日本航空 相次ぐトラブル 原因などの報告書 国交省に提出

日本航空で旅客機が誘導路の停止線を大幅に越えるなどトラブルが相次いでいる問題で、会社は11日、トラブルの原因や背景についてまとめた報告書を国土交通省に提出しました。報告書では一連のトラブルの共通点を重要なタイミングで十分な注意が向けられていないことだとしたうえで、安全に専念できる環境が十分につくれていなかったことが背景にあるとしています。

日本航空をめぐっては、福岡空港で旅客機が滑走路手前にある誘導路の停止線を大幅に越えたほか、羽田空港の駐機場で隣り合う旅客機の翼どうしが接触するなど、このところトラブルが相次いでいて、国土交通省は5月、鳥取三津子 社長を呼んで、厳重に注意しました。

これを受け、鳥取社長は11日、トラブルの原因や背景についての報告書をまとめ、国土交通省に提出しました。

報告書ではまず、それぞれのトラブルを個別に分析していて、福岡空港での事案については
▽管制官から、滑走路手前での待機の指示に続いて、滑走路に入ったあとの経路の説明があり、パイロットはこの説明を滑走路に入る指示だと誤って認識したうえ
▽遅れが予想される状況となり、プレッシャーを感じていた可能性があるとしています。

羽田空港での事案については、機体をけん引する車両のドライバーに対し、移動開始を許可するサインが2回出たことでドライバーがプレッシャーを感じていたなどとしています。

そのうえで、一連のトラブルの共通点を重要なタイミングで十分な注意が向けられていないことだとしたうえで、定時運航の目標を高い水準で現場に課していて、落ち着いて安全に専念できる環境が十分につくれていなかったことが背景にあると考えられるとしています。

また、過去に起きたトラブルに関し、リスクの特定や十分な対策の実施、対策実施後のフォローが十分にできていなかったことも要因に挙げています。

そして、再発防止策として
▽経営陣が継続的に現場の声を把握することや
▽規程類の記載を整理し明確化すること
▽教育訓練の実施や改善を挙げています。

日本航空社長「安全を大前提とした環境 整っていなかった」

報告書を提出したあと、鳥取社長は各社の取材に応じ、「現場では、時間などいろんなプレッシャーの中で仕事をしているが、安全を大前提とした仕事の環境が整っていなかった。リスクマネジメントも十分に機能していなかった。今後、再発防止にきちんと取り組み、グループ一丸となって信頼を回復していきたい」と話しました。

トラブルの原因や背景は

国土交通省は去年11月以降に起きた5件のトラブルを対象に日本航空に厳重注意を行い、会社は今回、それぞれのトラブルについて個別に原因や背景を分析しています。

《シアトルでの滑走路横断》

去年11月、旅客機がアメリカ・シアトルの空港に着陸後、管制官から指示が出ていないにもかかわらず、隣の滑走路に進入して横断し、駐機場に向かうトラブルが起きました。

日本航空によりますと、旅客機は「16R」「16C」「16L」という3本の並行した滑走路のうち、駐機場から最も遠い「16R」に着陸し、管制官から真ん中にある「16C」の手前で待機するよう指示を受けました。

しかし、機長と副操縦士には「16C」のさらに奥にある「16L」の手前での待機を求める指示だと誤って聞こえて復唱し、機長はこの指示のなかに「16C」を横断する許可が含まれると認識したということです。

副操縦士は「16C」の横断許可がないことに疑念を抱いたものの、別の作業を優先したほか、機長が横断に問題はないと同意を求めるような発言をしたため問題がないと思い込み、確認できなかったとしています。

《サンディエゴでの停止線越え》

ことし2月、離陸しようとしていた旅客機がアメリカ・サンディエゴの空港で管制官の指示とは違う誘導路に入ったうえ、滑走路手前の停止線を越え、別の旅客機が着陸をやり直しました。

地上走行する際、通常は地図と機体の位置などが表示されるナビゲーションツールの両方を確認しながら進みますが、このトラブルの際、機長と副操縦士はナビゲーションツールばかりを見ていたうえ、ツールには実際にはない地形が表示されていたため、機体の位置を誤認したということです。

機長は位置を誤認したまま地上走行を続け、次に待機する位置の確認に意識が向いたことで機体の外側の確認がおろそかになるなどして停止線に気づかなかったとしています。

当時、大幅な遅延が予想される状況で、機長らにプレッシャーがかかっていた可能性があるとも分析しています。

《福岡空港での停止線越え》

先月、福岡空港では旅客機が滑走路手前にある誘導路の停止線を大幅に越え、別の旅客機が急ブレーキをかけ、急きょ、離陸を途中で取りやめました。

これについては、地上走行中に管制官とやりとりをするなかで、管制官から滑走路手前での待機の指示に続いて、滑走路に入ったあとの経路の説明があり、機長や副操縦士はこの説明を滑走路に入る指示だと誤って認識したとしています。

管制官から説明があった経路は機長らが予想していなかったもので、これに注意を集中させ、滑走路手前で心理的負担がかかる状況になったということです。

さらに遅れが予想されたため、機長らにプレッシャーがかかっていた可能性があるということです。

《ダラスでの飲酒事案》

ことし4月、アメリカ・ダラス行きの旅客機に乗務した機長は到着後、滞在していたホテルで酒に酔って騒ぎ、現地の警察から口頭注意を受け、その後、この機長が乗る予定だった便が欠航しました。

機長は飲酒の終了時間を決めていなかったほか、睡眠不足だったもののふだんと同じような量であれば深酔いはしないと過信していたとしています。

また、同席した乗務員の一部は、購入した酒の量が多いと思っていたものの、上司にあたるため、指摘できなかったということです。

このトラブルを受け日本航空は、当面、乗務員が滞在先で飲酒することを禁止しています。

《羽田空港主翼接触事案》

先月、羽田空港の駐機場で隣り合って移動していた旅客機の翼と翼が接触するトラブルがありました。

このトラブルでは機体をけん引する車両のドライバーに対し、移動開始を許可するサインが2回出たことでドライバーが「あとは自分待ち」と見えないプレッシャーを感じたとしています。

機体の両脇には接触を避けるために監視員が配置されていましたが、監視員が危険を感じて緊急停止を伝える際、手段が手信号しかなかったほか、監視員は別の作業があったため、作業前のミーティングに参加しておらず、情報共有ができていなかったということです。

また、ことし1月に新千歳空港で別の航空会社の機体が接触したトラブルについて、要因分析や対策を行ったものの気象などの特殊性に着目し、現場の実務的な問題への深掘りが不足していたとしています。