大阪北部地震6年 危険ブロック塀「撤去補助」の自治体半数に

大阪府北部で震度6弱の揺れを観測した「大阪北部地震」から6月18日で6年です。

地震によって小学校のブロック塀が倒れ女子児童が亡くなった高槻市では、地震が起きた時間にあわせて黙とうがささげられました。

地震のあと、大阪府内ではすべての市町村で危険なブロック塀の撤去費用を補助する制度が設けられたものの、今年度も制度を継続している自治体は半数以下となっています。

専門家は短期間に解決できる問題ではないとして制度の継続が必要だと指摘しています。

ブロック塀の被害「二度と起こさない」

大阪北部地震では、大阪府内で6人が死亡し、このうち高槻市の寿栄小学校ではブロック塀が40メートルにわたって倒れ、通学途中の4年生の女子児童が下敷きになって亡くなりました。

その後、ブロック塀は撤去され、現在はフェンスが設置されています。

18日、小学校の正門前では濱田剛史市長や松山健次校長が花を手向け、地震が発生した午前7時58分にあわせて黙とうをささげました。

濱田市長は報道陣に対し「6年前のブロック塀倒壊による被害はあってはならないことで、二度と起こさないよう防災対策を進めていく決意を新たにしています」と話していました。

大阪府内 撤去費用の補助 半数以下に

地震のあと、住宅などの危険なブロック塀の撤去を進めようと「撤去費用を補助する制度」が全国各地の自治体で導入されました。

大阪府内でも、43の市町村すべてで補助制度が設けられましたが、府によりますと、今年度も制度を継続しているのは半数以下の19の市と町となっています。

継続しているのは、大阪市、堺市、池田市、箕面市、豊中市、茨木市、高槻市、摂津市、枚方市、寝屋川市、交野市、八尾市、柏原市、松原市、高石市、泉佐野市、島本町、忠岡町、岬町です。

制度を終了したこのほかの24の市町村に、NHKがその理由を取材したところ、次のような声があがりました。

▽集中的に推し進めるため期限を区切った
▽補助の申請が減少していた
▽大阪府からの補助が令和3年度で終了し予算の確保が難しくなった

国土交通省によりますと、ブロック塀の安全対策のため塀の撤去や検査などの安全対策にかかる費用を補助する制度を設けている市町村は、令和2年度には全国1741の市町村のうち915ありましたが、昨年度は865と減少しています。

専門家「補助制度 終了した自治体は見直しを」

ブロック塀対策に詳しい東北工業大学の最知正芳 名誉教授は、個人所有のブロック塀は無数にあり、短い期間で解決する問題ではないと指摘しています。

東北工業大学 最知正芳 名誉教授
「大阪の地震と同じようにブロック塀の倒壊で犠牲者が出た昭和53年の宮城県沖地震からことしで46年となるが、46年たってもなおブロック塀の問題が『解決しました』とはなっていない。それくらい息長く向き合っていかなければならない社会問題だろう。そうした観点からすると補助制度を終了するということは、安全対策に後ろ向きになっていると指摘されてもしかたがない。ブロック塀の所有者は費用の面から踏み出せないケースがあり行政が導いていくことが重要だ。制度は継続すべきで、終了している自治体も見直してもらいたい」

そして、補助制度は、対策を希望する住民の気持ちを後押しするだけでなく、防災対策と向き合う自治体側の姿勢を示すことにもつながると強調しました。

東北工業大学 最知正芳 名誉教授
「自治体側は住民に対し『補助金を出してあげるから対策をやって』ではなく、『補助金をぜひとも使って地域をよい方向にもっていきましょう』と地域の安全対策をリードする旗振り役になるべきであり、制度があることはその姿勢を示すことにもつながる。道沿いにあるブロック塀は片側は住宅側だが、もう片方は道路という公共的な場所に面しており、その塀が倒壊すれば避難路をふさいでしまい防災上の問題にもつながる。だからこそ、自治体側が責任をもって取り組むことが重要だ」

ブロック塀 → 生け垣 への変更も補助対象に 大阪 高槻

制度を継続している大阪 高槻市では、危険なブロック塀の撤去をさらに後押ししようと塀を撤去したあとに「生け垣」をつくる費用も令和3年度から補助の対象としています。

高槻市に住む仲谷光宏さん(67)は、この制度を活用して去年、老朽化していた自宅のブロック塀を撤去し生け垣を設置しました。

ブロック塀の撤去は費用のおよそ70%、生け垣の設置はおよそ25%を市の補助でまかなえたということです。

高槻市によりますと、生け垣の補助制度の利用は昨年度までに仲谷さんを含めて2件にとどまっているということで、市は引き続き制度の利用を呼びかけていくとしています。

仲谷光宏さん
「小学生が亡くなったことを受けて、安全対策を進めなければと感じていました。生け垣は春にはきれいな花を咲かすので道行く人にも評判です」

ブロック塀 所有者は点検を

高槻市は、ブロック塀の所有者に対して、すぐに撤去が難しい場合であっても、地震などで倒壊するおそれがないか点検するよう呼びかけています。

市が作成したチラシでは、塀の高さや厚み、それにひび割れがないかなど見た目でわかるチェック項目が記載されています。

また、専門家によりますと、ブロック塀を低くすることも有効な対策で、塀が倒壊したとしても深刻な被害が起きにくくなるということです。