【クマ被害相次ぐ】秋田と石川で2人けが 4月以降の被害11人に

過去最悪となった去年に続き、ことしも春から被害が出ています。

24日は秋田県と石川県であわせて2人がけがをしました。

4月以降、クマに襲われてけがをした人は、全国5つの道県で少なくとも11人に(※本文中に地図でまとめています)。

ことしの出没はどうなるのか、注意点と対策は。専門家に聞きました。

金沢市では犬の散歩中の男性が…

24日午前10時半ごろ、金沢市の医王山スキー場付近の山の中にある道で犬の散歩をしていた50代の男性が体長1メートルほどのクマに襲われました。

金沢市の現場付近

男性は顔や足に軽いけがをしたということです。

県内では先月も被害 金沢市は緊急会議

これを受け金沢市役所では24日午後、緊急の対策会議が開かれました。クマの出没について看板やホームページなどで注意を呼びかけていく方針が確認されました。

金沢市森林再生課の中西賢治課長は「クマの目撃情報などに注意するとともに、山に近づく際はクマよけの鈴を持ち歩いて複数で行動してほしい」と話していました。

石川県内では、ことしに入って5月21日までにクマの目撃情報が28件寄せられ、4月には白山市で50代の女性がクマに襲われる被害がありました。

このため県は24日、「ツキノワグマ出没注意情報」を出して注意を呼びかけています。

秋田の山林でも女性が顔と両腕けが

24日早朝には秋田県仙北市の山林でも、わらびを採っていた68歳の女性がクマに襲われ、顔と両腕にけがをしました。

現場付近の山林

警察によりますと24日午前5時すぎ、仙北市田沢湖田沢の山林で、わらびを採っていた68歳の女性が体長およそ1メートルのクマに襲われました。

女性は顔と両腕にけがをして病院に搬送され、意識はあるということです。

女性は夫とともに24日朝から山林に入り、別々の場所でわらびを採っていたということです。

「山林での捜索は危険を伴い困難」

秋田県では去年、クマによる人身被害が過去最悪の70人に上っていて、ことしも5月に入ってから被害が相次いでいます。

今月18日、鹿角市では、たけのこ採りで山に入っていた男性が遺体で見つかり、運び出そうとした警察官2人がクマに襲われて大けがをしています。

鹿角市の現場付近

このため仙北市と仙北警察署は、遭難の対応について「山林での地上捜索隊の動員は危険を伴うため極めて困難だ」として、今後はヘリコプターによる空からの捜索と車を使った林道からの捜索を中心とする方針を示すとともに、入山禁止の山に入らないよう強く要請する呼びかけを今月21日に行っています。

また、秋田県は全域に「ツキノワグマ出没警報」を出し、クマとの鉢合わせを避けるためやぶなどの見通しの悪い場所では鈴やラジオなどで音を出し人の存在をアピールすることや、山では単独行動を避けゴミを必ず持ち帰ることなどを呼びかけています。

クマ被害 4月以降少なくとも11人に

クマによる被害が過去最悪となった去年に続き、ことしも春から被害が出ています。

4月以降にクマに襲われてけがをした人は全国5つの道県で少なくとも11人に上っています。下の地図にまとめました。

クマは例年、3月から5月くらいに冬眠から目覚めて活動を始めますが、環境省がまとめたところ、4月は▼岩手県▼石川県▼奈良県の3つの県であわせて3人がクマに襲われるなどしてけがをしたということです。

また、NHKが各地域局の取材をもとに24日午後6時現在で集計したところ、5月に入ってからこれまでに▼秋田県で5人、▼北海道▼岩手県▼石川県でそれぞれ1人、あわせて8人がけがをしていて、4月以降の被害は全国5つの道県で合わせて11人に上っています。

このほか秋田県鹿角市で山林で遺体で見つかった男性1人がクマに襲われた可能性もあるとして、警察が慎重に調べています。

目撃・出没 例年より多い地域も

「人への被害」は去年は5月末までに22人に上っていたので、去年と比べると少ない水準ですが、一方でクマの「目撃」や「出没」の件数が例年より多くなっている地域もあります。

秋田県では4月、寄せられたクマの目撃情報が過去5年間の4月の平均と比べて1.5倍以上になったほか、青森県でも先月、クマの出没が確認された件数が例年の2倍近くとなり、過去最多だった去年に次ぐ多さになっているということです。

東北や北海道、北陸の一部では道や県が「注意報」や「警報」などを出して注意や対策を呼びかけています。

専門家に聞く「ことしの被害・目撃状況どう見る?」

クマの生態に詳しい東京農工大学大学院の小池伸介教授に聞きました。

「去年、多くのクマが人里に出没して社会問題となり、駆除が進められた結果、これまでのところ比較的、人的被害は少なくなっているのではないか。一方で、去年の状況を受けてクマへの関心が高まり目撃件数が増えている可能性がある」

そのうえで、この時期のクマの生態について、
「この時期は、親グマから離れた若いクマが生息場所を探して動き回ることがあり、人と鉢合わせになるおそれがある」と指摘します。

山菜採りなどのために山に入るときのほか、人の生活エリアでもクマがいそうな茂みなどに近づくときには、鈴や笛など音が鳴るものを身につけるなど対策をとるよう呼びかけています。

去年は“大量出没年”、ことしはどうなる?対策は

昨年度、クマに襲われてけがをするなどの被害にあった人の数は、全国であわせて219人にのぼり、国が統計を取り始めて以降、過去最悪となりました。

さらに、出没件数は、北海道や九州・沖縄をのぞいてあわせて2万4339件とこの15年間でもっとも多く、過去に例をみない“大量出没”の年となりました。

今年度はどうなるのか。小池教授は次のように指摘しています。

「去年のようにクマの餌となるドングリなどが不作になれば、ことしもまた人の住む地域に近い場所でクマの出没が増えると想定される。去年の秋に人里に出てきてカキやクリなどの食べ物にありついたクマはその経験を覚えている。たとえ山の中に食べ物があってもまた人里に出てくるおそれがあり、警戒が必要だ」

そのうえで、例年、クマの被害が1年間で最も多くなる秋ごろに向けて、こう呼びかけています。

「クマが出た地域では何が誘因物になったのか、どんな経路をたどって人の近くまでやってきたのか去年の教訓を踏まえて対策を検証する必要がある。クマが生息する都道府県であれば、どの地域であっても去年の秋田県のような深刻な被害が出てくるおそれがあり、自分ごととして考えてもらいたい」