日本郵便と西濃運輸 トラック長距離輸送 共同で行う業務提携へ

物流のひっ迫に対応するため、日本郵便と西濃運輸は、トラックの長距離輸送を共同で行う業務提携を結ぶことで基本合意しました。人手不足や物流コストの上昇が深刻化する中、共同輸送の取り組みはさまざまな業界で広がっています。

発表によりますと日本郵便と西濃運輸は、業務提携を結ぶことで基本合意し、「幹線輸送」と呼ばれる集荷や配送の拠点を結ぶトラックの長距離輸送を共同で行う検討を進めるということです。

幹線輸送を担うトラックは両社合わせて1万台規模となりますが、全国での共同輸送を想定しています。

物流業界では、先月から、トラックドライバーの時間外労働に上限規制が適用される中、人手不足や物流コストの上昇が深刻化しています。

両社は今後さらにほかの物流会社にも共同輸送への参加を呼びかけるほか、物流業務へのデジタル技術の導入などで協業することも検討するとしています。

共同輸送の取り組みは、物流大手だけでなく飲料メーカーや大手コンビニ各社など大手企業の間で広がっていて、こうした動きはさらに活発になりそうです。

日本郵便 千田社長「物流の課題解決につなげたい」

日本郵便の千田哲也社長は記者会見で「将来的に共同化する規模や範囲を拡大し、物流の課題解決につなげたい」と述べました。

西濃運輸 高橋社長「物流サービスの維持に取り組みたい」

また、西濃運輸の高橋智社長は「個社の努力だけでなく企業の垣根をこえた共創が重要だ。課題が多い物流業界で変革の旗手となり、物流サービスの維持に取り組みたい」と述べました。

共同輸送で積載率向上 長距離はリレー輸送

物流業界では先月から時間外労働の上限規制の適用が始まり、ドライバーの1日の拘束時間は原則として13時間までとなりました。

このため従来は1人のドライバーが1日で運んでいた東京ー大阪間の長距離輸送の場合、
▽2日かけて運ぶか、
▽2人のドライバーが中継拠点で交代するリレー形式で運ぶ必要があるという試算もあります。

一方、国土交通省の調査では、トラックに積載可能な量に対する実際の積み荷の量を示す「積載率」は、40%程度にとどまっています。

長距離トラックの積載率は、これを上回る水準だとみられるものの、物流の2024年問題で人手不足が深刻化し輸送能力の不足が懸念されていて、積載率をどう引き上げるかが業界全体の課題となっています。

こうした中で両社は、共同輸送によって積載率を向上し、ドライバーを確保することに加え、全国にある互いの物流拠点を使って、長距離のリレー輸送を実施したい考えです。

リレー輸送については、国土交通省も従来のような長距離輸送の迅速性を確保するために、効率的な取り組みだと位置づけていますが、2021年の調査では、リレー輸送を
▽「実施している」という運送事業者は16%にとどまっています。

これに対し、リレー輸送を
▽「実施しない」という事業者が36%
▽「興味はあるが実施できていない」という事業者が35%を占めています。

背景には、中小の事業者が自前で各地に輸送拠点を設けるのが難しいという点もあり、国土交通省は近畿と九州とを結ぶ輸送網の中間に位置する、広島県のサービスエリアに貨物の中継拠点を整備するなど、リレー輸送の導入を促すため今後、各地に拠点を設けていく方針です。