イラクでも爆発 イランの爆発はイスラエル対抗か【20日詳細】

イランとイスラエルの攻撃の応酬が続く中、両国の間に位置するイラクの民兵組織の基地で、爆発がありました。爆発の原因は明らかになっていませんが、この民兵組織がイランの支援を受けていることから、中東情勢がさらに不安定になることが懸念されています。

※中東情勢に関する日本時間4月20日の動きを随時更新してお伝えします。

イラクのシーア派民兵基地で爆発

イランが支援するイラクのイスラム教シーア派の民兵組織「人民動員隊」は20日、首都バグダッドからおよそ50キロ南に位置する基地で爆発が起きたとSNSで発表しました。

ロイター通信は、病院関係者の話として、1人が死亡、6人がけがをしたと伝えています。

爆発の原因は明らかになっていませんが、イランのメディアは、イラク当局者の話として、ミサイル攻撃だった可能性があると伝えています。

イラクのテレビ 爆発現場とされる映像伝える

イラクのテレビは、爆発があった首都バグダッドの南方の基地で撮影したとする映像を伝えました。

映像では、地面に金属片が散らばり、何かが燃えている様子が写っているほか、地面に大きなクレーターができ、近くの建物が大きく損壊しているのが確認できます。また映像には、クレーターなどが大きな爆発によるものだと話す音声も入っています。

「人民動員隊」とは

「人民動員隊」は2014年、イラク国内で過激派組織IS=イスラミック・ステートが台頭する中、ISに対抗するためにイラクの正規軍とは別に、イスラム教シーア派の民兵組織を中心に編成されました。

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」の報告は、「人民動員隊」の指揮官のほとんどがイランの支援を受けている民兵組織の幹部だと指摘していて、イランの強い影響下にあるとみられます。

2020年アメリカ軍がイラクの首都バグダッドへの攻撃で、イランの精鋭部隊「革命防衛隊」のソレイマニ司令官を殺害した際には、当時の「人民動員隊」の副代表も殺害されました。

NASA観測データに通常ではみられない温度の熱源

NASA=アメリカ航空宇宙局の人工衛星が日本時間の20日午前7時すぎに観測した地上の熱源のデータによりますと、イラクの首都バグダッドからおよそ50キロ南の地点で通常ではみられない温度の熱源が観測されました。周囲の状況から、熱源が観測されたのは爆発が起きたとされる基地付近とみられます。

アメリカ中央軍「イラクで空爆行っていない」

今回の爆発についてアメリカ中央軍は「アメリカがイラクで空爆を行ったとする情報が出ているのは承知しているが、真実ではない。きょうアメリカはイラクで空爆を行っていない」と発表しています。

また、アメリカのCNNテレビはイスラエル当局者がイスラエルはこの爆発に関与していないと述べたと伝えました。

イランでの爆発 イスラエルが対抗措置か

イランの複数のメディアは、19日、中部のイスファハン州にある空軍基地の近くで爆発があり、複数の小型無人機が撃墜されたと伝えました。

これについてイスラエルは何も発表していませんが、アメリカの複数のメディアはアメリカやイスラエルの当局者の話としてイスラエルによる攻撃だと伝えています。

このうちABCテレビはアメリカ政府高官の話として、イスラエルがイランの大規模攻撃に対する対抗措置として複数のミサイルで攻撃したと報じたほか、ワシントン・ポストはイスラエル当局者の話として「イスラエルにはイラン国内を攻撃する能力があることを伝える意図があった」としています。

また、イタリアで開かれていたG7=主要7か国の外相会合のあと、議長国イタリアのタヤーニ外相は「アメリカは直前に知らされていた」と述べ、イスラエルがアメリカ側に直前に通告していたことを明らかにしました。

一方、イランのアブドラヒアン外相は「撃墜された無人機はいかなる被害ももたらさなかった」とした上で、「もしイスラエルがイランの国益に対してまた行動を起こすなら、イランは直ちに断固とした対応をとる」とイスラエルをけん制し、予断を許さない状況が続いています。

米ホワイトハウス報道官 “イランの爆発 コメントはない”

アメリカ・ホワイトハウスのジャンピエール報道官は19日、記者会見で、アメリカの複数のメディアがイラン中部であった爆発はイスラエルによる攻撃だと伝えていることについて「中東からの報道に多くの関心が集まっていることはわかっているが、現時点でコメントはない」と述べるにとどめました。

その上で「一般的なことを言えばわれわれは当初から紛争がエスカレートするのを望んでいないと明確にしてきた」と述べました。

ジャンピエール報道官は会見中、イスラエルの対抗措置に関連する質問を記者団から繰り返し受けましたが、一貫して具体的な発言を避け、中東地域での緊張の高まりにつながらないよう慎重な対応に徹したとみられます。

米国防長官とイスラエル国防相が電話会談

一方、アメリカ国防総省のライダー報道官は、19日オースティン国防長官とイスラエルのガラント国防相が電話で会談したと発表しました。

声明でライダー報道官は会談で両者が「地域の安定を維持するための取り組みについて話し合った」としていますが、アメリカの複数のメディアがイスラエルによる攻撃だと伝えているイラン国内での爆発について協議したかどうかは明らかにしていません。

両者はまたガザ地区をめぐる情勢や、ガザの民間人への人道支援を加速させるための方策についても話し合ったということです。