池袋暴走事故から5年 遺族が現場で交通事故防止への思いを訴え

東京・池袋で高齢ドライバーの車が暴走し、母親と幼い娘が死亡した事故から5年となる19日、遺族が現場を訪れ、亡くなった2人を悼むとともに、交通事故防止への思いを訴えました。

5年前の4月19日、東京・池袋で高齢ドライバーが運転する車が暴走して歩行者などを次々にはね、自転車に乗っていた松永真菜さん(31)と長女の莉子ちゃん(3)が死亡したほか、9人が重軽傷を負いました。

事故から5年となる19日、亡くなった真菜さんの夫の松永拓也さん(37)と父親の上原義教(66)さんが現場近くの公園に設けられた慰霊碑を訪れ、事故が発生した時刻に合わせ黙とうをささげました。

松永さんは、「命日になるとどうしても悲しくて、2人に会いたいという気持ちはぬぐえない。愛しているからこそ悲しみも増す。ただ、きっと天国で見守ってくれているはずだから、自分ができる最大限のことをして、頑張って生きたよといつか言いたい」と話しました。

また、上原さんは、「5年たっても気持ちは変わらず真菜と莉子に会いたいし、抱きしめたい。毎年この時期になるとなかなか寝つけず、悲しみだけが先にくる。2人のことを思いながら前を向いて生きていきたい」と話しました。

この5年の間に事故に関する裁判が終わり、松永さんは3月、刑務所の職員を介し被害者や遺族の心情を加害者に伝える新たな制度を利用して、事故を起こした飯塚幸三受刑者(92)とやりとりを始めました。

松永さんは、「つらい気持ちもあるが、被害者と加害者の立場をこえて対話を重ねることで、加害者としての経験や後悔を事故を減らすための社会の財産にしてほしい。交通事故を1件でも減らせるよう社会全体で考えていきたい」と話していました。

現場近くの慰霊碑では

事故から5年の19日、現場近くの公園では追悼に訪れた人たちが慰霊碑に花を手向けたり、手を合わせたりする姿が見られました。

近くに住む60代の男性は、「地元の人間にとってもショックな事故で、時間があれば毎年この現場に来るようにしている。車があるかぎり事故をなくすことは難しいかもしれないが、自分も運転する側なので改めて気をつけたい」と話していました。

また、妻と娘を亡くした松永拓也さんの友人で30代の男性は、2歳の息子とともに訪れ、慰霊碑に花を手向けました。

男性は、「私の子どもも亡くなった莉子ちゃんと同じくらいの年になってきた。自分の子どもが突然いなくなることを想像すると心が締めつけられる。少しでも交通事故がなくなればと思う」と話していました。