水俣病専属担当新設 環境省が体制強化へ マイク音切り問題受け

水俣病犠牲者の追悼慰霊式のあとの懇談の場で、患者団体などのメンバーが発言している途中で環境省の職員がマイクの音を切った問題を受けて、環境省は水俣病対策専属の担当を新たに設けるなど体制を強化し、信頼回復に努めることを明らかにしました。

この問題は今月1日、水俣病の犠牲者を追悼する慰霊式のあとの環境大臣と患者や被害者などの団体の代表との懇談の場で、団体のメンバーが発言している途中に、制限時間を超過したとして環境省の職員がマイクを切ったものです。

この問題を受けて伊藤環境大臣は、10日の閣議後の記者会見で、水俣病の患者団体など地元との信頼回復に努めるため省内の体制を強化することを明らかにしました。

具体的には、新たに水俣病対策の担当審議官を設けるとともに、担当の特殊疾病対策室の人員を増やすとしています。

また、地元の声をより丁寧に聞くため、慰霊式後の懇談の場だけではなく、副大臣や政務官が現地を訪問する機会などを増やすということです。

伊藤大臣は「水俣病が終わっていない責任は環境省にある。どのように救済できるのか、さらなる対策を進めていきたい」と話していました。

また、水俣病の関係団体に非難の声が寄せられていることについて「申し訳なく思っている。二次被害の防止など、地元の人たちに悪影響が出ないように対策を進めたい」と述べました。

発言を遮られた団体と支援団体に“非難”電話やメールも

この問題で、発言を遮られた団体とその支援団体に「持ち時間を過ぎた側が悪い」などと非難するような電話とメールが、少なくとも合わせて6件寄せられていたことが団体側への取材で分かりました。

こうした電話などについて団体のメンバーは「懇談に参加した多くの人が高齢で話すのが難しい中、練習を重ねて、持ち時間に収まるよう努力してきました。どうしても時間を過ぎてしまう時には、団体どうしで時間を譲り合うといった工夫もしてきました。配慮しながら、懇談に臨んできたことを理解してほしいと思います」と話していました。

熊本県 木村知事「非常に憤り感じる」

発言を遮られた団体側を非難するような電話などが寄せられたことについて、熊本県の木村知事は10日の定例の記者会見で「非常に憤りを感じる。水俣病患者や支援者への差別や偏見、ひぼう中傷はあってはならず、意識啓発を徹底したい」と述べました。

また、今回の一連の問題について「事務方の不手際でせっかくの意見交換が台なしになってしまったのは非常に残念だ」と述べたうえで、当日、伊藤環境大臣に同行していた環境省の幹部に日程の組み方について苦言を呈していたことを明らかにしました。

今回の懇談では、各団体の持ち時間が3分に設定されていましたが、木村知事は、環境省が当日の進め方について事前に団体側へメールして、返事がなかったものの了承を得られたと説明しているとしたうえで、「心がこもっていないと思う。これでいいですかという電話1本くらいあってもよいのではないか」と指摘しました。

そのうえで、「要因の1つには東京と水俣の距離があるのではないか。だからこそ県がやるべきことはあると感じる。環境省で寄り添いきれない部分を県独自でしっかりやることに尽きる」と述べました。

さらに、今後の懇談の在り方について「持ち時間3分は撤廃すべきで短すぎる。関係者の思いを聞いてもらえる機会がない中、無制限はどうかと思うが、言いたいだけ言ってもらえればよいと思う」と述べ、見直すべきだという考えを示しました。

熊本県 木村知事「つるしあげ」発言を謝罪

また、熊本県の木村知事は10日の会見で、今月1日の懇談後に水俣病の患者団体側が環境省に抗議していたことについて、「あの場で大臣も環境省も事実上、つるしあげになっている」と述べました。

この「つるしあげ」という発言について記者から真意を尋ねられると、「素直にことばを訂正する。団体側が厳しい怒りをこめて大臣や担当者を叱責されていたことを言いたかった。申し訳ない」と述べ、発言を訂正して謝罪しました。