大型連休の初日 被災地では各地でボランティアが片づけ作業

能登半島地震の被災地では、27日からの大型連休に合わせて多くのボランティアが訪れると見込まれています。初日の27日も朝から各地で、ボランティアたちが災害廃棄物の片づけなどの作業に当たっています。

石川県は、大型連休中はボランティアの希望者が日程を調整しやすいことに加え、一時帰宅する被災者も多いと見込まれることから、ボランティアの募集を広く呼びかけてきました。

県が募集するボランティアの人数は、4月27日から5月6日までの10日間は、一日平均で340人と、4月22日までの10日間と比べるとおよそ1.4倍に増えていて、多くのボランティアが訪れると見込まれています。

このうち珠洲市では、大型連休初日の27日、ボランティアたちが午前8時半ごろに社会福祉協議会に集まると、10人前後で1組となって現場に向かっていました。

そして地震や津波の被害にあった住宅で壊れた家財を運び出したり、災害廃棄物の分別をしたりしていました。

神奈川県からボランティアに訪れた男性は「距離が遠く、なかなか来ることができなかったが、大型連休ということで微力ながら力になりたいと思って来ました。ニュースなどでは見ていたが実際に来てみて、まだまだこれからだなと感じました」と話していました。

ボランティアを依頼した男性は「自分でも片づけをしてきたが全然終わらなかったので、今回たくさんの人に来ていただいたおかげで非常にスムーズに進みとても助かりました」と話していました。

石川県はボランティアに対して、事前に現地の状況をよく確認したうえで参加するよう求めているほか、休憩や水分補給をこまめに行い体調管理にも注意するよう呼びかけています。

区長“住民間でボランティアの利用 十分に進まず”

能登半島地震の影響が続く輪島市で、地区の区長を務める男性からは、住民の間でボランティアの利用が十分に進んでいないという声が聞かれました。

地震で一時、孤立状態となった輪島市の河原田地区は、多くの住宅が全壊や半壊の被害を受け、住民たちは避難生活を送りながら住宅の片づけに追われています。

河原田地区の区長を務め、避難所の運営に携わっている古谷裕さんによりますと、地区の住民などに会った際に聞き取ったところ、これまでのところボランティアを依頼した住民はほとんどいなかったということです。

古谷さんは、「この地区は山間部で高齢者も多く、『ボランティアの方に申し訳ない』という声も聞く。さらにボランティアの活用方法や連絡手段が分からない人も中にはいて情報不足になっているのが一番大きいと思う。また、2次避難されている方も多く、片づけにまで手が回っていない人も多い」と話していました。

古谷さんは、住民の間でボランティアを利用しやすい雰囲気をつくることが大切だと感じ、この日(26日)も地区を回って住民に利用を呼びかけました。

このうち、最近まで避難していて自宅に戻ってきたばかりだという84歳の男性は、ボランティアを頼みたいものの、どのような作業をしてくれるかや連絡方法などが分からないとして1人で、散乱した家財道具やガラスなどの片づけをしていました。

男性は「手伝ってもらえると助かるが、分からないことも多く、ボランティアには頼めていない」と話していました。

古谷さんは、「ボランティアの力も借りて、早く復旧作業を進めることが大切だと思うので、地区の住民に地道に声をかけていくしかないです」と話していました。

社会福祉協議会“ニーズの把握と住民への周知を強化”

石川県輪島市の社会福祉協議会は、住民からのボランティアの依頼の数は大型連休に向けて増加している一方で、被害状況と比べると依然として依頼が少ないとして、さらなるニーズの把握と住民への周知を強化していくとしています。

住民からのボランティアの依頼を受け付ける窓口となっている輪島市社会福祉協議会によりますと、依頼の数は大型連休に向けて増えていて、最近は1日あたり40件ほどで、先月と比べると2倍ほどだということです。

これについて、介護福祉課の荒木正稔課長は「これまでの周知と町なかでの活動によって、住民の間でボランティアが徐々に浸透してきた」とする一方で、「被害状況に比べると、依然として依頼が少ない状況だ」と話しています。

石川県の発表によりますと、今月23日時点で、輪島市では全壊や半壊など14800棟余りの住宅が被害を受けていますが、社会福祉協議会が25日までに受け付けたボランティアの依頼の数は、2200件余りだということです。

社会福祉協議会は利用が進んでいない背景について、避難生活の長期化で住宅の片づけまで手が回っていなかったり、事前の調査や作業の際に必要な現地の立ち会いが難しいことなどを挙げています。

また、ボランティアの制度を知らずに依頼が出来ていない住民も少なくないとして、利用を呼びかけるチラシを配っているほか、見守り支援の活動のなかで、ニーズの把握や周知を強化することにしています。

荒木課長は「地元に住民のみなさんが戻ってきたときに利用してもらえるよう、丁寧に説明しながら進めていきたい。ボランティアの活動によって、被災した人も復興に気持ちを向けることができると思うので、少しずつでも継続できるよう、地道に周知していきたい」と話しています。

専門家“行政側からニーズのくみ取りを”

災害ボランティアに詳しい神戸大学の室崎益輝名誉教授は、能登半島地震の被害状況に対し、住民からのボランティアの依頼が少ない現状について、「被災者は声を上げることすらできない人がたくさんいるし、ボランティアに頼んでいいのか迷ってる人もすごくいる。ニーズが上がってくるのを待っていたらだめで、行政側からくみ取りに行くことが必要だ」としています。

そして、「困ったときはお互い様なので、被災した方もちゅうちょすることなくボランティアの支援を求めていかないといけない。ボランティアが地域に入れば、にぎやかさや活気につながっていくと思う。できるだけ多くの人が被災地に駆けつけて被災者の声を聞いてほしい」と話していました。

その上で、今後の課題について、「ボランティアの利用が進まないと生活再建ができず、仮設住宅や避難所で暮らし続けることになり、被災者自身の健康や暮らしにも影響が出てしまう。さらに、こうした状況が続くことで復興が遅れると、どんどん能登から外に出て行く人が多くなって、大幅な人口減少にもつながりかねない」と指摘しています。