温室効果ガス排出量などの開示求める国の制度 本格的に始まる

企業などに温室効果ガスの排出量や、化石燃料に依存しない電力の使用割合の開示を求める国の制度が、今年度から本格的に始まりました。情報の“見える化”により脱炭素や省エネを企業に促すとともに、先進的な企業への投資を呼び込むねらいです。

去年4月に改正された「省エネ法」では、エネルギーを多く使用する大規模な企業などおよそ1万2000の事業者を対象に、温室効果ガスの排出量や、化石燃料に依存しない電力の使用割合など10項目について、毎年国に報告するよう求めています。

さらに今年度からは報告内容の開示を求める制度も本格的に始まり、経済産業省では、報告を行っている企業すべてに開示を働きかけることにしています。

開示するかどうかは企業の判断となりますが、これまでに356の事業者が開示を決めています。

また、経済産業省は、省エネ関連の補助金の支給にあたって、情報の開示を条件とすることにしています。

企業ごとの情報はことしの秋ごろに開示される見通しで、経済産業省では情報の“見える化”によって、脱炭素や省エネを企業に促すとともに、先進的な企業への環境関連の投資を呼び込みたいとしています。

情報を開示した鉄鋼メーカーは

国の制度に基づき、情報の開示を始めた愛知県の鉄鋼メーカーでは、化石燃料に依存しない電力を使用する割合を高めたり、製造工程の一部の燃料を水素に転換したりするなど、脱炭素に向けた対応を加速させています。

愛知県に本社がある鉄鋼メーカーの「愛知製鋼」は、制度の試験運用が始まった昨年度から、脱炭素や省エネの取り組みに関する国への報告内容を開示しています。

この企業では、2030年度に使用する電力の60%を化石燃料に依存しない再生可能エネルギーなどへと転換する目標を定めていて、毎年度の実績を公表することにしています。

太陽光や風力など再生可能エネルギーで作られた電気を使ったと見なされる「非化石証書」という証明書を購入し、国内7つの工場のうち、5か所の使用電力を化石燃料に依存しない形としました。

さらに鋼材を板状に薄くのばす圧延を行ったあとの熱処理の工程で使う燃料を、都市ガスから二酸化炭素を排出しない水素にできないか検討していて、地元のガス会社と共同で実証実験を行う予定です。

鉄鋼業界は、国内全体の二酸化炭素の排出量でおよそ1割を占めていますが、会社ではこうした取り組みの公表を通じて環境意識の高い投資家を呼び込むだけでなく、脱炭素などの取り組みでほかのメーカーとの連携にもつなげたいとしています。

愛知製鋼サステナビリティ推進室の乗木尚隆室長は、「業界全体の脱炭素社会の取り組みを後押しする一助になればと思っています」と話しています。