶりだされ国に管理される」とか、「預金が封鎖される」などといった偽情報で、動画の中には20日正午時点でおよそ186万回再生されているものもあります。

中には、対策方法を教えるなどとしたうえで、連絡した人に暗号資産の購入を勧めるアカウントもありました。

財務省によりますと、新紙幣発行の目的は、偽造対策の強化と誰でも利用しやすいユニバーサルデザインの導入で、財務省理財局の担当者は「タンス預金のあぶり出しや預金封鎖などを目的としたものではない。これまでの紙幣も引き続き使えるので、詐欺行為などには注意してもらいたい」と話しています。