【解説動画】戦闘休止交渉 イスラエルが譲歩 合意なるか

イスラエルとハマスの間での交渉では、イスラエルが譲歩を見せたことから合意への機運が高まっていると思われていたところ、今度は、ネタニヤフ首相が「合意の有無にかかわらずラファへ部隊を進める」と発言し、早速雲行きが怪しくなってきました。

果たして、合意はなるのでしょうか?そのために、乗り越えるべきハードルは何なのでしょうか?別府正一郎キャスターの解説です。

※4月30日と5月1日に「キャッチ!世界のトップニュース」で放送した内容です。
※動画は13分14秒。
データ放送ではご覧になれません。

“イスラエルが譲歩”

まずは、今回の交渉で合意に向けた期待が出ている理由を押さえておきます。大きいのはイスラエルの要求がトーンダウンされた点です。

ハマスによって人質とされた人は253人と見られますが、このうち、すでに解放されたりした人を除くおよそ130人の行方がいまだに分かっていません。

イスラエルは、まずは女性や高齢者など40人の解放を求めてきましたが、それを33人でよいとして、譲歩したと伝えられています。33人戻ってくれば、まずは40日間戦闘を休止する内容だと見られます。

もちろん、戦闘は直ちに終わるべきであり、人質は全員即時解放されるべきであり、今回の交渉で合意しても不十分です。それでも前進ではあります。それだけに、何とかまとまって欲しいところです。

交渉をとん挫させる双方のリスク要因

しかしイスラエル、ハマス双方に、この交渉をとん挫させるリスク要因があります。

このうち、イスラエルには内政の課題があります。強いリーダーを自認するネタニヤフ首相ですが、政権基盤は盤石ではありません。極右政党と連立を組んでいて、その意向を無視できないのです。

その極右政党は、ガザでの戦闘の継続を求めていて、これまでも合意に反対してきました。極右の代表格のベングビール国家治安相は4月30日、ネタニヤフ首相と会談したあと、声明を出して、「無謀な合意には反対する」と述べたということです。

首相の「合意の有無にかかわらずラファへ部隊を進める」という発言の背景には、こうした極右への配慮があると見られます。

ネタニヤフ首相としては、交渉で合意にゴーサインを出すかどうか、自らの政権崩壊のリスクも天秤にかけながら判断するものと見られます。

一方のハマス。こちらも組織内に強硬派を抱えていると見られます。そもそも、ハマスのガザ地区トップのシンワル指導者は健在だと見られています。

また、イスラエル軍が、壊滅的な被害を与えたガザ地区の北部でも、ハマスとイスラエルの戦闘が再び起きていることが示すように、ハマスは一定の活動を続けることができています。

こうした中で、ハマスの中にも、合意に応じる必要はないという声が出ている可能性もあります。

しかし、自らの権力の存続や組織の理屈などのために、平和に背を向けるようなことは許されることではありません。双方の指導者は、合意に向けて、強い意志を示すべき時に来ています。