南海トラフ巨大地震評価検討会 震度6弱後も“特段の変化なし”

南海トラフで巨大地震が起きる可能性を評価する定例の検討会が開かれ、先月17日に愛媛県と高知県で震度6弱の揺れを観測した地震のあとも「特段の変化は観測されていない」とする評価結果をまとめました。

専門家でつくる検討会は9日、定例の会合を開き、南海トラフの想定震源域や、その周辺で観測されたデータを分析しました。

それによりますと、巨大地震の想定震源域にあたる地域では先月17日、豊後水道を震源とするマグニチュード6.6の地震があり、愛媛県と高知県で震度6弱の揺れを観測しました。

ただ、地震の規模から、南海トラフ沿いのプレート境界の固着状態に特段の変化をもたらすものではなく、観測データからも目立った影響がなかったことを確認したとしています。

一方、プレート境界付近では「深部低周波地震」と呼ばれる小規模な地震が
▽四国中部で3月22日から先月4日にかけて
▽四国西部で先月8日から29日にかけて継続して観測されています。

ほぼ同じ時期に周辺の複数の「ひずみ計」でわずかな地殻変動が観測され、いずれも想定震源域のプレートの境界が数日から1週間程度かけてゆっくりとずれ動く「短期的スロースリップ」が原因とみられます。

このほか
▽四国中部で2019年の春ごろから
▽静岡県西部から愛知県東部にかけて2022年のはじめから地殻変動が継続的に観測されていて
いずれも
▽四国中部周辺と
▽渥美半島周辺のプレートの境界が年単位でゆっくりとずれ動く「長期的スロースリップ」が原因とみられます。

このうち、四国中部周辺のスロースリップは、去年秋ごろから一時的に鈍化していたものの、最近は継続しているということです。

これらの現象は繰り返し観測されていることから、検討会は「大規模な地震の発生の可能性がふだんと比べて相対的に高まったと考えられるような特段の変化は観測されていない」とする評価結果をまとめました。

検討会の会長で東京大学の平田直名誉教授は「巨大地震がいつ起きても不思議でない状態は続いていると認識している。改めて注意して、どこへ逃げるか避難経路はどうするか、家族と連絡を取るかなどを確認し、備えを続けてほしい」と呼びかけています。