激しい乱気流で死傷事故 シンガポール航空 “調査に全面協力”

21日に、ロンドンからシンガポールに向かっていたシンガポール航空の旅客機が、激しい乱気流に巻き込まれて乗客1人が死亡し、多数のけが人が出た事故で、シンガポール航空のCEOはコメントを発表し、乗客への支援とともに当局の調査に全面的に協力する考えを強調しました。

21日に、ロンドンからシンガポールに向かっていたシンガポール航空のボーイング777型機が、離陸からおよそ10時間後、ミャンマーの上空、高度およそ1万1000メートルを飛行中に突然、激しい乱気流に巻き込まれ、タイの首都 バンコク近郊にあるスワンナプーム国際空港に緊急着陸しました。

タイの当局によりますと、乗客211人、乗員18人のうち、1人が死亡、80人以上がけがをしたということです。

死亡したのは、73歳のイギリス人の男性の乗客で、当局は、心臓発作を起こして死亡した可能性を明らかにしました。

シンガポール航空によりますと、乗客に日本人は含まれていないということです。

飛行コースを公開する民間のホームページ「フライトレーダー24」は突然の乱気流と一致する形で機体が乱高下したとしたうえで、予期せぬ変化は1分ほど続いたとしています。

ロイター通信は「シートベルトを着用していなかった人は天井に突き飛ばされた」と証言する乗客へのインタビューなど、当時の機内の様子を伝えています。

事故を受けて、シンガポール航空のゴー・チュン・ポンCEOは、動画でコメントを発表し「被害を受けた皆様に深くおわび申し上げる」と謝罪したうえで、乗客への支援とともに当局の調査に全面的に協力する考えを強調しました。

シンガポールの運輸安全調査局は、タイに職員を派遣し、詳しい原因を調べています。

日本で調査対象の旅客機事故 半数以上が乱気流に遭遇

国の運輸安全委員会によりますと、2023年までの20年間に起きた日本での調査の対象となった旅客機の航空事故67件のうち、半数以上の37件が乱気流に遭遇したことによるものだということです。

▽2023年は1件
▽2022年は6件
起きています。

これらの事故では、大けがをした45人を含め、119人がけがをしていて
その内訳は、
▽乗客が63人
▽客室乗務員が56人となっています。

過去には一度に10人以上が、けがをする事故も起きています。

【2014年には】
韓国からアメリカに向かっていた旅客機が、日本の上空で乱気流に遭遇し、12人がけがをしました。
乗客が撮影した動画には、乗客らが悲鳴のような叫び声を上げている様子のほか、客室の床に機内食とみられる食事や皿が散乱している様子がおさめられていました。

【2009年には】
フィリピンから成田空港に向かっていた旅客機が、千葉県沖の上空で乱気流に巻き込まれ、38人がけがをしました。
この事故では、席を離れていたか、シートベルトをしていなかったか、もしくは、シートベルトをしていても適切に着用していなかった乗客が、大けがをしたことがわかっています。

運輸安全委員会によりますと、20年間の事故を分析したところ、乗客と客室乗務員のいずれもがシートベルトを着用していることが多い上昇中や、滑走路への最終進入中に起きたものは比較的少なく、ほとんどが巡航中や降下中に起きています。

このため、航空会社が行う対策として、
▽客室乗務員も、着席を基本とする必要があるとしたほか
▽大きな揺れが予想される場合には、機内サービスを行わないことを
会社の方針として明確にすることが必要ではないかとしています。

そのうえで、乗客の協力も必要だとして、
▽常にシートベルトを腰の低い位置で締めることや
▽トイレを、可能なかぎり地上で済ませておくこと
などを呼びかけています。

乱気流などの対策 全日空では

全日空では、乱気流などの対策のため、運航前に飛行計画書を作成する際、衛星が撮影した雲の画像や、気象庁が出した乱気流の発生予測などの情報をもとに、複数ある航路と高度の中から最も安全と思われるものを選択しています。

運航中には、地上にいる運航管理者が最新の気象情報をパイロットに提供しています。

また、乱気流に遭遇した機体のパイロットから情報が寄せられた場合には、すぐさま、別の機体のパイロットに共有しています。

しかし、運航管理者を介した情報共有には時間がかかるため、即座に共有される仕組みも導入されています。

こうした仕組みは、これまでグループ会社の中で運用されていましたが、2023年からは、各国の航空会社、およそ30社で共同で実施しているということです。

この仕組みは「EDR」と呼ばれるもので、揺れの大きさを数値と色で表現し、乱気流が発生した日時や位置の情報とともに、運航中の同型機に共有されるということです。

さらに、全日空では、過去のデータをもとにAIを使った乱気流の発生予測の研究にも取り組んでいます。

研究では、グループ会社の機体が実際に遭遇した乱気流の風の強さと、その際の機体の揺れのデータを使っていて、データは、2020年10月から蓄積しているということです。

全日空で気象・システムを担当する坂本圭さんは「地球温暖化の影響で気象現象が激しくなり、乱気流も読みづらくなっていると感じていて、予断を許さない状況だ。今後も最新の技術を更新し、対策し続けていく必要がある」と話していました。