円相場 小幅に値下がり

連休明けの30日の東京外国為替市場では、市場介入への警戒感が高まる中、神経質な取り引きが続き、円相場は、先週末と比べて小幅に値下がりしました。

4月30日の東京市場では、午前中、1ドル=156円台前半から、じりじりと円安が進み、一時、1ドル=157円台をつける場面もありましたが、その後は、一進一退の神経質な取り引きが続きました。

午後5時時点の円相場は、先週末と比べて15銭円安ドル高の1ドル=156円85銭~87銭でした。

一方、ユーロに対しては、先週末と比べて23銭円高ユーロ安の1ユーロ=167円90銭~94銭でした。

ユーロは、ドルに対して1ユーロ=1.0704~06ドルでした。

市場関係者は「きのうの荒い値動きから、政府、日銀による市場介入への警戒感が一段と高まっていることに加え、今週はアメリカで金融政策を決める会合も開かれることから、その結果を見極めようと、様子見ムードも強まり、値動きは小幅にとどまった」と話しています。

日本取引所グループ 山道CEO「円相場の水準は安すぎるのでは」

外国為替市場で円安が進んでいることについて、日本取引所グループの山道裕己CEOは記者会見で「現在の円相場の水準は個人的には安すぎるのではないかと考えている。政府の為替政策や日銀の為替への考え方についてコメントする立場にないが、われわれとしては状況を見ながら、公平公正な売買機会の提供、安定的な市場運営という役割を果たしていきたい」と述べました。

【専門家Q&A】元日銀理事 円安が進んでいる要因について

外国為替市場で円安が進んでいる要因について、日銀で理事や調査統計局長などを務めた早川英男さんに聞きました。

Q.このところの円安の要因は。
A.基本的には2つの力が働いている。
1つは、日本とアメリカの金利差だ。
アメリカの長期金利が一時、5%台に上昇したのに対し日本の長期金利はおおむね0%ですから金利差が拡大したことが大きい。
アメリカではことし、それなりの大きさの利下げが行われるだろうとマーケットは考えていた。
しかし、最近の経済データなどをみるとアメリカの景気は比較的強いので金利が十分下がらないという印象が強まっていてこの見方が変わったことが大きい。
もう1つは、日本の国際収支を見ても日本経済の実力の低下や国力の低下があると思う。

Q.国力の低下とは具体的に何か。
A.かつて日本は貿易黒字大国だったが、リーマンショックぐらいを境目に必ずしも黒字が当たり前ではなくなってきた。
そしておととしは、原油価格が大きく上がり過去最大の貿易赤字となり、貿易黒字大国から最近は、かなり赤字になりやすくなってきた。

Q.なぜですか?
A.インバウンドの増加によるサービス収支の大幅な改善が、デジタル赤字の拡大によって相当吸収された面がある。
クラウドやAIなどいろんなコンテンツに対する使用料がすごい勢いで増えていてデジタル赤字は今、急拡大している。
また、日本の海外現地法人が海外で稼いだものは所得収支にカウントされるため、確かに帳簿上は所得収支が膨らんでいて海外で稼いでいるように見える。
ただ、その稼いだお金を日本に送るかというと、実際は送らないケースが大半だ。
海外で工場を作りその後、拡大するとなれば海外で工場を拡大するわけで日本に資金を戻す必要がなく日本でビジネスチャンスが少ないということにつながる。

Q.日本に求められることは何か。
A.日本経済が強くなることによってそれを反映する形で円高になることがいちばん望ましい姿だと思う。
かつては日本経済は強いということで進んだ円高で、日本の実力がだんだん低下していって一時期は円安にならなくて苦しんだ面があったが今は日本経済の実力の停滞を反映する形で円安が進んできた。
これまで日本企業はとりあえず利益を増やして、内部留保をため込む、いわば守りの経営をずっとやってきたわけだが、そうではなく人やモノへの投資を増やして競争力を高めていく方向にかじを切っていかないと、日本経済の力はついてこない。
前向きな投資を増やして生産性を上げて、その結果として円高になっていくというのが望ましい姿だ。