【詳細】イスラエル・パレスチナ・中東情勢(5月18日)

イスラエル軍はガザ地区で多くの避難者が身を寄せる南部ラファでイスラム組織ハマスへの攻撃を続けるとともに、北部でも再び戦闘を激化させています。19日にはアメリカのサリバン大統領補佐官がイスラエルを訪れ、ラファで民間人を巻き添えにする大規模な地上作戦を行わないよう働きかけるものと見られ、協議の行方が注目されます。

※中東情勢に関する日本時間5月18日の動きをお伝えします。

ガザ地区で戦闘 米高官のイスラエル側への働きかけ注目

イスラエル軍はガザ地区南部ラファで地上部隊による攻撃と空爆を続けていて、パレスチナのメディアは18日、空爆で民間人2人が死亡したと伝えています。

またイスラエル軍はいったんは制圧したとしていた北部のジャバリアにハマスの戦闘員が結集しているとして攻撃を再開していて、18日、複数の戦闘員を殺害したと発表しました。

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は、ジャバリアでの戦闘についてイスラエル軍がこの戦争で最も激しい戦闘のひとつになっていると説明していると指摘していて、ハマス側も激しく抵抗を続けているとみられます。

こうしたなかアメリカ・ホワイトハウスは、サリバン大統領補佐官が19日にイスラエルを訪れ、ネタニヤフ首相などと会談すると発表しました。

イスラエル側はラファに追加の部隊を派遣して攻撃を強化する構えですが、ラファからはすでに推計で63万人以上が避難を余儀なくされていて、人道状況がさらに悪化することが懸念されています。

サリバン補佐官はイスラエルに対して、大規模な地上作戦に代わりハマスの幹部などに標的を絞った作戦を行うよう促すものと見られ、アメリカの働きかけで民間人の犠牲を抑えることができるのか、注目されます。

米高官 ラファでの大規模地上作戦行わないよう直接働きかけへ

アメリカ・ホワイトハウスのカービー大統領補佐官は17日、記者会見で、安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官が19日にイスラエルを訪れ、ネタニヤフ首相や政府高官と会談すると発表しました。

カービー氏は、イスラエル軍によるガザ地区南部ラファでのイスラム組織ハマスに対する軍事作戦が議題になるとした上で「標的を絞り、正確で、効果的にテロ組織を追い詰める方法を話し合うつもりだ。われわれは大規模な部隊で、無差別かつ無謀に突入することがその方法だとは考えていない」と述べてサリバン大統領補佐官がイスラエル側に大規模な地上作戦は行わないよう直接、働きかけるとの見通しを示しました。

またカービー氏は「イスラエルは何か大きな決断をする前に、われわれと話し合いを続けると確約している」と述べて、アメリカとの協議が続いている間は、大規模な地上作戦は行われないとの見方を示しました。

多くの住民が身を寄せるラファでの軍事作戦をめぐり、イスラエルのガラント国防相は16日、追加の部隊を派遣すると明らかにしていて、アメリカ側の働きかけで大規模な作戦に拡大するのを防げるかが焦点です。

イスラエル ガザ地区で攻撃 検問所の人道支援物資搬入滞る

イスラエル軍は、17日にかけてもガザ地区でイスラム組織ハマスへの攻撃を続けていて、パレスチナの地元メディアは南部ラファなどへの空爆で、少なくとも3人が死亡したと伝えています。

UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関は、これまでに推計で63万人以上がラファからの避難を強いられたとしています。

国連によりますと、イスラエル軍がラファでの軍事作戦を開始してからラファ検問所は閉鎖され、同じ南部にあるケレム・シャローム検問所からの人道支援物資の搬入も滞っているということです。

アメリカ中央軍 浮き桟橋から人道支援物資搬入始まると発表

アメリカ中央軍は17日、ガザ地区の海岸に設置した浮き桟橋から複数の国や団体が寄付した人道支援物資の搬入が始まったと発表しました。

アメリカ国防総省などによりますと、支援物資は地中海のキプロスに集められ、イスラエル側の検査を受けたあと、大型船でおよそ15時間かけてガザ地区沖合の浮き桟橋に運ばれ、小型船に積み替えられます。

そして、海岸とつながる長さ数百メートルの別の浮き桟橋に運ばれ、荷降ろしされたあと、トラックでガザ地区北部に運び込まれるということで、当面は一日にトラックおよそ90台分、将来は150台分の物資を搬入できるとしています。

ただ国連などは、一日に500台以上のトラックが入る必要があるとした上で、海上の天候などの制約を受ける浮き桟橋は人道状況を改善させる決定打にはならず、ラファ検問所をはじめとする陸路での搬入が不可欠だとしています。

イスラエル側は、5月に新たに設けたガザ地区北部の西エレズ検問所などから物資は入っていると主張しているほか、ラファ検問所の開放をエジプト側に求めているとしていますが、エジプト政府は現地の安全が確保できないとして、ラファへの攻撃停止を要求していると伝えられています。

イスラエル軍報道官 “人質3人の遺体発見し収容”

イスラエル軍のハガリ報道官は17日の会見で、ガザ地区での作戦で人質3人の遺体を発見し収容したと明らかにしました。

遺体を収容した際の詳しい状況は明らかにしていませんが、拘束したハマスの戦闘員への尋問などから得た情報に基づき、場所を割り出したとしています。

イスラエル政府は、これまでにおよそ130人がガザ地区でイスラム組織ハマスに人質にとられているとしています。

人質の中にはすでに死亡した人もいるとされ、イスラエルとハマスの間の戦闘休止と人質解放に向けた交渉が停滞する中、交渉による人質解放を求める声がさらに強まることが予想されます。