トヨタ自動車 株主総会で社長が国の認証試験での不正を陳謝

国の認証試験での不正が明らかになったトヨタ自動車の株主総会が開かれ、佐藤恒治社長はこの問題について「お客様、株主の皆さまにご心配、ご迷惑をおかけし心よりおわび申し上げます」と述べ、陳謝しました。

トヨタの株主総会は18日午前10時から愛知県豊田市の本社で開かれ、4656人の株主が出席しました。

トヨタでは、国の型式指定の申請にともなう認証試験で不正を行っていたことが明らかになり、宮城県と岩手県の子会社の工場で生産する「ヤリス クロス」など3車種の生産を停止しています。

総会の中で佐藤恒治社長は質疑に先立ち、「認証問題についてお客様、株主の皆さまにご心配、ご迷惑をおかけし心よりおわび申し上げます」と述べ、陳謝しました。

そのうえで「認証試験で基準を達成して初めて車を量産販売することが可能になるが、今回の問題は正しい認証プロセスを踏まずに量産販売してしまった。現場で再発防止にしっかりと取り組む」と述べました。

このあと株主からは「グループ各社の不正が表に出て、総ざらいすると言っていたが、3車種で生産がストップする事態になった。対応が甘かったのではないか」という指摘が出され、佐藤社長は「認証の問題は多面的に取り組む必要がある。根っこの風土改革に取り組んでいるが大変時間がかかると思う。現場で向き合いながら取り組みたい」と応じました。

また、別の株主が「認証不正でトヨタは大丈夫かという気持ちになった。ガバナンスが心配だ」と意見を述べたのに対し、豊田章男会長は「私自身が考えるガバナンスは支配や管理ではなく、1人1人がみずから考え動くことができる現場をつくることに尽きる。私自身が責任者として正しいものづくりを行い、モビリティカンパニーへの変革を目指す」と述べ、株主の理解を求めました。

そして総会は豊田章男会長や佐藤恒治社長など10人の取締役を選任する議案などが承認され、およそ1時間50分で終了しました。

総会前の株主 経営陣の説明求める声相次ぐ

トヨタ自動車の株主総会に出席する株主からは、認証不正の問題について経営陣の説明を求める声が相次ぎました。

トヨタの元社員だという株主の70代の男性は「認証の不正関連がいちばん気になります。経営陣も変化する環境に対応しなければいけないので大変だとは思いますが、今後、二度と起きないように、どう対応していくかをしっかりと説明してほしい」と話していました。

また、別の株主の80代の男性は「トヨタの業績が好調なことは株主としてはとても歓迎しています。ただ、認証の不正関連で経営陣から、皆が納得できる説明を期待しています。そのうえで、引き続き世界を代表する企業であり続けてほしい」と話していました。

米の議決権行使助言会社 人事案の一部に反対を推奨

ことしのトヨタ自動車の株主総会では、議案への賛否をアドバイスするアメリカの「議決権行使助言会社」が、会社が提出した人事案の一部に反対を推奨していました。

このうち、「ISS」=「インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ」は、ダイハツ工業や豊田自動織機など、トヨタグループ各社で認証不正が相次いだことを受けて、「長年のトップとして最終的な責任があるものとみなされるべきである」などとして、豊田章男会長の取締役再任に反対を推奨していました。

また、「グラスルイス」も、「トヨタグループのガバナンスの問題」を理由に、豊田会長と早川茂副会長の取締役再任に反対を推奨していました。

総会後の株主 不正の再発防止や信頼回復求める声

トヨタ自動車の株主総会に参加した株主からは、認証不正の問題について再発防止や信頼回復を求める声が聞かれました。

トヨタの元社員だという株主の70代の男性は「不正問題が1番気になって株主総会に参加しました。ダイハツ工業でも不正が見つかったのに、トヨタでも不正が見抜けなかったのは問題が根深いと感じます。これを糧にして二度と同じことを繰り返さないようにしてほしい」と話していました。

また、株主の20代の男性は「不正問題については豊田章男会長からの話もあり、現場との対話を進めるということなので、経営陣の選任にも賛成しました。会社の信頼を取り戻せるよう期待したい」と話していました。

一方で、別の株主の60代の男性は「会社からの不正についての説明はかゆいところに手が届かないように感じた。ダイハツも経営陣が責任をとっていただけにトヨタでも無傷ではいかないと思う」と話していました。