“築地市場跡地に多機能型スタジアム”再開発事業者が提案説明

築地市場跡地の再開発を担う事業者が5月1日会見を開き、およそ5万人を収容できる多機能型スタジアムを整備するなどの提案内容を説明しました。

都は、4月、東京の豊洲市場への移転に伴って6年前に閉鎖された築地市場跡地の再開発を担う事業者を三井不動産を代表としたトヨタ不動産、読売新聞グループ本社など11社の企業連合に決めました。

5月1日、事業者は中央区のホールで提案内容について説明する記者会見を開きました。

この中で、およそ5万人を収容できる野球やサッカーなどのさまざまなスポーツ大会やコンサートなどの開催を想定したスタジアムを中心に再開発を進める考えを示しました。

スタジアムは観客席やフロアを動かすことで、用途に応じて8つの形に変えることができるということです。

また、隣接する場外市場と連携して、料理人の技術を伝承したり「食」の研究拠点を整備したりして食文化を発信していく考えを示しました。

代表企業の三井不動産の植田俊社長は「水都・東京を再生し都民から愛され、世界の人たちが集まる築地のまちをつくるためしっかりと取り組んでいきたい」と話していました。

来年度から一部の施設で着工し、スタジアムを含む多くの施設は、2032年度に整備を完了させる予定だとしています。

読売新聞グループ社長「巨人移転 前提ではない」

築地市場跡地の再開発を行う事業者の会見には、企業連合に加わる読売新聞グループの山口寿一社長も出席しました。

プロ野球・巨人のオーナーも務める山口社長は巨人の本拠地を現在の東京ドームから新たに建設されるスタジアムに移転するのか問われたのに対して「巨人が移転するという前提ではない。スポーツ・音楽・文化などの発信に貢献するスタジアムとして提案している」と答えました。

さらに報道陣から「巨人の本拠地にしたいという考えはあるか」と重ねて問われると「魅力的なスタジアムで使ってみたいという気持ちはあるが、移転を前提に計画、提案していない。さらにプロ野球の球団の本拠地移転は大仕事になるし、相当な調整が必要で読売新聞だけで決められることではない」と述べて、現時点で移転は決定していないと強調しました。

一方で、スタジアムを野球の試合に使用することについては「国際試合を行ういい舞台になると思う。大リーグとの関わりのみならず韓国や台湾などとの国際試合を想定している。国内のプロ野球は各球団の主催権があるので具体的なことは言えない」と話しました。

巨人の本拠地、東京ドームはことしで完成から36年がたち、2021年からその翌年にかけては大規模な改修工事も行われましたが、老朽化が大きな課題となっています。

築地市場跡地再開発とは

「日本の台所」とも呼ばれ、食文化の発信拠点にもなっていた築地市場。

6年前の2018年10月、江東区 豊洲への移転に伴って閉鎖されました。

この1年前、小池知事は「築地は守る、豊洲は生かす」と発言して、市場の豊洲への移転に伴って築地市場跡地を再開発する方針を示しました。

そして、都はおととし「交流により、新しい文化を創造・発信する拠点」をコンセプトに事業者を募集し、4月、三井不動産を代表としたトヨタ不動産、読売新聞グループ本社などの企業連合に決定しました。

公開された提案内容によりますとおよそ5万人を収容でき、野球やサッカーなどのさまざまなスポーツ大会やコンサートなどの開催を想定した多機能型のスタジアムを中心に国際会議を開催する施設を整備するとしています。

また、築地の食文化については、築地場外市場と連携して江戸前の食文化を発信するにぎわいの空間などを整備するとしています。

ただ、審査を行った有識者からは「築地が育んできた歴史・文化などの資源を十分に生かしながら、東京の魅力をさらに高める新しい文化の創造や醸成、発信に取り組むこと」などとして、再開発を進める上で、情報発信や意見の受け付けなどで都民に丁寧に対応するよう求める意見が出されています。

事業者は今年度末に都と協定を締結した上で、来年度から一部で着工し、スタジアムを含む多くの施設は、2032年度に整備を完了させる予定だとしています。

地元店の協議会 町並み残すガイドラインとりまとめ

東京 中央区の築地市場の跡地に隣接する場外市場は、戦前から場内市場を補うように形成され、かつてはプロの料理人を相手に商売をしてきましたが、今では観光客向けの店も増えています。

市場跡地で5万人収容のスタジアムなどが整備される再開発が進む中、場外市場の店でつくる協議会は築地の町並みや食文化を残していこうと新たに出店する事業者向けのガイドラインを取りまとめました。

ガイドラインは中央区が定めた要綱で認められ、事業者側は場外市場に出店する場合、店のデザインについて極端に派手な色彩としないなど協議会と事前に相談する必要があるとしています。

また、築地で商売をする上での心構えやマナーとして客が納得する適正な価格で商品を提供することや客の安全を確保するため、道路に看板を設置しないことなどを求めています。

「築地食のまちづくり協議会」の北田喜嗣理事長は「再開発でさらに築地への関心が高まると思うが、事業者に築地がどうあるべきかを確認してもらい、これまで築いた文化を大切にしながらまちづくりをしていきたい」と話していました。

具体的なガイドラインの内容は

今回のガイドラインは、「築地場外市場」の事業者でつくるNPO「築地食のまちづくり協議会」が作成しました。

協議会は、新型コロナの流行のあと外国人観光客をターゲットにした店の出店が相次いだことに加え、築地市場跡地の再開発で、まちが大きく変わることが予想されるとして、場外市場の伝統や価値観を共有したいと考え、ガイドラインをまとめたということです。

ガイドラインでは、場外市場が大切にしている価値観や考え方をまとめたものが「憲章」として示され、これに基づいて求められる心構えや対応などが23項目にわたって記されています。

具体的には「場外エリアのにぎわいを維持・発展させるため、築地の歴史や文化、流通の仕組みなども理解し、全体として帰属意識を高めよりよいまちづくりを心がける」とか「お客様が納得する適正価格で提供する」などとしています。

このほか、店のデザインについて極端に派手な色彩としないことや、過度な表現の看板を控えることや、通りに面した場所に室外機を置かないこと、客の行列は整理し、通行を妨げない工夫をすることなど、まちの景観や安全を守る上でのマナーも求めています。

ガイドラインは、中央区が定める「市街地開発事業指導要綱」で認められ、事業者が場外市場で新たに店を出す場合はガイドラインの内容を確認し、協議会との「事前協議」が必要だとしています。

このガイドラインについては、事業者も内容を確認していて、場外市場とコミュニケーションを取りながら築地の食文化を発展させたいとしています。