ハラスメントで辞職へ 町長2人がそれぞれ会見で謝罪

岐阜県池田町の岡崎和夫町長(76)は、第三者委員会の調査で女性職員など15人に対するセクハラがあったと認定されたことを受けて、25日午前に辞職願を提出しました。
愛知県東郷町の井俣憲治町長(57)は、町の職員に複数のハラスメント行為を行っていたと第三者委員会から認定され、24日に辞職願を提出しています。

2人の町長は25日、それぞれ会見を開いて職員や町民に謝罪しました。

これまでの経緯や認定されたハラスメント行為、2人の町長が会見で語った内容をまとめました。

<池田町 岡崎和夫町長>

これまでの経緯

2023年7月、池田町の職員と元職員が町長からセクハラ行為を受けたと会見で訴えました。

会見の翌日、池田町は第三者委員会を設置して調査を進めることを決定。

10月には弁護士3人が委員に就任して調査が始まりました。

そして今月24日、第三者委員会は調査報告書をまとめて町に提出しました。

調査報告書で認定されたセクハラ行為

調査報告書ではアンケートや聞き取り調査などの結果、職員と元職員の女性15人に対するセクハラがあったと認定しています。

特に深刻な被害として1人の女性に対し、服の上から腕や太ももなどを触るといった行為があり、去年5月に被害者と示談していたということです。

ほかの女性にもキスしようとしたり尻や胸を触ったりする行為があったとしています。

セクハラがあった場所は町長室や宿直室がほとんどで、被害者は入庁まもない若い女性職員が多かったということです。

一方、岡崎町長は第三者委員会の聞き取りに対し、告発した女性1人に激励の意味で握手をしたり、肩をたたいたりしたかもしれないがほかの女性へのセクハラや示談したことは否定したということです。

報告書では町長のセクハラに対する認識に問題があり、反省や改善の態度が見られず、町の懲戒処分の指針では免職が相当と考えられる事案だとして、「町長は辞職相当である」としています。

また、セクハラは10年以上続いていたということで、長期化した背景については岡崎町長が町職員としておよそ37年勤務し、町長も6期目で20年以上務めていることから影響力が強く、職員が逆らうことは困難だったと指摘しています。

岡崎町長「ひとりよがりの裸の王様だった」

第三者委員会の調査で女性職員など15人に対するセクハラがあったと認定されたことを受けて、池田町の岡崎和夫町長は25日午前、町議会議長に辞職願を提出し、受理されました。

その後、岡崎町長は記者会見し「関係職員には大変申し訳なく心から謝罪したい。池田町の名前を傷つけてしまい町民にも申し訳ない。ひとりよがりの裸の王様だった」などと述べました。

また、報告書で15人に対するセクハラがあったと認定されたことについては「はっきりと覚えているわけではないが、相手が言っているなら認めざるを得ない」と述べました。

一方で、このうち1人の女性に対し、服の上から腕や太ももなどを触るといった行為があり、被害者と示談したとされたことについては、腕を触ったことは覚えているもののそれ以外は記憶にないとし、示談したかについても「答えられない」と述べました。

池田町では26日、臨時の町議会が開かれ辞職願について同意されれば町長の辞職が決まります。

<東郷町 井俣憲治町長>

これまでの経緯

2023年10月に一部の職員が全職員にメールで非公式のアンケート調査を行い、町長からパワーハラスメントを受けたなどの回答が複数寄せられました。

その後、12月に第三者委員会が発足して弁護士3人による調査が始まります。

第三者委員会は今月22日、井俣町長が、1期目から継続的に複数の職員にパワハラやセクハラなどさまざまなハラスメントを行ってきたとする報告書を町に提出しました。

調査報告書で認定されたハラスメント行為

第三者委員会のメンバーは23日に町役場で記者会見を行い、弁護士の堀龍之委員長は「長い期間にわたり、『早く降格してくれ』など、明らかに違法と言えるものを含め、ハラスメント行為が繰り返されてきたことに非常に驚いた」と述べました。

また、複数のハラスメントが継続されてきた背景について「町役場が小さいというのが背景にある。同じ高校を卒業するなど、つながりの濃い関係だからこそ職員が声をあげにくかったという意味で悪質性が高い」と指摘しました。

その上で、職員が苦情を申し立てても副町長のところで止まってしまい、組織内部で改善策につながらなかったとして今後、外部の専門家による相談窓口など、第三者が関与した再発防止のための制度を検討する必要があるという見解を示しました。

井俣町長「自身が無知であった」

井俣町長は、25日、町議会の全員協議会に出席し「ハラスメント事案の対象となった職員の皆さんに心からおわび申し上げたい」と陳謝した上で、5月2日付けで辞職する考えを示しました。

続いて、井俣町長は記者会見し「去年11月の報道を受けて以来、反省をくり返し、ハラスメントに関する勉強をしたが、それまでの自身が無知であったことを改めて恥じる期間となった」と述べました。

その上で、辞職の理由について「町議会の先生と話す中で、町の未来と町民の幸せのため職員が静かに仕事ができる環境をつくっていくことの重要性で一致し、同じ方向に進もうという中で、辞職を決断した」と説明しました。

一方、第三者委員会の報告書について「すべてを理解、納得しているわけではなく、記憶がないところもあるが、それも含めて、自分の今後の行動や言動の指針になるし、役場としても大変重要なテキストになると思っている」と述べました。

また、記者団から、次の町長選挙に立候補する考えがあるか質問されたのに対し「自分のことを考えられる状況ではないので考えていなかったが、きょうの段階で、すべての可能性を否定するものではない」と述べ、明言を避けました。

東郷町によりますと、町議会議長は25日、町の選挙管理委員会に対し井俣町長の辞職を通知したということで、町長選挙は26日から50日以内に実施されることになります。

議長「反省しているようには見えない」

東郷町議会の石橋直季議長は記者団に対し「ハラスメントが起きた原因をただ自分の勉強が足りていないという話で終わらせるのは、職員や被害を受けた方がどう思うかあまりにも想像ができていないと思う。反省しているようには正直、見えない」と述べました。

その上で「この件をきっかけに、議会ももちろんハラスメント防止に取り組んでいくし、議会から行政に働きかけて、行政と連携しながら、ハラスメントをしてしまうことがないような環境づくりを引き続きやっていきたい」と述べました。

専門家に聞く ハラスメントの原因と対策

地方自治に詳しい、名城大学の昇秀樹教授は今回の問題の原因について「町長が人事権を握っている中で職員たちは町長にきついことを言うと左遷されてしまうのではないかと感じてしまい、結果的に『裸の王様』状態で、誰も止められない状況になる」と指摘しています。

その上で「人口規模が小さな自治体は、おのずと役場内で職員と首長との接触の機会が増え、どうしてもハラスメントの問題が起こりやすくなってしまう。町長自身がハラスメント防止の研修に参加する機会がなく、何がハラスメントにあたるかを知らないことも問題だ」としています。

求められる対策として、昇教授は、問題があった自治体だけでなく、ほかの自治体でも、第三者機関を設置してハラスメントの調査や認定にあたることや、ハラスメント防止条例を制定することが重要だとしています。

そして「政治家は住民以上に世の中の流れや時代の変化にセンシティブであることが求められている。自分が若いころにこうやってきたということが通用する世の中ではないので、きちんとハラスメントにも対応していく姿勢を示していかなければならない」と指摘しています。