円相場 一時156円台後半まで値下がり 34年ぶり円安水準更新

26日の東京外国為替市場では、日銀の金融政策決定会合の結果や、植田総裁の記者会見での発言を受けて、円相場は、一時、1ドル=156円台後半まで値下がりしました。その後、夕方には急激に2円近く円高方向に変動したあと、再び、1ドル=156円台に値下がりする荒い値動きの場面もありました。

東京外国為替市場では、日銀が金融政策決定会合で、今の金融政策の維持を決めたことが伝わると、円を売ってドルを買う動きが強まり、さらに、そのあとに行われた日銀の植田総裁の記者会見で、円安への対応などをめぐって踏み込んだ発言がないといった受け止めが広がると、円相場は、一時、1ドル=156円80銭台まで値下がりし、34年ぶりの円安水準を更新しました。

午後5時ごろには、一時、急激に円高方向に変動し、1ドル=154円台まで2円近く値上がりしたあと、再び、1ドル=156円台に値下がりする荒い値動きの場面もありました。

▽午後5時時点の円相場は、前日と比べて1円8銭円安ドル高の1ドル=156円70銭~71銭でした。

また、円は、ユーロに対しても売られやすい状況が続き、
▽午後5時時点の円相場は、前日と比べて1円30銭円安ユーロ高の1ユーロ=168円13銭~17銭と、2008年8月以来の円安ユーロ高の水準となりました。

▽ユーロは、ドルに対して1ユーロ=1.0729~30ドルでした。

市場関係者は「夕方には急に円高方向に進むなど、乱高下する場面もあり、政府、日銀による市場介入への警戒感が一段と強まっている」と話しています。

銀行マーケット・ストラテジスト「利上げ時間かかると判断」

東京 千代田区の三井住友信託銀行のディーリングルームでは、午後0時20分ごろに会合の結果が伝わると、ディーラーたちが、金融政策の内容の確認や客からの取引の対応にあたっていました。

為替市場の分析などを行う三井住友信託銀行の瀬良礼子マーケット・ストラテジストは植田総裁の記者会見での発言などを受けて、円安がさらに進んだことについて、「市場では足元で進む円安や物価高に対してなんらかの警戒感がもう少し示されるのではないかという期待感があった。ただそれに対して植田総裁は金融政策の判断にはその先の長期にわたる物価上昇につながるのか見極めたいという発言を繰り返したため、利上げの判断にはまだ時間がかかると市場が判断し、円安に反映された形になった」と話していました。

そのうえで、今後の利上げの見通しについては「3か月後の夏の決定会合に利上げを行う可能性は十分残っていると思う。実際の物価上昇率が上がるということではなく、将来の動きも含めて上がっていきそうだという判断ができれば、利上げをできる環境が整うと受け止めている」と話していました。

野村ホールディングス 北村CFO「短期的には行き過ぎた水準」

外国為替市場で円安の動きが一段と加速していることについて、野村ホールディングスの北村巧CFOは、決算発表の記者会見で、「短期的には行き過ぎた水準だと思うが、今後は日米の金融政策を通じて修正される方向に行くと思う。円安がどの程度、物価に跳ね返って個人の購買力に影響が出るのか注視する必要がある。日本経済がスローダウンすれば金融機関にとってマイナスだ」と述べました。

三菱電機社長「円安の状況見守るしかない」

外国為替市場で円安が進んでいることについて三菱電機の漆間啓社長は、26日の決算発表の会見で「輸出をすれば売り上げや利益に効いてくるが、海外からの部品の調達もかなり増えている。そういう意味では決して円安が非常にいいとは考えていない」と述べました。

その上で「会社としての為替レートの設定と比べると現実はどんどん円安に向かっている。対応策はわれわれができる話ではなく、円安の状況を見守るしかない」と述べました。

三菱電機は、昨年度1年間のグループ全体の売り上げのうち海外が占める割合が51%を占めています。

オリエンタルランド執行役員「インバウンドに期待」

外国為替市場で円安が進んでいることについて、東京ディズニーランドなどを運営する「オリエンタルランド」の霜田朝之執行役員は、26日の決算会見で、海外からの来園者の増加に期待を示しました。

会社によりますと、ことし3月までの1年間に海外から東京ディズニーランドや東京ディズニーシーを訪れた来園者の数は、およそ349万人と、全体の12.7%を占めて過去最高となりました。

コロナ禍からの回復に、円安の効果も重なったとしています。

霜田執行役員は記者会見で、円安によって輸入する食材や商品の原材料などの価格が上昇する影響はあると説明する一方で、「外国人の来園者はこれから注力していきたい集客戦略の一つで、円安はインバウンド需要の増加にプラスの効果を期待できる」と述べました。

また、チケットの価格を需要に応じて変動させる仕組みを導入していることを踏まえ、「外国人旅行者は平日にも来園するため、集客構造の平準化にもつながり、非常に期待している」と述べました。

NEC社長「国力が危険にさらされる状態」

外国為替市場で円安が進んでいることについてNECの森田隆之社長は、26日の決算発表の記者会見で、会社のグループ全体の売上げに占める海外の比率は2割程度にとどまることなどから業績に大きな影響はないという認識を示しました。

一方で森田社長は「この急激な変化、異常とも言える円安の中で言えばお客様および日本の国力そのものが危険にさらされる状態になるのではないかと危惧しています。早く緩やかに正常化に向かうことを期待する」と述べ、日本経済全体には悪影響を与えるという見方を示しました。

ANA社長「心地よい水準は1ドル125円くらい」

外国為替市場で円安が進んでいることについて、ANAホールディングスの芝田浩二社長は、26日の決算会見で「心地よい為替の水準は、ずっと、1ドル=125円くらいだと肌感覚で申し上げてきた。今の円安水準は、日本から海外に向かうお客様には不利で、海外での物価高もあって、心理的にネガティブなインパクトが大きいと思う」と述べました。