【26日詳細】地上作戦強行構えイスラエルにエジプト働きかけか

イスラエル軍は、多くの避難者が身を寄せるガザ地区南部ラファへの地上作戦を強行する構えを見せています。
こうした中、隣国エジプトの情報機関のトップらが26日にもイスラエルを訪れ、戦闘の休止や人質の解放に向けた交渉の再開について協議すると伝えられていて、事態の打開につながるか注目されています。

※中東情勢に関する日本時間4月26日の動きを随時更新してお伝えします。

イスラエル軍 ガザ地区ラファへの地上作戦強行の構え

イスラエル軍は26日もガザ地区への空爆を続けていて、ガザ地区の保健当局はこれまでに3万4305人が死亡したと発表しています。

イスラエル軍は、多くの避難者を含むおよそ120万人が身を寄せるガザ地区南部のラファへの地上作戦を強行する構えを見せています。

一方で、イスラエル国内では、いまなおハマス側にとらわれている人質の解放を優先すべきとの声が強まっているほか、同盟関係にあるアメリカなど各国からも地上作戦を思いとどまるよう求める動きが相次いでいます。

エジプト情報機関がイスラエルへ 戦闘休止交渉の再開協議か

アラブ系のメディアなどは、イスラエルの隣国エジプトの情報機関のトップらが26日にもイスラエルを訪れ、戦闘の休止や人質の解放に向けた交渉の再開について協議すると伝えています。

エジプトは、これまでもカタールとともにイスラエルとハマスの間の交渉を仲介してきましたが、双方の妥協点を見い出すことができず、交渉は行き詰まっていました。

イスラエルが軍事的な圧力を強める中で、交渉再開に向けた糸口を見つけることができるかが焦点となっています。

人口約220万のガザ地区 深刻な人道状況続く

人口およそ220万とされるガザ地区は、イスラエルとハマスによる戦闘の影響で、深刻な人道状況が続いています。

アメリカ政府高官は25日、このうち北部について「人口の半数以上がひどい食料不足に陥っている。子どもの30%近くは深刻な栄養失調の兆候が見られる」と説明しています。

米国防総省 仮設ふ頭建設開始を発表 海から支援物資搬入へ

アメリカ国防総省のライダー報道官は、25日の記者会見で「アメリカ軍の艦艇が仮設のふ頭の建設を始めた」と述べ、ガザ地区への食料などの支援物資の搬入を増やすため、海からの搬入に使う仮設のふ頭の建設を始めたと明らかにしました。

また、アメリカ軍の幹部は記者団に対し「われわれは5月初めに海からガザ地区への物資の輸送を始める予定だ」と述べ、5月からふ頭の運用を始め、段階的に支援物資の搬入量を増やすとしています。

アメリカ軍はこれまで、ふ頭の運用が完全に始まれば、一日に200万食以上の食料をガザ地区に提供できるようになると説明しています。

アメリカでは、イスラエル軍によるガザ地区への攻撃をめぐって各地で学生の抗議デモが続く中、イスラエルを支援するバイデン政権に対する反発の声も出ています。

バイデン政権としては、仮設のふ頭の建設開始を発表することで、人道状況の改善に取り組む姿勢をアピールするねらいがあるとみられます。

イスラエルメディア “作戦開始のタイミングは政府の決断次第”

ベルギー政府は25日、前日に行われたガザ地区南部のラファへのイスラエル軍の空爆で、ベルギーの援助機関のスタッフとその7歳の息子が死亡したと明らかにしました。

ラファには多くの避難者を含むおよそ120万人が身を寄せていますが、イスラエル軍はイスラム組織ハマスの壊滅に向けラファへの地上作戦を強行する構えを見せています。

イスラエルの有力メディア、ハーレツは25日、イスラエル軍がガザ地区北部や中部に展開していた部隊を南部に移動させるなど、地上作戦に向けた準備を完了したと政府に報告し、作戦開始のタイミングは政府の決断次第となっていると伝えています。

その上で、地上部隊による侵攻は住民を避難させたあとに始まるとしていて、ラファの住民を別の場所に避難させるには数週間かかるとの見方を示しています。

ラファへの地上作戦に対しては、アメリカが繰り返し懸念を伝えているほか、ラファと境界を接するエジプトも「破滅的な事態となる」と警告していて、イスラエル政府がどのような対応を示すかが焦点となっています。

エジプト側 イスラエル側に“平和条約危うくすると警告” 報道

イスラエル軍がガザ地区南部のラファへの地上作戦を強行する構えを見せる中、アメリカのニュースサイト、アクシオスは、イスラエル軍や情報機関の高官らが、ラファと境界を接するエジプトの情報機関の高官らと、24日にカイロで会談を行ったと伝えました。

それによりますと、エジプト側は、ラファへの地上作戦が強行されれば、避難民の流入で治安が悪化するおそれがあると懸念しているということで、会談では、イスラエルとの関係断絶につながる可能性があり、両国の平和条約を危うくすると警告したということです。

これに対してイスラエル側は、軍事・外交面でのエジプトとの緊密な連携は、ラファの地上作戦での基本的な条件だと伝えたということです。

また、アクシオスによりますと、イスラエル軍はアメリカ国防総省に対し、ラファへの地上作戦について、全域におよぶ全面侵攻ではなく、地区ごとに分け段階的に進めていく計画だと伝えたということです。

米など18か国首脳 ハマスに“人質即時解放”求める共同声明

アメリカなど18か国の首脳は25日、イスラム組織ハマスに対して、ガザ地区で拘束している人質を即時に解放するよう求める共同声明を発表しました。

声明はアメリカのほか、ドイツやタイ、それにアルゼンチンなど、ハマスに自国民が拘束されているとする国々がまとめました。

声明では、人質たちは200日以上にわたってガザ地区で拘束されているとして、国際的な懸念事項だとしています。

その上で「われわれは自国民を連れ戻すための仲介努力を強く支持する」とした上で、人質の解放に向けた交渉で提示されている案は、ガザ地区での即時かつ長期的な停戦をもたらし、人道支援の増加を促すと強調しています。

イラン革命防衛隊 イスラエル攻撃で使用の武器をNHKに公開

イランの軍事精鋭部隊、革命防衛隊は、NHKの取材に対して、4月にイスラエルへの大規模な攻撃で使ったとするミサイルや無人機を公開し、軍事力を誇示するとともに、イスラエルが今後イランへの攻撃を行わないようけん制しました。

イランは、シリアにある大使館が攻撃されたことへの報復として、4月13日から14日にかけてイスラエルへの大規模攻撃に踏み切り、その後、19日にはイラン中部で爆発があり、イスラエルの対抗措置だったと伝えられています。

イスラエルへの攻撃を行ったイランの革命防衛隊は25日、首都テヘラン郊外にある国産のミサイルや無人機などの兵器の展示施設をNHKに公開しました。

施設のトップで、みずからも長年ミサイル開発に携わってきた、アリ・バラリ准将は、展示されている兵器のうち、射程1700キロの弾道ミサイル「エマド」と巡航ミサイルの「パベ」、それに2000キロ以上の飛行が可能だとされる自爆型無人機「シャヘド136」などを、今回の攻撃に使ったと説明しました。

一方、事態のエスカレートを防ぐため、最新鋭のミサイルは投入せず、限定的な作戦にとどめたとした上で、「攻撃されないための抑止力を持った戦略を立て、それは達成された。仮に全面戦争となれば、イスラエルは想像もできない全く異なる光景を見ることになるだろう」と述べ、軍事力を誇示しました。

そのうえで「彼らがもう過ちを犯さず、われわれが一発のミサイルも撃たずに済むことが理想だ」と述べ、イスラエルが今後イランへの攻撃を行わないようけん制しました。

革命防衛隊の准将「ミサイル産業の初期には北朝鮮の協力」

革命防衛隊のアリ・バラリ准将は、みずからも、イラン・イラク戦争が続いていた1984年に、同盟関係にあるシリアに派遣されてミサイル技術を学んで以来、イランのミサイル開発に携わってきたといいます。

イランがミサイル開発に力を入れるようになった経緯について、バラリ准将は、当時イランはフセイン政権下のイラクによる旧ソビエト製のスカッドミサイルを使った激しい攻撃にさらされていたとしたうえで、「フセインが攻撃に使ったミサイルに応戦できず、われわれもその必要性を強く感じた」と振り返りました。

そして、スカッドミサイルを北アフリカのリビア経由で30発輸入し、そのうち2発を研究に利用するとともに、北朝鮮の協力を得て技術開発を進めたと説明したうえで、「ミサイル産業の初期の段階では北朝鮮の協力を得たが、今は彼らを助けることができるほどの成熟したレベルにわれわれは達した」と主張しました。

一方、展示施設には、イランが国内などで回収したアメリカ製やイスラエル製の無人機だとするものも並べられ、バラリ准将は「こうした無人機から知見を得て研究し、部品を1つ1つ作り、今や無人機の分野では地域ですぐれた地位を築いている」と述べ、イランの武器の開発能力の高さを誇示しました。

“今回の作戦 低いレベルのミサイルだけで行ったのが重要”

今回、イスラエルへの攻撃に使われたとされる兵器のうち、イランがロシアに供与していると欧米から指摘されている、自爆型無人機「シャヘド136」の性能について、バラリ准将は「ルートは事前に設定され、GPSなどを使ってそのルートを修正しながら標的に到達することができる。費用をかければ捕捉されないステルス性能を持たせることもできるが、今のところわれわれは低コストで運用することを重視している」と説明しました。

その一方で「今回の作戦で重要なのは、利用可能な兵器の中でも最新鋭のミサイルや極超音速ミサイルは使わず、低いレベルのミサイルだけで行ったということだ。より高度な力は温存しており、イスラエルが過ちを犯したときに使われるだろう」と強調しました。

このうち、施設にも展示していた射程2000キロの弾道ミサイル「ホラムシャハル」について、バラリ准将は「3.5トンの弾頭を備えた最も強力なミサイルの1つで、イスラエルを攻撃するためだけに開発されたものだ」と主張しました。