円相場 155円台後半まで値下がり 約34年ぶりの円安水準更新

25日の東京外国為替市場は、円安が一段と加速し、円相場は、1ドル=155円台後半まで値下がりして、およそ34年ぶりの円安ドル高水準となりました。

25日の東京外国為替市場ではアメリカ経済の堅調さや根強いインフレを受けて、アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会が早期に利下げするとの観測が後退したことを背景に、円を売ってドルを買う動きが一段と強まりました。

円相場は、ドルに対してじりじりと値を下げ、1ドル=155円台後半まで値下がりして、1990年6月以来、およそ34年ぶりの円安・ドル高水準を更新しました。

午後5時時点の円相場は24日と比べて73銭、円安ドル高の1ドル=155円62銭から64銭でした。

また、円はユーロに対しても売られやすい状況が続き、一時は、1ユーロ=167円に迫って、2008年8月以来の円安ユーロ高水準となりました。

午後5時時点では24日と比べて1円29銭、円安ユーロ高の1ユーロ=166円83銭から87銭でした。

ユーロはドルに対して、1ユーロ=1.0720から21ドルでした。

市場関係者は「日本時間の今夜発表されるアメリカのことし1月から3月までのGDP=国内総生産の結果が市場の予想を上回れば、アメリカの利下げが遅れるという見方が強まり、さらに円安が進む可能性もある。1ドル=155円を超え、政府・日銀による市場介入への警戒感が一段と強まる中で、日銀が、あすまで開く金融政策決定会合の内容やその後の植田総裁の記者会見でどのようなメッセージを出すかが注目されている」と話しています。

鈴木財務相「適切な対応をするという思い変わらない」

鈴木財務大臣は、1ドル=155円台まで円安が進んでいることについて25日午前に開かれた参議院の財政金融委員会で「私どもとしては市場をしっかりと今、注目しているところだ。それをもとに適切な対応をするという思いはいささかも変わらない。今の局面で多くを話すことができないことは何とぞ、ご理解を頂きたい」と述べました。

林官房長官「具体的な見解は控える」

林官房長官は、記者会見で「足元の為替相場の動向や為替介入について具体的な見解を申し上げることは、市場に不測の影響を及ぼすおそれがあることから差し控える」と述べました。

その上で「為替相場はファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが重要で、過度な変動は望ましくないと認識しており、政府としては、為替市場の動向をしっかりと注視しつつ、万全の対応を行っていきたい」と述べました。

大和証券 吉田CFO「円安 構造的な要因もある」

外国為替市場で円安が一段と加速していることについて、証券大手、大和証券グループ本社の吉田光太郎CFOは25日の決算会見で「足元の円安は、地政学リスクやFRBの利下げ期待の後ずれなどから日米の金利差が縮小しにくい状況を踏まえた動きだが、日本が貿易で稼ぎにくくなったことによる構造的な要因もある」と指摘しています。

そのうえで「円安にはプラスとマイナスの両面があるが、急激な円安はコストプッシュ型のインフレを招く。賃上げの動きや堅調な企業業績は今年度も続くとみているが、円安で消費が下押しされる可能性もあり、行き過ぎた動きには警戒すべきだ」と述べました。

富士通 時田社長「円安 好ましいとは思っていない」

円安が進んでいることについて、富士通の時田隆仁社長は25日の決算発表の記者会見で、自社の業績への影響は大きくはないという認識を示しました。

会社のグループ全体の売り上げに占める海外の比率は4割未満にとどまるほか、ITシステムが主力事業となり、海外からの原材料の調達も限られているとしています。

そのうえで時田社長は「現在の非常に急激というか、非常に大きな為替変動、円安については、企業経営の立場から好ましいとは思っていない。政府、日銀、そして各国とのコミュニケーションにおいて、過度なこのような為替変動が抑制されることを期待している」と述べました。

今後の焦点はアメリカと日本の金融政策の行方

外国為替市場では、日米の金利差を意識した動きが続いているだけに、今後、焦点となるのが、アメリカと日本の金融政策の行方です。

アメリカでは、日本時間の25日夜、ことし1月から3月のGDPの発表を控えているほか、26日の夜には、中央銀行にあたるFRBがインフレの強さを見るうえで参考にしているPCE=個人消費支出の物価指数が発表されます。

こうした統計の結果が市場の予想を上回れば、アメリカの利下げが遅れるという見方が強まって、さらに円安が進む可能性が指摘されています。

さらに来月2日には、FRBの金融政策を決める会合の結果が明らかになりますが、今後の利下げの時期などについて言及があるのかが、注目されます。

一方、日本では、日銀が、25日から2日間の日程で金融政策を決める会合を開いています。

日銀は、先月、17年ぶりの利上げに踏み切ったばかりで、市場では「今回の会合で政策の変更はない」という見方も出ていますが、植田総裁が26日の会見で、今後、利上げを判断していく道筋などについて、どのようなメッセージを発するのかが、焦点となっています。

また、円相場をめぐっては、政府・日銀の市場介入への警戒感も一段と高まっています。

多くの投資家が節目として意識していた1ドル=155円を突破したことで、市場関係者の間では、「いつ介入があってもおかしくない」という声も出ています。

一方で、根本の原因がアメリカのインフレと経済の強さにあるだけに、仮に介入したとしても円安の流れを大きく変えるのは難しいのではないか、という見方も出ていて、鈴木財務大臣をはじめ、政府関係者の為替に対する発言にも注目度が高まっています。