愛知リコール署名偽造 当時の事務局長に有罪判決 名古屋地裁

愛知県知事のリコール・解職請求をめぐり、アルバイトを使って署名を偽造したとして地方自治法違反の罪に問われた、リコール活動団体の事務局長だった被告に対し、名古屋地方裁判所は「地方自治の運営そのものを揺るがしかねない悪質な犯行を首謀者として主導した」として執行猶予のついた懲役2年の有罪判決を言い渡しました。

愛知県の大村知事のリコールを求める県民の署名が偽造された事件では署名活動を行った団体の事務局長だった田中孝博被告(62)が、2020年、佐賀市内でアルバイトを使って署名を偽造したとして、地方自治法違反の罪に問われました。

これまでの裁判で、検察が懲役2年を求刑したのに対し、被告の弁護士は、「うそのリコールを成立させようとはしていない」などと無罪を主張していました。

「地方自治の運営 揺るがしかねない悪質な犯行」

19日の判決で、名古屋地方裁判所の大村陽一裁判長は、「被告は名簿業者から名簿を購入し、必要な数の署名を偽造するよう共犯者に依頼していた。また、犯行が露見しにくいように遠方の施設を確保したうえでアルバイトを募るなど、組織性、計画性が認められ、地方自治の運営そのものを揺るがしかねない悪質な犯行だ」などと指摘しました。

そのうえで、「首謀者として犯行を主導していただけではなく、自身の政界進出への足場をつくろうなどとする動機も誠に利己的で厳しい非難に値する。結果的に解職請求に結びつかなかったことなどを踏まえても刑事責任は軽視できない」として懲役2年・執行猶予4年を言い渡しました。

河村市長「偽造知らなかった 真面目に活動した人に申し訳ない」

署名活動を支援していた名古屋市の河村市長は報道陣に対し「私自身は偽造について知らなかったが、真面目に署名活動をやっていた人には申し訳ないと思う。田中被告には、なぜこんなことをしたのかすべて話してほしかった」と述べました。

愛知県 大村知事「大変重い判決が下った」

愛知県の大村知事は「民主主義の根幹を揺るがす極めて悪質な戦後最大の署名偽造事件に、大変重い判決が下ったと思っています。首謀者である被告の裁判でも、誰が偽造の費用を出して指示したのか全体の事実関係が明らかになっていないことが大変残念だ」と話していました。