「核のゴミ」原発など立地自治体 半数超 調査受け入れ考えなし

原子力発電で出るいわゆる「核のごみ」の処分地選定について、原発や関連施設がある自治体のうち半数以上が、選定に向けた調査を受け入れる考えがないとしていることが、NHKが実施した意向調査でわかりました。

この意向調査は5月、佐賀県の玄海町が原発立地自治体で初めて「核のごみ」の処分地選定に向けた調査を受け入れたことを受けて実施し、原発や関連施設がある自治体のうち、静岡県と玄海町を除く12の道県と23の市町村合わせて35自治体の知事と市町村長を対象に、調査の受け入れや、国が進める取り組みへの考えなどを尋ねました。

このうち、「最終処分地選定に向けた調査を受け入れる考えはあるか」という質問では、「ある」と答えた自治体はゼロで、「ない」が半数を超える18自治体、「どちらとも言えない」は8自治体でした。

9自治体は選択肢を選ばないか回答がありませんでした。

また、「処分地選定に向けた調査を原発立地自治体で行うことについてどう考えるか」という質問には、「賛成」が1自治体で、「反対」が4自治体、「どちらとも言えない」は全体のおよそ3分の2の23自治体でした。

理由を聞いたところ、「どちらとも言えない」とした自治体からは、各市町村の判断に委ねられるべきという声が多く寄せられました。

このほか、「政府が進めるとしている調査地点の拡大についてどう考えるか」という質問では、「拡大すべき」が14自治体、「拡大すべきでない」はゼロ、「どちらとも言えない」は14自治体でした。

自由記述では、原発立地自治体としてすでに一定の役割を果たしているなどとして、処分は別の地域で担うべきとする意見のほか、「核のごみ」の処分は国の責務だなどとして、国に対し国民理解の醸成や、処分に道筋を付けることなどを求める意見が多く示されました。

「文献調査」受け入れ決めた玄海町に原発立地自治体の首長は

【愛媛県伊方町】
原子力発電で出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」の処分地選定をめぐり、佐賀県玄海町は5月、調査の第1段階にあたる「文献調査」の受け入れを決めました。

これについて、四国電力の伊方原子力発電所がある愛媛県伊方町の高門清彦町長がNHKのインタビューに応じました。

高門町長は、玄海町の表明について、「我々としては核のごみを一刻も早く町の外に運び出したいという思いがある。同じ原発立地自治体として非常に困難な決断をされた玄海町には、敬意と感謝を申し上げたい」と述べました。

このうえで、「かつて原発建設をめぐって賛成、反対で町が二分した苦しい歴史を繰り返したくない。原発を受け入れたこと自体で国には貢献しており、これ以上の負担を考えたくないというのが率直な思いだ。積極的に議論を行ったり、手を挙げたりすることはない」として、最終処分地を受け入れることはないという考えを示しました。

また最終処分地をめぐる国の対応について、「自治体から手を挙げて判断を求めるというのは限界があり、いろんなことを自治体が一身に背負うことを国が求めるのはいかがなものか。適切な場所を選定したうえで、国から自治体にお願いするというやり方を検討すべきではないか」と述べて、国が主導的な役割を果たすべきだと主張しました。

【新潟県柏崎市】
また、柏崎刈羽原発が立地する新潟県柏崎市の桜井市長は「それぞれの自治体では地形や歴史などの背景が異なる。私が評価するべきではない」としたうえで、「国民全体に議論を喚起するという意味では敬意を払うべき行動だ」と述べました。

一方、「原発をめぐって市が二分された歴史もあり、これ以上、国のエネルギー政策に貢献することは今の段階では考えにくい」と述べ柏崎市では調査を受け入れる考えはないという認識を示しました。

また、政府が進めるとしている調査地点の拡大については「安定する地盤の近くに最終処分地が求められるべきだが、日本は安定したプレート上にないため、限られた所でしか処分場はありえないのではないかと思う。調査の受け入れについては自治体の手挙げ方式だが、どこでもいいというような選定の方法は、少し違うのではないかと思う」などと述べ、科学的な適性に疑問が出るような場所は調査対象にするべきではなく、拡大ありきで進めるべきではないという認識を示しました。

そのうえで桜井市長は「当面、原発が必要だということになると、放射性廃棄物をどこかで処分しなければならないのが現実だ。原発が立地する自治体だけでなく、電気を使う国民全員が考えなければいけない問題だ」と指摘し、国民全体での議論になるよう政府などが取り組みを加速させる必要があるという考えを示しました。