1型糖尿病患者の障害年金支給認める 国が逆転敗訴 大阪高裁

免疫の異常などで血糖値を下げるインシュリンを体内で作れなくなる「1型糖尿病」の患者8人が障害基礎年金の支給を打ち切られたのは不当だと国を訴えた裁判で、2審の大阪高等裁判所は、1審とは逆に訴えを認め、支給を認めないのは違法だとして8人全員に年金を支給するよう国に命じました。

「1型糖尿病」は、免疫の異常などですい臓の細胞が壊れ、体内で血糖値を下げるインシュリンが作れなくなる病気です。

大阪や奈良などに住む患者8人は8年前、長年、受給していた障害基礎年金の支給を打ち切られ国を訴える裁判を起こして全員が勝訴しましたが、その後、国の審査で再び不支給となったことから2回目の訴えを起こしました。

3年前1審の大阪地方裁判所は訴えを退け、患者側が控訴していました。

19日の判決で大阪高等裁判所の本多久美子裁判長は、「この病気は根治が困難で、食事や仕事にも常に配慮を必要とするなど、日常生活に大きな支障がある。原告に支給を停止する理由があるとはいえず、支給を認めない国の決定は違法だ」と指摘しました。

そのうえで、「原告ひとりひとりの生活の様子を総合的に評価すると、『日常生活が著しい制限を受ける』と認められ、年金の支給対象である障害等級の2級にあたる」と述べ、1審とは逆に訴えを認め、不支給の決定を取り消し、8人全員に年金を支給するよう国に命じました。

厚生労働省「判決内容を精査した上で対応」

判決について厚生労働省は、「今後、関係省庁において判決内容を精査した上で対応していきたい」とコメントしています。

原告「やっと認めてくれてうれしい」

判決のあと、原告の1人の滝谷香さんは「やっと私たちの病気を認めてくれてうれしく思います。障害がある人の中には声を上げることができない人もいます。障害があるすべての人に目を向けてもらいたい」と話していました。

弁護団長の川下清弁護士は「原告全員の障害の重さ、日常生活の苦しさを真摯に受け止めてくれた結果だ」と話していました。