ALS男性の訪問介護めぐり吉川市に賠償命じる判決 さいたま地裁

重い障害がある人が利用する「重度訪問介護」をめぐり、難病で寝たきりの男性が埼玉県吉川市に対し、24時間の介護サービスを求めた裁判で、さいたま地方裁判所は、市の決定より6時間ほど多い一日当たりおよそ19時間分の利用を認め、市に対して130万円余りの賠償を命じる判決を言い渡しました。

難病のALS=筋萎縮性側索硬化症で寝たきりの48歳の男性は、介護費用の大半が公費で賄われる「重度訪問介護」のサービスについて、2020年まで住んでいた吉川市が、妻からの介護などを理由に、一日当たり13時間余りとした決定は不当だとして、市に対し24時間の介護サービスを利用できるよう求めていました。

8日の判決で、さいたま地方裁判所の田中秀幸裁判長は「幼い3人の子どもの育児などをしている妻が、夫を介護できるのは一日に2時間程度で、市は、妻の負担などの検討を怠っていた」などとして、一日当たりおよそ19時間分の利用を認め、市に対し130万円余りの賠償を命じる判決を言い渡しました。

また、男性が日常的に使用している文字盤で会話しようとした際、手続きのために訪れていた市の職員が「時間稼ぎですか」と発言したことについて、「強いひぼう中傷にあたる発言だ」と指摘し、市に慰謝料5万円を支払うよう命じました。

原告の代理人弁護士「価値が高い判決」

判決のあと原告の代理人の藤岡毅弁護士は「判決は個別の事情を調査した上でサービス時間を判断するよう指摘していて価値が高い判決と言える。妻に負担がかかったことから男性は離婚に追い込まれた。ほかの家族でも起きていてこれは特殊なケースではない」と指摘しました。

その上で「行政は虚心たん懐に患者や家族の困りごとは何かを聞き取って事実をくみ取り判断してほしい」と述べました。

原告の男性「全国の障害者が安心して生活を」

判決のあと原告の男性は弁護士を通じて「当初、市が示したサービス時間が違法と認められ満足しています。全国の障害者が幸せで安心して生活できるようになってほしいです」とするコメントを出しました。

吉川市「判決文を検討し対応判断」

判決について吉川市は「判決文が届いていないのでコメントは差し控えます。判決文を検討し控訴するかどうかも含めて今後の対応を判断します」としています。