パレスチナの国連加盟めぐる決議案 アメリカが拒否権行使 否決

ガザ地区での戦闘が続く中、パレスチナを国連の正式な加盟国とするよう勧告する決議案が、安全保障理事会で採決にかけられ、理事国15か国のうち日本を含む12か国が賛成しましたが、アメリカが拒否権を行使して否決されました。

パレスチナは現在、国連で加盟国ではない「オブザーバー国家」の地位にありますが、ガザ地区で戦闘が続く中、将来のパレスチナ国家の樹立とイスラエルとの「2国家共存」への道筋をつくるべきだとして、アラブ諸国を代表してアルジェリアが、正式な加盟を勧告する決議案を安保理に提出していました。

国連への加盟が認められるには、安保理で勧告の決議が採択されたうえで、総会で3分の2以上の賛成を得る必要があります。

18日午後、日本時間の19日朝、行われた採決の結果、理事国15か国のうち日本やフランスなど12か国が賛成しましたが、イギリスとスイスが棄権し、アメリカが拒否権を行使して、決議案は否決されました。

賛成した国のうち日本の中東和平担当特使の上村政府代表は、ガザ地区の厳しい状況に言及したうえで「当事者間の平和的な交渉を通じてパレスチナ国家の樹立を促すという観点に立って賛成した」と説明しました。

一方、アメリカのウッド国連次席大使は拒否権を行使した理由について「決議案が想定するパレスチナ国家と不可分なガザ地区で、いまもテロ組織のハマスが権力と影響力を行使している」などと述べ、あくまでもイスラエルとパレスチナの直接交渉による解決が必要だと強調しました。

上村政府代表「平和的な“2国家解決”しか道はない」

採決のあと、日本の中東和平担当特使の上村政府代表は記者団に対し、決議案が否決されたことについては「残念なことだが、この問題には時間がかかり、一朝一夕に解決できないということを示していると思う」と述べました。

一方で、「安保理のメンバーはほぼ同じ立場を示している。特に今のガザの厳しい状況をみて、この問題は平和的な『2国家解決』しか道はないという認識が関係国の間でさらに強まったと思う。そのためには当然話し合いが必要で、壊れた信頼関係や相互理解をもとに戻していく必要がある。非常に時間はかかると思うが、国際社会は基本的な共通認識を持っていると思う」と述べ、イスラエルとパレスチナの「2国家共存」の和平に向けて、各国と連携していく考えを強調しました。

イスラエル・パレスチナ双方の反応は

パレスチナを国連の正式な加盟国とするよう勧告する決議案がアメリカの拒否権で否決されたことについて、イスラエルとパレスチナの双方が反応を出しました。

イスラエルのカッツ外相はハマスによる奇襲攻撃から半年後にパレスチナを国家として認める提案は「テロに見返りを与えることになる」とした上で、「この恥ずべき提案に拒否権を行使したアメリカを称賛する」とSNSに投稿しました。

一方、パレスチナ暫定自治政府はアメリカによる拒否権の行使について「不公平かつ、倫理に反する不当なもので、国際社会の意思にも反するものだ」と非難したうえで、「この攻撃的な拒否権の行使は、『2国家解決』への支持を主張しながら、拒否権の行使によってそれを繰り返し妨害するアメリカの政策の矛盾を露呈している」などと批判しました。

また、ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスはSNSへの投稿でアメリカの立場はイスラエルに偏っているとして「最も強いことばで非難する」とした一方で、「賛成したすべての国の立場を高く評価する」と謝意を示しました。

林官房長官 “中東和平の実現へ 総合的に判断し賛成”

林官房長官は閣議のあとの記者会見で「安全保障理事会が適切な形で意思表示できなかったことは残念だ。わが国はパレスチナが国連加盟に関する要件を満たしているとの認識のもと、中東和平の実現に向けて、和平交渉を通じた国家の樹立を促進するとの観点を含め総合的に判断し、決議案に賛成した」と述べました。

また記者団から、今後パレスチナを国家として承認する考えがあるか問われ「わが国は当事者間の交渉を通じた『2国家解決』を支持し、独立国家樹立に向けたパレスチナの努力を支援してきた。国連加盟に関する安保理決議に賛成したことと、パレスチナを国家として承認することは別個の問題で、わが国の立場に変更はない」と述べました。