長期金利 1% 住宅ローンどうなる メリットも?暮らしへ影響は

「家計をやりくりするしかない」

長期金利の代表的な指標となっている10年ものの国債の利回りは、23日も一時、1%をつけました。

住宅の購入を検討している人にとっては悩みの種となっています。

一方で、期待されている「プラスの効果」とは?

長期金利 23日も一時1%に

22日に長期金利の代表的な指標となっている10年ものの国債の利回りは11年ぶりに1%をつけましたが、23日も一時1%をつけました。

22日 10年もの国債利回り

アメリカの長期金利が高い水準が続き日本の長期金利にも上昇圧力がかかるなか、日銀が金融政策の正常化を早めるという見方が出たことも加わって、債券市場では、このところ国債が売られやすい状況が続いています。

市場関係者は「市場では、日銀が早期の追加利上げや国債の買い入れのさらなる減額など金融政策の正常化に向けて動くのではないかという見方が続いている」と話しています。

住宅の購入を考えている人は

住宅ローンの固定金利は長期金利が基準となっているため、長期金利の上昇が続けば連動して引き上げられる可能性があります。

渋谷区にある大手住宅メーカーのモデルルームでは、住宅の購入を検討している人から、さまざまな声が聞かれました。

30代男性
「金利は上がってほしくないが受け入れるしかない。ほかのところで家計の工夫をするしかない」

家族で訪れた男性
「家計には厳しいが考えてやりくりするしかない。固定金利ではなく変動金利でローンを組むつもりだ」

住宅ローンの固定金利は去年後半以降、大手銀行などを中心に徐々に引き上げられていて、この住宅メーカーでは、このところ、住宅ローンを組む顧客のおよそ9割が変動金利を選んでいるということです。

オープンハウス営業本部 赤塚晴大部長
「長期金利が動き始めて、お客様は住宅ローンの金利により敏感になっている。ファイナンシャルプランの相談にもしっかり対応して、安心して住宅を購入できるようにしたい」

保険などでプラスの効果も

長期金利の上昇を背景に、保険会社などの間では契約者に約束する利回りである「予定利率」を引き上げる動きが出ていて、契約者が受け取るお金が増えるなど、プラスの効果も期待されます。

複数の保険商品を比べながら相談を受け付け、販売する保険代理店によりますと、去年の後半以降、保険各社の間で、保険料を分割して支払う「平準払い」の個人年金保険や子どもの教育資金を積み立てる学資保険、一時払いの終身保険などの一部で予定利率を引き上げる動きが出ているということです。これにより、契約者が受け取るお金が増えたり、保険料が安くなったりします。

さらにこうした動きが広がれば、今後、保障の幅を広げるなど、商品設計の見直しも進む可能性があるということです。

保険見直し本舗 菊池健史マネージャー
「予定利率が上がれば運用が有利となるので、消費者にとってメリットがある。金利の上昇は住宅ローンの引き上げなど、家計への影響が大きいので、保険についても見直しを検討する方が増えている」

専門家「当面1%前後で推移する可能性」

みずほ証券の丹治倫敦チーフ債券ストラテジスト
「長期の固定のローンの金利が上昇すれば、家計の負担を上昇させることにも繋がるし、企業からしても社債の調達コストが上昇するということでコスト上昇になる」と指摘します。

一方で「生命保険の予定利率が上昇するなどの影響が出れば、消費者のマインドを刺激して金利の上昇がポジティブに働く可能性もある」と話していました。

また、国の財政への影響については「政府サイドからすれば調達コストが上昇するため、国の財政に関しては圧迫する方向になる」と指摘しました。

今後の長期金利の見通しについては「当面は、日銀の追加利上げや国債買い入れ減額に対する期待が残るため、1%前後、あるいは1%をちょっと超えた水準で推移することはあり得る。長期金利の先行きは日銀がどこまで利上げをしていけるのかに左右されるので、追加利上げが難しいということになれば1%を割り込むことになる」としています。

その上で、外国為替市場への影響については「日本の長期金利の上昇は日米の金利差が縮小することになるので、基本的には円安を抑制する要因になる。一方で、今は日米の金利差が非常に大きく、日本の金利が多少上がっても、影響は限定的だ」と話していました。

長期金利の上昇 なぜ家計や企業に影響?

【プラスの影響】
プラスの影響としては、金融機関の定期預金の金利が引き上げられる可能性があります。

また生命保険では、契約者に約束する利回りである「予定利率」が引き上げられることも見込まれ、その場合、契約者が受け取るお金が増えたり保険料が安くなったりします。
【マイナスの影響】
家計への影響として考えられるのは、長期金利に連動する住宅ローンの固定金利の引き上げで、その場合、新たにローンを組む人の負担が増えます。

実際、日銀がことし3月に大規模な金融緩和策を転換したあと長期金利が上昇したことを受けて、メガバンク3行は今月、適用する住宅ローンの固定金利をそろって引き上げました。

また企業にとっては、金融機関から中長期で借り入れる資金の金利の負担が増えることになり、多額の費用がかかる設備投資などが控えられることも予想されています。

専門家「長期金利1% 妥当な水準」

長期金利の上昇による日本経済への影響について、みずほ証券の丹治倫敦チーフ債券ストラテジストは「長期金利の1%という水準は日本経済の状況を考えると妥当な水準だ。ただ、物価の上昇や景気の回復はまだ道半ばなので、今のペースで長期金利の上昇が続くと企業の設備投資が抑えられるなどマイナスの影響が大きいのではないか。今後も長期金利は日銀の金融政策の動向に左右されやすい状況が続くだろう」と指摘しています。