パラ陸上の第一人者 山本篤 現役引退へ 義足の陸上選手

パラ陸上の第一人者で、義足の陸上選手として日本で初めてパラリンピックの走り幅跳びでメダルを獲得した山本篤選手が、現役を引退する意向を固めたことが関係者への取材でわかりました。

山本篤選手は静岡県掛川市出身の42歳。

高校2年生の時にバイクの事故で左足を失い、その後、義肢装具士の専門学校で競技用の義足に出会い陸上を始めました。

北京大会 リオデジャネイロ大会で銀メダル

2008年 北京パラリンピックで銀メダルを獲得

得意種目は走り幅跳びで、初出場となった2008年の北京パラリンピックの走り幅跳びで、義足の陸上選手としては日本初のメダルとなる銀メダルを獲得し、リオデジャネイロ大会でも銀メダルを獲得。

“二刀流”パラアスリートの先駆者

2017年にはプロ転向を宣言し、その翌年には冬のピョンチャンパラリンピックにスノーボードで出場するなど“二刀流”パラアスリートの先駆者として知られています。

その後、練習中に左肩を脱臼するなどけがに苦しみながらも、2019年には37歳で男子走り幅跳びの義足のクラスの日本記録を更新。

東京パラリンピックでは4位

東京パラリンピック(2021年)

4大会連続出場となった東京パラリンピックでは、自身が持つ日本記録を5センチ更新する、6メートル75センチを跳んで4位に入りました。

神戸で開かれた世界選手権(2024年5月)

腰の痛みに苦しむことが多くなった山本選手は記録が伸び悩むなか、8大会連続出場となった今月の世界選手権で、今シーズンの自己ベストとなる6メートル48センチをマークし5位に入りましたが、「勝負で勝ったと言えるのはメダルを取れる選手ではないかと思う。そういう意味ではもうプロとしてのアスリート人生は終わりなのかなと思い、身を引く覚悟をした」などとして現役を引退する意向を固めたということです。

また、山本選手は競技と並行しながら国内外の学校に出向いて子どもたちに競技の魅力を伝えるほか、若手の義足アスリートの育成にあたるなど、パラスポーツの普及に力を尽くしてきました。

20年以上にわたる競技生活で打ち立てた 記録の数々

山本選手は20年以上にわたる競技生活で、数々の記録を打ち立てました。

夏のパラリンピックに4大会連続で出場し、走り幅跳びで銀メダル2個、リレーでは銅メダルを獲得しました。

さらに冬のパラリンピックにはスノーボードで出場し“二刀流”の先駆者とも呼ばれました。

世界選手権には8回出場し、金メダル2個、銀メダル2個、銅メダル5個を手にするなど数々の偉業を成し遂げたまさに日本のパラ陸上界のレジェンドでした。

【パラリンピックの記録】

▼2008年 北京
男子走り幅跳び銀メダル(5メートル84センチ) 2008/9/16
男子100メートル 5位入賞(13秒68)2008/9/14

▼2012年 ロンドン
男子走り幅跳び5位入賞(5メートル95センチ) 2012/8/31
男子100メートル 6位入賞(12秒92)2012/9/7
男子200メートル 8位入賞(26秒76)2012/9/1

▼2016年 リオデジャネイロ
男子走り幅跳び銀メダル(6メートル62センチ) 2016/9/17
男子100メートル 7位入賞(12秒84)2016/9/15
男子4×100メートルリレー 銅メダル(44秒16) 2016/9/12

▼2018年 ピョンチャン(冬季)
男子スノーボードクロス 決勝トーナメント1回戦敗退 2018/3/12
男子バンクドスラローム 棄権 2018/3/16

▼2021年 東京
男子走り幅跳び4位入賞(6メートル75センチ) 2021/8/28
※自身が持つ日本記録を5センチ更新

男子100メートル 予選敗退 2021/8/29

【世界選手権の記録】

▼2006年9月・オランダ
男子走り幅跳び4位入賞(4メートル77センチ)
男子100メートル 銅メダル(13秒72)
男子200メートル 5位入賞(28秒82)
男子4×100メートルリレー 銀メダル(47秒04)

▼2011年1月・ニュージーランド
男子走り幅跳び銅メダル(5メートル93センチ)
男子100メートル 銅メダル(13秒06)
男子200メートル 銅メダル(26秒92)
男子4×100メートルリレー 5位入賞(47秒40)

▼2013年7月・フランス
男子走り幅跳び金メダル(6メートル11センチ)
男子100メートル 4位入賞(13秒27)
男子200メートル 4位入賞(26秒41)
男子4×100メートルリレー 4位入賞(45秒12)

▼2015年10月・カタール
男子走り幅跳び金メダル(6メートル29センチ)
男子100メートル 5位入賞(12秒74)
男子4×100メートルリレー 4位入賞(44秒47)

▼2017年7月・イギリス
男子走り幅跳び銀メダル(6メートル44センチ)
男子100メートル 6位入賞(13秒08)

▼2019年11月・UAE=アラブ首長国連邦
男子走り幅跳び銅メダル(6メートル40センチ)

▼2023年7月・フランス パリ
男子走り幅跳び8位入賞(5メートル87センチ)

▼2024年5月・神戸市
男子走り幅跳び5位入賞(6メートル48センチ)
※現役最後の大会。

【日本選手権の記録】

▼2005年7月(大阪市)
男子走り幅跳び優勝(5メートル15センチ)

▼2006年6月(大阪市)
男子走り幅跳び優勝(5メートル48センチ)
男子200メートル 優勝(28秒53)

▼2007年5月(大阪・堺市)
男子100メートル 優勝(13秒02)

▼2008年6月(大阪市)
男子走り幅跳び優勝(5メートル70センチ)
男子100メートル 優勝(13秒26)

▼2009年9月(大阪市)
男子走り幅跳び優勝(5メートル37センチ)
男子100メートル 優勝(13秒29)
男子200メートル 優勝(27秒53)

▼2010年5月(大阪市)
男子200メートル 優勝(27秒23)

▼2011年7月(大阪・堺市)
男子走り幅跳び優勝(5メートル81センチ)
男子100メートル 優勝(13秒42)
男子200メートル 優勝(27秒64)
男子4×100メートルリレー 優勝(46秒67)

▼2012年6月(大阪市)
男子走り幅跳び優勝(6メートル24センチ)
男子100メートル 優勝(13秒10)
男子200メートル 優勝(26秒94)

▼2013年6月(大阪市)
男子走り幅跳び優勝(5メートル84センチ)
男子100メートル 優勝(12秒82)
男子200メートル 優勝(26秒85)

▼2014年6月(大阪市)
男子走り幅跳び優勝(5メートル99センチ)
男子100メートル 優勝(12秒77)
男子200メートル 優勝(26秒02)

▼2015年7月(大阪市)
男子走り幅跳び優勝(6メートル36センチ)
男子100メートル 優勝(12秒85)
男子200メートル 優勝(26秒00)

▼2016年5月1日(鳥取市)
男子走り幅跳び優勝(6メートル56センチ)
→世界新記録(当時)をマーク

男子100メートル 優勝(13秒01)16/4/30

▼2017年6月(東京・世田谷区)
男子走り幅跳び優勝(6メートル38センチ)
男子100メートル 優勝(13秒72)

▼2019年6月(大阪市)
男子走り幅跳び優勝(6メートル53センチ)
男子200メートル 優勝(26秒64)

▼2020年9月(埼玉県熊谷市)
男子走り幅跳び優勝(6メートル49センチ)
男子100メートル 優勝(13秒32)

▼2021年3月(東京・世田谷区)
男子走り幅跳び優勝(5メートル88センチ)
男子100メートル 優勝(13秒69)

▼2022年6月(神戸市)
男子走り幅跳び優勝(6メートル37センチ)

▼2023年4月(神戸市)
男子走り幅跳び優勝(6メートル)
男子100メートル 2位(13秒95)