【会見全文】大相撲 大関 琴ノ若が祖父のしこ名「琴櫻」を襲名

大相撲の大関 琴ノ若が5月行われる夏場所の番付発表に合わせて、元横綱の祖父のしこ名、「琴櫻」を襲名しました。

琴ノ若改め琴櫻は、押し相撲を持ち味に優勝5回を誇り、「猛牛」と呼ばれた元横綱 琴櫻を祖父に持ち、父は師匠で元関脇 琴ノ若の佐渡ヶ嶽親方という相撲一家で育ちました。

元横綱 琴櫻

子どものころに祖父と「大関になったら琴櫻のしこ名を継いでいい」と約束を交わしていましたが、新大関の先場所は最高位が関脇で引退した父のしこ名を大関の地位に上げて恩返しをしたいと琴ノ若のまま臨みました。

右:父で師匠の佐渡ヶ嶽親方

その後、夏場所から祖父のしこ名を襲名することを決めて日本相撲協会に届け出て、28日発表された夏場所の番付では「琴櫻」として西の大関に座りました。

また、下の名前もこれまでの「傑太」(まさひろ)から「将傑」(まさかつ)に変えました。

「琴櫻」のしこ名が復活するのは、祖父が引退した昭和49年の名古屋場所以来、およそ50年ぶりです。

【会見全文】 琴櫻 佐渡ヶ嶽部屋で襲名を語る

琴櫻は30日、千葉県松戸市の佐渡ヶ嶽部屋で記者会見しました。

その会見の全文です。

Q.昇進ではないが(取材に)集まってくることに注目度の高さかなと思うが。
A.そんなにしゃべることないです(笑)

Q.あいさつみたいな形でいただいてもいい?
A.今場所から祖父(先代の親方)のしこ名をいただきました「琴櫻」です。よろしくお願いします。

Q.番付表に「琴櫻」と載ることになったが、どんな感想?
A.不思議な感覚ですかね。やはり「琴ノ若」で上がってきたので、当たり前のように、そこ(番付)に名前があったので、(名前が)変わるって感覚が久しぶりだなっていう…新十両以来じゃないですか。5年くらい(名前が)変わってなかったですから。

今場所で「琴櫻」に変えた経緯

Q.改めてこの場所で(名前を)変えた経緯については?
A.(新大関の場所を琴ノ若で)そのままいったことに関しては昇進したときと同じで、そういう思いがあって…そのままいくって言ったが、はっきりと一場所って明言していなかったので、その中で師匠と相談して、場所の終わりの時に、師匠からももう(名前を変えても)いいんじゃないかと言ってもらえたので、ここから(名前を)変えて頑張りますと、変わるのが決まりました。

Q.下の名前も今回改めたが、そこに関しては?
A.字画とかですかね?
佐渡ヶ嶽親方:字画も見たし、琴櫻という字画の下の名前も字画を見てもらって「将傑」(まさかつ)という、先代とは逆だが。

Q.「将」という字と「傑」という字が先代とは逆になっている。そこはあえてそうしたのか?
佐渡ヶ嶽親方:やはり琴櫻というしこ名に「まさかつ」というのがぴったりだったみたいです。

Q.同じにするわけにはいかないということで、ひっくり返した?
親方:そうですね、私も下の名前もそこまでは考えていなかったが、やはり琴櫻というしこ名に下の名前もしっかり合うものが一番いいんじゃないかということで、家族で話しをして、字画もみていただいて。

しこ名復活 師匠の思いは?

Q.50年ぶりに「琴櫻」というしこ名が復活したが、師匠としての考え、思いは?
親方:呼びにくいですよね(笑)私の師匠ですから。親方衆もみんな呼びにくいんじゃないかなというのは…でも呼ばないとね「しこ名」ですから、そこは割り切って呼ぼうかなと。

Q.改めて「琴ノ若」として闘ってきた弟子・息子の姿は?
親方:ひとことで言うと、よく頑張ってきたなと、小さいときからの先代との約束をしっかり守ってくれたなと、いろんな面で苦しい時期もあったと思うが、でもしっかり乗り越えて頑張ってきたなと思います。

先代「琴櫻」との約束

Q.小さいころの約束、いつごろどんな形で先代と?
A.そんなに覚えてません。小学低学年ぐらいの時に「いつになったらもらえるの?」って自分が聞いたらしいが、今思えばとんでもないことを言ってるなと思います。先代が横綱の名前だから、上に上がっても大関からだといわれたので、って感じです。

Q.その名を継ぐ瞬間がやってきたが、どんな思いか?
A.思ったより実感がない。「琴ノ若」で反応しそうです。約束していただいたところを自分でつかめたというのは、少しは先代に対していい報告じゃないけど、まだもう一つありますから、先代も“そこを目指せ”って言うでしょうし、満足していないと思いますけど、まず1つ約束を守れたというのはよかったかなと思います。

Q.番付発表は(先代の)墓前に報告した?
A.まだです。でも(大関昇進が)決まった時点で来場所からというのは手を合わせには行っていたので、まだそこまでは考えていないです。

Q.きょう着ているものは?
A.付け人が選んできました。

Q.琴櫻を意識したのでは?
A.全くしていないです。自分も着ながら思いました。やってるなと。

大関になって変わったこと

Q.大関として巡業を回って全体の総括は?
A.変わらずできる範囲のことはやりながら臨んだし、稽古もそうだが、できるだけ土俵に立つことを心がけながら一日一日をやっていたので、大きく変わったことはそんなにないが、今までどおり、同じように行けるようにと思いながらやっていた。

Q.変わらずにできたか?
A.そうですね、稽古のしかたが少し変わったのはあるが、今までは一緒に入っていたのが、あとから指名したりとか、大関どうしやったりとかがあったので、そこはちょっと違いはあった。でも限られた時間の中で自分が納得できるように後悔しない一日を作れるようにはやってきたので、しっかり、ここから部屋での稽古が始まったらそこでしっかりやらなきゃいけないですし、中身としてはできたほうじゃないかと思います。

Q.稽古で左の足首を少し気にしていたが?
A.まあ、大丈夫だと思います。全然。

大関「琴櫻」として目指すものは

Q.「琴櫻」として大関2場所として、どんな感じで調整ができたらいい?
A.今までやってきたことをしっかり積み重ねてやっていかなければならないし、名前が変わったから何か変わるわけではないので、気持ち的な面もそうだが、先代の名前だと思って土俵に上がるとプレッシャーじゃないけど、自分でよけいな考えを持たずにやりたいので、自分は自分なので、いただいたら自分のしこ名だと思って、今までどおりしっかり部屋で稽古を積んでやれることをやって臨めればいいかなと思います。

Q.琴櫻として、目指していくものは?
A.しこ名関係なく、この世界に入って常に上を目指してやってきたので、しこ名関係なく、先代には追いつきたいと思っているし、そこ(横綱)がつかめる地位のところまではこれたと思うので、またここからしっかり種を積んで、どんどん自分らしくやっていければ、それを続けていって、しっかり上に上がれるようにやっていければいいかなと思います。

Q.優勝するために大事なことは?
A.すべてですね。何がというわけじゃなく、すべてにおいてレベルを上げていかなければならないし、足りない部分があっかたら(優勝に)届かなかった部分もあると思うので、そこを「もう一つ上、もう一つ上」と思ってやっていくしかないので、全体的に強くなってやっていかなければならないと思います。

Q.今場所の目標は?
A.優勝を目指してやっていかなければならないと思うし、自分らしい相撲をきっちりとるというのが大事だと思うので、それをしっかり極めていかなければいけないので、しっかりやっていかなければと思います。

親方 “愛されるような力士に育って”

Q.(親方へ)今後への期待は?
親方:すばらしいしこ名を先代からいただいたので、昔から「桜」というのは、五穀豊穣、縁起のいい花とされているので、「花といえば桜」「相撲といえば琴櫻」強い、愛されるような力士になって育っていってほしいなと思う。

Q.もっと高めたり、指導したいところは?
親方:一つ一つ課題はあると思うが、立ち会いにしても攻めの形にしても守りの形にしても、一つ一つ課題があるので、それをしっかりクリアしていけば、もう一つ上をねらっていけるんじゃないかなと思うし、優勝ということもあると思うので、そこをやっていきます。

先代との2つの約束

Q.おじいさん(先代)と約束したことが「2つ」あったと聞いている、1つは「大関以上になったら琴櫻を襲名する」もう1つは「おじいさんと並ぶ横綱になる」という約束があったと聞いているが、それは本当?
A.覚えてないです。しこ名の話はされたが、約束というか、この世界に入ったからにはてっぺんを目指さないといけないので、そういうふうにやって当たり前だと思っている。

“周りは関係ない”

Q.三役の顔ぶれも動いている印象だが。
A.周りは関係ないです。好成績を残せば下のほうにいても上に当たるし、土俵に上がったら勝負なので、顔ぶれだとか、若いのが上がってきたとか言われるが、勝負の世界ですからそこは関係なくたたかっていくだけなので、そんな人のこと気にしていないです。

名前のイメージ

Q.名前の「傑」という字へのイメージは?
A.先代のしこ名からとっていますからね…イメージ、難しいですね。琴ノ若のほうにも入れていたのを1字取ってというところだったので、いただいたものを汚さないようにというような感じですかね。
親方:応接間に先代の仏壇があるんです、そこには「琴櫻傑將」(ことざくら・まさかつ)と。お参りするたびに見ているので、そのイメージだったと思います。

サインは先代がお手本?

Q.琴櫻のサインの練習は?
親方:ひそかにしていましたよ(笑)
A.でも似ていると思います。
親方:きのうちらっと書いていたらうまいなと思いました。書き方が慣れてました。

Q.練習の成果があったのでは?
A.ぜんぜん成果はないです。
親方:先代と同じようなサインになっていますね。

Q.先代のサインをお手本に?
親方:たぶんそうだと思います。それで絵が描けるようになったら(先代)そのまんまですね。
A.あれ(絵は)無理です。

地元の千葉 松戸ではお祝いムード

大相撲の大関・琴ノ若が夏場所の番付発表に合わせて、元横綱の祖父のしこ名、「琴櫻」を襲名し出身地の千葉県松戸市では祝いのことばが聞かれました。

松戸市は30日午後、市役所に横4メートルの横断幕を掲げ、お祝いムードを盛り上げていました。松戸市スポーツ振興課の望月裕也課長補佐は「市をあげて応援していくので、名横綱のしこ名を受け継いだ来場所はぜひ優勝を目指してほしい」と話していました。

また、松戸市田中新田にある料亭、「割烹しの田」の社長、稲川智子さんは両親が琴ノ若の祖父、元横綱の「琴櫻」と親しく、自身も大関のことを子どものころから知っているといいます。

稲川さんは「『おじいちゃん子』で、食事に来たときはよく先代のひざの上に乗っていました。周囲への気遣いもできるやさしい子でした」と当時の様子を振り返りました。そして今回の「琴櫻」襲名について「立派になり、先代のしこ名を受け継ぐとは感無量です。

先代も天国で喜んでいると思います」と話し、「夏場所は全勝優勝を目指し、ゆくゆくは横綱になってほしいです」とさらなる飛躍を期待していました。