中国 5月経済統計 工業生産伸び鈍化に不動産投資マイナス続く

中国は先月の主要な経済統計を発表し、連休中の旅行需要の高まりなどで、消費の動向を示す統計は堅調だった一方、工業生産は伸びが鈍化したほか、不動産開発への投資は引き続き大幅なマイナスとなり、中国経済の懸念材料となっています。

中国の国家統計局は17日、先月の主要な経済統計を発表しました。

このうち、消費の動向を示す「小売業の売上高」は、連休中の旅行需要の高まりなどで、去年の同じ月と比べて3.7%のプラスとなり、前の月から伸び率が拡大しました。

一方、「工業生産」は去年の同じ月と比べて5.6%のプラスとなったものの、伸び率は前の月から鈍化しました。

また、ことし1月から先月までの「不動産開発投資」は去年の同じ時期と比べてマイナス10.1%と、下落幅が拡大したほか、新築住宅の販売面積も20.3%減少し、不動産市場の低迷が引き続き中国経済の懸念材料となっています。

中国政府は来月、長期的な経済政策運営の方針を決める重要会議、「三中全会」を開く予定で、内需の停滞や不動産不況の長期化といった中国経済が抱える課題に対し、どこまで踏み込んだ対策を打ち出せるかが注目されます。

中国国家統計局 “不動産不況 政策効果の発揮まで時間かかる”

17日に発表した主要な経済統計について、中国国家統計局の劉愛華 報道官は、記者会見で「経済は好転を続け生産は順調に増加し、雇用と物価はおおむね安定しており、全体として安定した運営となった」と強調しました。

その一方で「外部環境については複雑で厳しく、国内の需要は依然として不十分だ。経済は持続的な回復に向け、多くの困難と課題に直面している」と述べました。

そして、不動産不況については「政策効果が発揮されるまでには時間がかかり、不動産市場はまだ調整過程にある」と述べたうえで、政府が打ち出した対策は、今後、不動産市場の改善につながるという認識を示しました。

専門家 “不動産市場の改善 まだ時間がかかる”

17日発表された中国の主要な経済統計について、丸紅中国の鈴木貴元経済研究チーム長は「生産活動や固定資産投資など、中国経済をけん引している分野が前月比では鈍化傾向になっていて、景気の改善テンポが落ちていることが確認できたのではないか」と話し、景気回復のペースが鈍っているという見方を示しました。

また、不動産不況については「高水準の在庫や、価格が下落するだろうという見通しや懸念から、大きな落ち込みが続いたままで、基本的には、在庫が一定程度はけてきて、相場にも明るい見通しが出てこないかぎり、今の状況から抜け出すのは難しい」と話し、不動産市場の改善には、まだ時間がかかるという見通しを示しました。

さらに、鈴木氏は、不動産不況で地方政府が財政難に陥り、景気刺激策が波及しにくくなっていると指摘したうえで「人の動きはよくなってきてるので一見にぎやかだが、財布のひもは固い」と話し、消費も力強さを欠く状況が今も続いているという認識を示しました。