伊藤忠 ビッグモーターの事業引き継ぐ新会社「WECARS」設立

保険金の不正請求問題で経営の立て直しを迫られているビッグモーターの事業を引き継ぐ大手商社の伊藤忠商事が5月1日記者会見を開き、新会社を1日付けで設立したことを発表しました。新会社の経営にはビッグモーターの旧経営陣は加わらず、存続会社が損害賠償への対応にあたるとしています。

ビッグモーターの事業を引き継ぐ伊藤忠商事は1日午前、記者会見を開き、1日付けで新会社を設立したことを発表しました。

新会社の社名は「WECARS」で、社長には元伊藤忠商事執行役員の田中慎二郎氏が就任しました。

一方、ビッグモーターの和泉伸二社長を含めた旧経営陣は新会社の取締役には就任しないとしています。

新会社は、▽「伊藤忠商事」と▽子会社でエネルギー商社の「伊藤忠エネクス」、▽それに投資ファンドの「ジェイ・ウィル・パートナーズ」が共同で出資し、合わせて400億円を拠出します。

中古車販売事業や車の整備事業などすべての事業を引き継ぎ、およそ4200人の従業員の雇用も継続するとしています。

一方、存続会社は、社名をビッグモーターから「BALM」に変更し、ジェイ・ウィル・パートナーズが兼重宏行前社長など創業家から100%の株式を取得して存続会社が負債などの処理や、保険金の不正請求に関する損害賠償への対応にあたるとしています。

田中社長「信頼得ることと事業としての成長は両立できる」

新会社「WECARS」の社長に就任した田中慎二郎氏は「会社は過去の経営や一部の社員の行いによって、信頼を失っている」と述べました。

そのうえで、「新会社に関わるすべての人々が最優先すべきはお客様であり、信頼を得ることと、事業として成長することは両立できると信じている」と述べました。

また、「新会社ではコンプライアンス案件についてはうやむやにせず、厳正に対処していくことで撲滅していきたい。組織風土改革に終わりはないと考えている」と述べました。

旧ビッグモーターと創業家は

事業を引き継ぐ新会社の設立によって旧ビッグモーターは、分割されたあとの存続会社として保険金の不正請求に関する損害賠償への対応や、負債の処理などにあたることになります。

存続会社としてビッグモーターから社名を変更した「BALM」は、株式を保有していた兼重宏行前社長など創業家から投資ファンドのジェイ・ウィル・パートナーズがすべての株式を取得しました。

取得金額は少額だとしたうえで非公表としています。

さらに、新会社「WECARS」の設立にあたって伊藤忠商事やジェイ・ウィル・パートナーズなど3社が拠出したおよそ400億円の一部が事業を引き継ぐ対価として存続会社に支払われたということです。

ただ、金融機関の融資などの負債の返済や、保険金の不正請求に関する損害賠償への対応にあてられ、創業家には渡らないとしています。

伊藤忠商事出身で「WECARS」の経営企画部長に就任した合六渉氏は会見で「創業家に対してお金が渡るどころか、逆に創業家にもそれなりの責任をとっていただくというのが今回のスキームだ」と述べました。

また、伊藤忠商事は5月1日の会見で、存続会社の経営について、旧ビッグモーター社長の和泉伸二氏が担う方向で調整が進められていると説明しました。

一方、新会社が引き継いだ中古車販売の事業は、販売台数が一時期は1割から2割ほどに落ち込み、現在も3割から4割程度にとどまっているということで、事業の立て直しが課題となっています。

不正を生み出した組織風土の改革の徹底とともに、一連の問題で失った信頼の回復が実現できるかが問われることになります。