能登半島地震の被災地 大型連休に避難先から戻る人も

能登半島地震で被災した石川県輪島市では、大型連休にあわせて避難先から故郷に戻り、壊れた家から荷物を運んだり公費での解体を申請したりする人たちの姿が見られました。

輪島市 大型連休にあわせて避難先から戻り自宅の片づけ

輪島市堀町の自宅が半壊し、夫と孫、それにひ孫と一緒に岐阜県に避難している梶喜代江さん(76)は、5月3日、孫が運転する車でおよそ4時間半かけて故郷に戻りました。

梶さんの自宅は屋根が壊れて雨漏りし、入り口には隣家の塀が倒れかかって危険なことなどから、取り壊すことを決め、長女が4日に市役所を訪れ、公費での解体を申請しました。

このあと、家族総出で自宅の片づけを行い、まだ使える家具などを外に運び出し、トラックの荷台に積み込みました。

作業を終えたあとは、みんなでカレーやおにぎりを食べ、久々に一家団らんのひとときを過ごしていました。

梶さんは「避難先が遠いので、休みがないと戻って来られない状況ですが、別々に生活している家族の顔を見られただけでもよかったです」と話していました。

また、長女の谷内美紀さんも自宅が被災し、市内に住む息子のもとに身を寄せているということで、「連休は本当はのんびりしたいけれど、やることに追われています。でも、久しぶりに家族に会えて、やっぱり皆でいるのが、にぎやかでいいなと思います」と話していました。

梶さんは夫とともに仮設住宅への入居を申し込んでいますが、建設が追いついておらず、入居が決まりしだい、避難先から輪島に戻りたいとしています。

輪島市 気温25度以上のなか がれきの撤去作業

能登半島地震で大きな被害を受けた石川県輪島市では、5日午前中から気温が25度以上の夏日となるなか、各地でがれきの撤去作業などが進められています。

このうち輪島市河井町の重蔵神社では、学生ボランティアなど4人が境内に集まり、地震で倒壊したやしろの周辺でがれきの撤去作業を行いました。

学生たちは、汗をにじませながら、木材などを集めて次々に運び出していました。

ボランティアに参加した金沢工業大学3年の藤井信吾さんは「被災地の力になりたいと思い参加しました。かなり暑いので、飲み物は多めに持ってきています」と話していました。

輪島市出身で金沢大学1年の曽又丈諭生さんは「連休で帰省するのに合わせて参加しました。こまめな休憩と水分補給に注意しています」と話していました。

穴水町 津波被害免れた田んぼで地震後初めての田植え

石川県穴水町で5日、津波の被害を受けたコメ農家が、地震のあと初めて田植えをしました。

穴水町甲地区でコメを育てる泊一夫さん(76)は、地震で津波が押し寄せ、所有する田んぼおよそ3000平方メートルが浸水しました。

田んぼには大量の泥や漂着物が流れ込み、用水路なども壊れたため、ことしの田植えは諦めざるをえませんが、泊さんは被害を免れた残りの田んぼでコメを作ることを決め、5日、地震のあと初めて田植えをしました。

泊さんは、連休で帰省していた家族にも手伝ってもらい、15センチほどに育った苗を田植え機で次々に植え付け、機械での作業が行き届かない田んぼの端には子どもたちが手作業で1本ずつ丁寧に植えていました。

泊さんによりますと、ことしは作付面積が半分ほどに減ったため、出荷はせず、家族が食べる分のコメを作るということです。

泊さんは、自宅が全壊し、家の片付けと稲作を両立できるか不安だったとした上で、「はじめは余裕がなかったのですが、やっぱりこのままではだめだと思い、田植えをすることにしました。周りにはことしは諦めた人もいて寂しいですが、自分は自分なりにできることをやっていきたいです」と話していました。

コメは順調に育てば9月上旬に収穫できる見込みだということです。

七尾 「曳山行事」の「でか山」取りやめ 代わりに小さな山車で

石川県七尾市の伝統の春祭り「青柏祭」で巨大な山車が練り歩く「曳山行事」は、ことし、能登半島地震の影響で取りやめとなりましたが、5日は代わりに地元の有志らが製作した小さな山車を引いて子どもたちが練り歩きました。

4日に開催された七尾市の「青柏祭」は、「でか山」と呼ばれる巨大な山車が練り歩く「曳山行事」が最大の呼び物ですが、地震で道路がひび割れるなどした影響で取りやめとなりました。

5日は、こどもの日にあわせて、子どもたちに伝統の祭りの雰囲気を少しでも味わってもらいたいと、地元の有志らが「でか山」の代わりに小さな山車を製作してイベントを開きました。

「ちびでか山」と名付けられたこの山車は、高さ2メートル余りと「でか山」の5分の1ほどの大きさで、子どもたちはまず、こいのぼりなどの形をした板に色を塗るなどして山車を飾りつけました。

このあと、子どもたちは「わっしょい」などと大きな掛け声を上げながら山車を引いて、倒壊した家屋などが残された市の中心部の通りを練り歩きました。

参加した子どもたちは「楽しかった」などとうれしそうに話していました。

地元の45歳の女性は「本当にお祭りをしているみたいで泣きそうになりました。みんなで力を合わせて一緒に頑張っていきたい」と話していました。

イベントを企画した岡田翔太郎さんは「少しの時間でしたが、本物の『でか山』のようにみんなで楽しみながら動かすことができてよかったです。倒壊した建物は残ったままですが、少しずつ元気を取り戻していきたい」と話していました。

珠洲 子どもたちのために縁日を模したイベント

「こどもの日」の5日、能登半島地震で大きな被害を受けた石川県珠洲市で、縁日を模したイベントが開かれ、子どもたちが楽しいひとときを過ごしました。

このイベントは、能登半島地震の被災地で炊き出しを行ってきた四国地方の飲食店で作る団体が、珠洲市の「野々江総合公園」で開きました。

会場では、縁日を模した9つの露店が、うどんやベビーカステラ、それに、たこ焼きなどを無料でふるまい、地元の親子連れがおいしそうに味わっていました。

また、輪投げを楽しむコーナーも設けられ、参加した子どもたちが景品のおもちゃをもらって笑顔を見せていました。

地元の30代の女性は「このようなイベントは子どもの息抜きにもなるので、ありがたいです」と話していました。

珠洲市では1年前の5月5日、1人が死亡する震度6強の地震が起きていて、会場に集まった人たちは、発生時刻の午後2時40分すぎになると、能登半島地震も含めた犠牲者に黙とうをささげていました。

イベントを開いた団体「四国ケータリング」の尾濱大生代表は、「能登半島地震だけでなく、1年前の地震も忘れてはいけないと思い、きょうイベントを開きました。子どもたちが笑顔で過ごしてくれてよかったです」と話していました。