パラ陸上世界選手権 佐藤「銀」伊藤「銅」 男子400m車いす

パラ陸上の世界選手権は、大会5日目の21日、男子400メートル、車いすのクラスの決勝が行われ、東京パラリンピックの金メダリスト、佐藤友祈選手はベルギーの選手に敗れ、2大会連続の銀メダルとなりました。

神戸市で開かれているパラ陸上の世界選手権は、大会5日目の21日午後、男子400メートル、車いすのクラスの決勝が行われ、この種目の東京パラリンピック、金メダリストの佐藤選手が出場しました。

佐藤選手は去年の世界選手権で、ベルギーの新星、マクシム・カラバン選手に、みずからが持つ世界記録を更新されて大会4連覇を逃し、金メダル奪還を目指してレースに臨みました。

佐藤選手はスタートから出遅れ、1番手のカラバン選手を追う展開となりました。

レース中盤で、なんとか粘りを見せて追い上げましたが、カラバン選手に5秒近く離され、57秒98でフィニッシュし、銀メダルでした。

伊藤竜也選手は、1分1秒32のタイムで銅メダルを獲得しました。

完敗の佐藤友祈 パリパラ金メダルへ「険しい道になりそう」

金メダル奪還を目指して400メートル決勝に臨んだ佐藤友祈選手は、トップの選手に5秒近くもの差をつけられ、完敗。レースの直後、「カラバン選手がいるかぎり、金メダルは険しい道のりになりそうだ」と悔しそうな表情で話しました。

去年の世界選手権でベルギーの新星、マクシム・カラバン選手にみずからの持つ世界記録を1秒近く更新され、「屈辱的だった」敗戦からおよそ1年。佐藤選手は金メダル奪還を目指し、一から練習方法を見直してきました。

国際大会で教え子たちに98個のメダルをもたらしてきたオランダの名コーチ、アーノ・ムルさんに指導を仰ぎます。これまでは限界を決めずに距離を走り込んできた佐藤選手。完全に体を休める日を一日設けたほか、ウォーミングアップや水分補給の時間設定などコーチ独自のメソッドに基づく細かなアドバイスを受けながら、メリハリをつけて最大限のパフォーマンスを引き出すためのトレーニングを積んできました。

大会前、「コーチと一緒に積み上げてきた強さを生かしてマクシムをぶっ倒したい」と意気込んでいた佐藤選手。

迎えた、21日の決勝。スタートからカラバン選手が飛び出し、ぐんぐんと加速していくと、佐藤選手とほとんど競り合うことなく後続を突き放し、フィニッシュ。去年の世界選手権でカラバン選手と2秒あまりだったタイム差はことしは4秒92に広がり、力の差を見せつけられる結果となりました。

レースのあと取材に応じ、次のように話したマクシム・カラバン選手。
「佐藤選手は、僕の前の世界王者で、超えることができた時はうれしかった」

佐藤選手は、厳しい表情で雪辱を誓っていました。
「カラバン選手は今回のレースもフルパワーみたいな感じではないので僕が至らなかった。彼がいることで連覇は険しい道のりだと改めて気づけた。パリ大会では、しっかりゴール前で競り合えるよう頑張りたい」

佐藤友祈「うまくかみ合わなかった」

2大会連続の銀メダルとなった佐藤友祈選手は「悔しい。きのうの予選より悪く、スタートもうまくかみ合わなかった。カラバン選手が並んできた所くらいから動作1つとってもかみ合わない状態が続いてしまった印象だ」と話していました。

佐藤選手は、大会1週間前にレーサーと呼ばれる競技用の車いすを全損するハプニングに見舞われ、昔のレーサーを急きょ取り寄せて、レースに挑んでいて「準備していたレーサーで出場することができず素直に悔しい。万全の状態で銀メダルであればそこまでの実力だと言えるが僕の足を大きく引っ張った」と話していました。

そして、パリパラリンピックに向けて「パリ大会では、しっかりゴール前でカラバン選手と競り合いたい」と話していました。

伊藤竜也「ほっとしている」

男子400メートル、車いすのクラスで銅メダルを獲得した伊藤竜也選手は「期待してくれている人たちのためにもメダルをとって、自分がやってきたことを証明したいという思いだったのでほっとしている」とうれしそうな表情で話していました。

そのうえで、パリパラリンピックに向けて「最後は意地でメダルを勝ち取ることができ、励みになった。パリ大会は自分との戦いになると思うので自己ベストを目指して頑張りたい」と意気込みを語りました。

佐藤友祈選手とは

佐藤友祈選手は、静岡県藤枝市の34歳。

21歳の時に脊髄の病気で腕から下がまひして両足が動かなくなり、左手にも障害が生じ車いすの生活になりました。

その後、家にこもりがちな生活を続けていましたが、2012年のロンドンパラリンピックで車いす陸上を見たのをきっかけに競技を始めました。

その4年後には、リオデジャネイロ大会に出場し、男子400メートルと1500メートルの車いすのクラスで銀メダルを獲得しました。

なめらかなフォームから効率よく腕の力を車いすに伝える力強く伸びのある走りを武器に東京大会では400メートルと1500メートルでともに金メダルを獲得したパラ陸上のエースです。

しかし、去年の世界選手権の400メートルでベルギーの新星、マクシム・カラバン選手にみずからの世界記録を1秒近く更新されて4連覇はならず、銀メダルとなりました。

その後、オランダの名コーチ、アーノ・ムルさんに指導を仰ぎ、フォームの改造などに取り組んで世界記録の更新とパラリンピック連覇を目指しています。

佐藤選手は、日本パラ陸上競技連盟の選考基準に基づいて、パリパラリンピックの代表内定を確実にしています。

伊藤竜也選手とは

伊藤竜也選手は、福井県大野市出身の38歳。

17歳の時、交通事故で脊髄を損傷し、車いすの生活になりました。

その後、アテネパラリンピックの車いすマラソンで金メダルを獲得した同じ福井県出身の高田稔浩さんに誘われ、30歳でパラ陸上を始めました。

持ち味はスタートダッシュで100メートルなどの短距離を得意としています。

去年の世界選手権の400メートルで銅メダルを獲得し、日本パラ陸上競技連盟の選考基準に基づいて、パリパラリンピックの代表内定を確実にしています。