【解説】イスラエル軍 情報部門トップの辞任 背景と影響は

去年10月のハマスによる越境攻撃を許した責任を取って、イスラエル軍の情報部門のトップが辞任することになりました。
その背景と影響について、望月麻美キャスターの解説です。

(「キャッチ!世界のトップニュース」で4月23日に放送した内容です)

イスラエルとハマスの戦闘が始まってから半年以上。

イスラエルの有力メディア ハーレツによりますと、戦闘開始以降、イスラエル軍の高官の辞任は、ハリバ諜報局長が初めてだということです。

イスラエル国内では当初から、軍は、ハマスの動きを監視塔などから常に警戒していたはずなのに、なぜ攻撃を防げなかったのかと批判する声が上がっていました。

そして攻撃のあと、ニューヨーク・タイムズなどアメリカのメディアは、イスラエル軍はおよそ1年前から攻撃の計画に関する情報をつかんでいたにもかかわらず、ハマスにそのような大規模な奇襲攻撃を実行する能力はないと分析していたと伝えていました。

イスラエルはユダヤ人の迫害やホロコーストの惨禍を経て建国され、国民全員を徴兵の対象とする国です。

そのイスラエルがハマスに越境攻撃を許すのはまさに大失態で、国民の軍に対する不満や不信感が大きく高まっていたのです。

ハリバ局長はハマスによる攻撃後、まもなく、軍が攻撃を防げなかった責任は自分にあるとしていました。

そして、提出した辞表の中で「私は戦争の恐ろしい責任を永遠に抱えていく」とつづっています。

ただ、ハリバ諜報局長1人の辞任で事態が収束するかというと、そうとは言えなさそうです。

人質の家族などからはそのほかの政権や軍の幹部の辞任を求める声も上がっているからです。

イスラエルのメディア ハーレツは、「ハリバ諜報局長の辞任は砂時計をひっくり返した」との見出しで、軍や諜報機関のほかの幹部が辞任するまでの残り時間が減り、今後辞任が相次ぐ可能性を伝えています。

そしてやはり注目されるのは、ネタニヤフ首相の責任を問う声です。

ネタニヤフ首相は自身の責任を問う声については、戦闘終結後に答えを出すとして言及を避けてきました。

一方、戦闘が長期化し人質を半年以上も取り戻せない状況に国民の不満は募り、イスラエル各地ではネタニヤフ首相の辞任などを求めて大規模なデモが行われるようになっています。

ハーレツは、ハリバ諜報局長が辞任したことで、ネタニヤフ首相の側近たちは、首相の辞任を求める声をかわすために、ハリバ局長の代わりとなる標的を見つけるだろうと伝えています。

責任の追及が続くイスラエル。

一方、戦闘休止の協議は進まず、ガザ地区の人たちはきょうも戦闘におびえる日々を過ごしています。