ロシア モスクワ郊外のテロ事件から1か月 治安対策も課題に

ロシアの首都モスクワ郊外で140人以上の市民が死亡したテロ事件から22日で1か月となります。この事件では、中央アジアの出身者が実行犯として起訴され、プーチン政権は、こうした国々からの不法移民の大規模な取締りを行うなど、政権基盤を揺るがしかねないテロや治安への対策に神経をとがらせています。

ロシアの首都モスクワ郊外のコンサートホールで先月22日に起きたテロ事件では、140人以上の市民が死亡し、ロシアで過去20年で起きたテロ事件で最悪の被害となりました。

過激派組織IS=イスラミックステートの戦闘員による犯行とみられ、ロシアの治安当局は、実行犯として中央アジアのタジキスタン国籍の4人を起訴しました。

ロシアでは、テロへの脅威を感じる人が増えているという調査結果も出ていて、NHKがモスクワの中心部で市民に話を聞いたところ「警察は常に目を光らせてほしい」と訴える女性など、中央アジアからの移民への対策を強化すべきだという声が相次ぎました。

内務省は、今月10日、モスクワにある建設現場などあわせて1万か所以上を対象に不法移民の取締りを行ったと発表しました。

先月の大統領選挙で圧勝したプーチン大統領にとって、来月7日から通算5期目となる新たな任期が始まりますが、政権基盤を揺るがしかねないテロや治安への対策に神経をとがらせています。

市民からは移民への取締り強化すべきとの声

ロシアの首都モスクワ郊外で起きたテロ事件の実行犯が中央アジア出身のイスラム過激派とされることから、モスクワの市民からは、当局は移民への取締りを強化すべきだという声が聞かれました。

男性は「国境警備隊は警備を続けているが、それでもイスラム過激派との戦いは起きているしこれからも続くのだろう」と述べ、テロの脅威が続いていると懸念を示しました。

そして治安当局の対応は十分ではなかったとした上で「少なくともウクライナへの特別軍事作戦が始まってからは移民は退去させるべきだった」と述べ、移民対策を強化すべきだと訴えました。

また、テロが起きた当時、現場に友人がいたという男性は「友人は幸いにも生き延びたが負傷した。移民政策のルールはより厳しくするべきだ」と話していたほか、女性は「警察は秩序を保ち何かが起きた時だけでなく常に目を光らせてほしい」と話すなど、移民への取締りを強化すべきだと訴えました。

一方、別の女性は「なぜ普通の人々がこんな虐殺に巻き込まれたのか本当に理解できない」と涙ぐみながら話す一方、当局が移民対策を強化することについては「ロシアは異なる多くの民族がいるので取締りを厳しくすることは危険で恐ろしいことだと思う。われわれは多民族国家でありいつも良好な関係を築いてきた」と述べ、国内の民族間であつれきが生じかねないと懸念を示していました。