高校野球 夏の甲子園 午前と夕方の2部制を一部導入 暑さ対策で

高野連=日本高校野球連盟などは、ことしの夏の全国高校野球について、新たな暑さ対策として、試合を午前と夕方に分けて行う2部制を開幕から3日間に限って、導入することを決めました。

今夏の甲子園 「2部制」を一部導入へ 試合は午前と夕方に

「クーリングタイム」導入(2023年8月)

甲子園球場で行われる夏の全国高校野球では熱中症の症状を訴える選手も出るなどして、去年からは、5回終了後に選手たちが最大10分の休息がとれる「クーリングタイム」が導入されるなど暑さへの対策がとられてきました。

高野連などは19日、大阪市で運営委員会を開いて、8月7日に開幕することしの大会の日ごとの試合数や試合開始時間について議論しました。

その結果、新たな暑さ対策として、気温が上がる時間帯を避けて午前と夕方に分けて試合を行う2部制を開幕から3日間に限って導入することを決めました。

昨夏の甲子園 決勝(2023年)

この3日間はそれぞれ1回戦3試合を予定し、大会1日目は開会式をこれまでより30分早い午前8時半に開始し、第1試合は午前10時に開始する予定です。

第1試合が終了したあと、いったん観客も退場させた上で夕方の午後4時から第2試合、その後、第3試合を行います。

また、2日目と3日目は、午前8時から続けて2試合を行い、第3試合は夕方の午後5時から行うということです。

このほか、準決勝は第1試合を午前8時から第2試合を午前10時35分から行い、決勝は午前10時に開始するということです。

昨夏の甲子園 慶応が優勝(2023年)

一方、1日4試合を行う日は、これまでと同様、気温が上がる時間帯も試合が行われることから高野連などは、ことしの大会で観客の入れ替えなど課題を洗い出したうえで、来年以降の大会に向けて、1日4試合での2部制の可能性を探っていくとしています。

専門家「試合の設定の仕方に一石を投じる変更」

東京オリンピックに携わるなどスポーツの現場の暑さ対策に詳しい大阪公立大の岡崎和伸教授は、一部の日程で2部制を導入することについて「平均的に暑さ指数が一番高い時間帯を避けるという点では評価できる。試合の設定の仕方に一石を投じる変更だ」と話していました。

また「この時期に実施するということは暑いという状況はわかっていることなので、選手や関係者がこのほかにも暑さへの対策を実施した上で試合に臨むことが大変重要だ」と述べました。

一方で今後の課題については「最初の3日間のみ2部制の導入で、それ以降は暑い時間帯に試合が実施されることもあると思う。そこも合わせて変更していくことが可能であればしていくべきだ」と指摘しました。

具体的にはどのように実施?

春夏の甲子園で初めて導入されることが決まった2部制は具体的にはどのように実施されるのか。

高野連などでは午前と夕方の試合の間に安全に観客を入れ替えるため、球場側と協議した結果、少なくとも2時間半のインターバルが必要だとしています。

ことしの大会では、2日目と3日目に午前の試合が長くなり、第2試合が午後2時半を過ぎて、このインターバルが十分に確保できない場合、試合を中断して、翌日以降に打ち切った時点から再開する「継続試合」を適用します。

高野連などが過去5大会を分析したところ、第2試合が最も遅く終わったのは、午後2時4分で、平均で午後1時6分には終わっているということです。

高校野球では、去年からランナーを置いた状態から攻撃を始めるタイブレークを延長10回からに早めていることも踏まえて、高野連などでは試合が長くならないと想定し、暑さのピークとなる午後2時前後を避けられると判断したということです。

一方、1日4試合の2部制については「ことしのオペレーションでは午後5時から2試合を予定し、第4試合の終了が午後10時を過ぎる可能性があり、現状としては難しい」として、ことしの大会では実施しません。

また、2部制を実施する日は、入場券を午前と夕方で同じ料金で別々に販売することになりました。

このうち、
▽バックネット裏の中央指定席は2000円、
▽一塁・三塁の内野席は大人が1700円、子どもが500円、
▽アルプス席は800円、
▽外野指定席は大人が500円、子どもが100円となっています。

◇夏の甲子園 これまでの暑さ対策は?

炎天下で行われる夏の全国高校野球では、近年、選手の健康面を考慮してさまざまな対策がとられてきました。

2部制についても高野連などがおととし7月から検討を進め、去年の大会については、観客を入れ替える時間を確保できないなどとして、導入を見送る一方、引き続き、検討する考えを示していました。

「クーリングタイム」導入(2023年8月)

▽2017年~
暑さ対策として決勝の開始時間を気温が下がり始める午後2時に繰り下げ

▽2018年~
開会式や試合途中に給水時間を設定

▽2020年の夏に行われた交流試合~
黒色に限られていたスパイクの色について、熱を吸収しにくい白色が認める

▽2021年~
大会期間中の休養日を1日増やして計3日に

▽2023年~
●5回終了後に「クーリングタイム」を導入し最大10分の休息をとれるようにして試合中に選手たちが体の冷却や水分の補給にあてる時間を確保
●暑さ対策などの観点から控え選手の役割が増えているとしてベンチに入れる選手の数を2人増やし20人に

このほか、球場に配置する理学療法士が試合前に選手たちの体調確認やチーム関係者に熱中症対策の説明を行っているほか、試合中には、選手たちが給水できているかなどを確認しているということです。

◇「2部制」すでに導入の大会も

熱中症を防ぐため、気温が上がる時間帯を避けて試合を行う取り組みをすでに始めている大会もあります。

【全日本学童軟式野球大会】
このうち、毎年8月に東京の神宮球場で行われ、小学生の甲子園とも言われる全国大会「全日本学童軟式野球大会」は、おととしから試合を午前と夕方に分けて行っています。
1日に4試合を行う日は、午前8時半から2試合を実施したあと、気温が上がる時間帯を避けて、午後4時から2試合を行っています。

【全国高校野球京都大会(2018年)】
2018年の夏の全国高校野球京都大会では、準々決勝の4試合のうち、第3試合の開始時間を夕方に遅らせました。
この日の第4試合は午後10時半すぎに終了しました。