政治資金規正法改正へ 衆院で審議入り 与野党双方が趣旨説明

政治資金規正法の改正に向けて与野党双方が提出した法案が22日、衆議院の特別委員会で審議入りしました。23日からは法案の実質的な審議が始まり、後半国会の最大の焦点となる政治改革の議論が本格化します。

政治資金規正法の改正に向けて自民党が提出した法案と立憲民主党と国民民主党が共同提出した法案、日本維新の会が提出した法案などあわせて5つの法案は、22日、衆議院の政治改革を議論する特別委員会で審議入りしました。

法案の趣旨説明で自民党の鈴木馨祐氏は「政治資金は政治活動の自由を保障するもので、カネのかからない政治を志向すると同時に政治家が常に襟を正し法律で必要な定めを設けて透明性を確保すべきだ。真摯な反省のもと実効的な再発防止策を策定し政治資金の透明性を確保するため法案を提出した」と述べました。

立憲民主党の落合貴之氏は「制度改革は再発防止と国民の不信を払拭し信頼を回復できるかが重要だ。『政策活動費』を禁止するほか、抜け穴をふさぎ実効性を高める必要がある。資金力にものをいわせて政策決定をゆがめる企業・団体献金は禁止すべきだ」と述べました。

日本維新の会の青柳仁士氏は「自民党の法案は企業・団体献金には一切触れず『政策活動費』への対応も極めて不十分で国民の信頼を回復するに足る内容とは言えない。自民党の法案の足らざるところを補い腐敗の撲滅を断行する抜本的な改革案を提案する」と述べました。

特別委員会では23日と24日、法案の提出者に対する質疑が、来週27日には参考人に対する質疑が行われ、後半国会の最大の焦点となる政治改革の議論が本格化します。

それぞれの法案の内容には隔たり

それぞれの法案の内容には隔たりがあります。

例えば、パーティー券の購入者を公開する基準額です。

自民党が現在の「20万円を超える」から「10万円を超える」に引き下げるとしているのに対し、日本維新の会は、「5万円を超える」に引き下げるとしています。

一方で、立憲民主党単独の案では、政治資金パーティーを全面禁止するとしています。

また、党から議員に支給される「政策活動費」については、自民は、議員が使いみちを項目ごとに報告し、党が収支報告書に記載。

立民と国民民主党は支給の禁止。

維新は、支出の目的を限定した「特定支出」という新たな制度を創設し、領収書などは10年後に公表するとしています。

立民 審議入りを前に維新と公明に法案の説明

政治資金規正法の改正に向けて、衆議院の特別委員会で法案の審議が始まるのを前に、立憲民主党は、日本維新の会と公明党に対し、国会に提出した法案の内容を説明しました。

このうち日本維新の会とは、両党の幹事長らが互いに法案を説明し、意見を交わしました。

また、公明党には、立憲民主党の実務者が、国民民主党と共同で提出した法案などについて説明しました。

このあと、立憲民主党の落合貴之氏は記者団に対し「政策レベルで考えると公明党とはかみ合う点がかなりある。いつでも修正協議に応じることができると伝えた」と述べました。

公明党の中野洋昌氏は「いわゆる『連座制』の導入については過失であっても一定額以上の不記載で公民権を停止するとしており、ほかの罰則と比べてバランスが取れたものか見ていかなければならない。一方でインターネットでの収支報告書の公表などは透明性を上げていく方向で議論できるのではないか」と述べました。

林官房長官 「議論が深められることを期待」

林官房長官は午前の記者会見で「政治資金に関するルールは、政党や政治団体の政治活動の自由と密接に関連していることから、各党・各会派で議論いただくべきものだ。岸田総理大臣は自民党総裁として『今国会中の改正に向けて全力を挙げていく』と述べており、今後、国会審議を通じて議論が深められることを期待している」と述べました。

立民 安住国対委員長 「自民党に妥協することはない」

立憲民主党の安住国会対策委員長は記者団に対し「自民党の手ぬるい案では国民の政治不信は解消されない。自民党にすり寄ったり妥協したりすることはない。われわれの案を丸のみしてくれれば、あすにでも衆議院を通過させてもいい。あとは岸田総理大臣の決断だ。自民党が本気で改革をするなら野党側の意見も聞いて修正協議などに臨んでもらいたい。日本維新の会とは法案の共同提出まではいかなかったが、歩み寄れる余地はある。野党が一致し公明党も加えて、自民党に譲歩を迫る形を取れるのがベストだ」と述べました。

維新 藤田幹事長 「政策活動費の見直しなど3つに収れん」

日本維新の会の藤田幹事長は記者会見で「自民党の法案はほとんどやる気がないが、国民の怒りのパワーが広がればもう一歩踏み込める。政治資金の根本的なあり方を変えていくには、調査研究広報滞在費の公開と、政策活動費の見直し、企業・団体献金の禁止の3つに収れんされ、全部飲んでもらうことが要求になるが濃淡は出てくる。自民党が今の法案で突っ込んでくる可能性は高いと思うが、それで国民が納得できるかは問いたい」と述べました。

また、法改正をめぐり立憲民主党と意見を交わしたことについて「法案の内容は少し違いはあるが、おおむね同じ方向性のものが多い。ただ、いくつか先駆けてやってもらいたい。例えば、立憲民主党は『企業・団体献金は受け取らない』という法案を提出しているが、成立に先駆けて党の内規で定めて実行するなら全面的に共闘できると改めて伝えた」と述べました。

公明 山口代表 「自民党案と2点以外では実質的に共通している」

公明党の山口代表は党の参議院議員総会で「わが党は法案こそ出してはいないが、自民党が提出した法案は先に両党で取りまとめた内容の範ちゅうにあり、折り合えなかった2点以外の部分は実質的に共通している。野党の案と比べながら立法府としての合意形成に資するよう議論を深めてほしい」と述べました。

共産 小池書記局長 「丁寧な審議の進め方をすべき」

共産党の小池書記局長は記者会見で「パーティー券の購入も含めた企業・団体献金という大穴があったことが、今回の『裏金問題』の根底にあるので、国会が穴を完全にふさげるかが問われている。企業・団体献金の禁止を脇に置いて、公開性や透明性ばかりの議論になってしまうことはあってはならない。重大な問題なので、丁寧な審議の進め方をすべきだ」と述べました。

国民 玉木代表 「政治資金を浄化するよう臨む」

国民民主党の玉木代表は党の会合で「今回の議論のポイントの1つは、非公開かつ非課税のお金を無くすことだ。政治活動に使うことで非課税の恩恵を受けるのであれば、きちんと情報を公開する当たり前のことを徹底すべきだ。非課税である旧『文書通信交通滞在費』の使いみちは、わが党は公開しているが、立憲民主党は公開しておらず、真の改革を進めるためには自主的な公開が必要だ」と述べました。

そのうえで「自民党への不信感は、このままでは政治全体に対する信頼を失わせ無関心につながる。今回の機を捉え、徹底的に政治資金を浄化するよう臨んでいく」と述べました。