石川 輪島港 仮設の桟橋設置完了 海底を掘り下げる作業へ

能登半島地震の被害を受けて漁ができなくなっている石川県輪島市の輪島港で、仮設の桟橋の設置作業が終わりました。漁の再開には地震で隆起した港内の海底を掘り下げる作業が必要で、地元の漁協は港内にとどまる多数の漁船を仮設の桟橋付近などに移動させることにしています。

地震の影響で輪島港は海底が1.5メートルから2メートルほど隆起し、漁船の底が海底と接触して故障する可能性があるため、およそ200隻の船が漁に出ることができない状態が続いています。

漁の再開に向けては、漁船を沖側にいったん移動させたあと港内の海底を掘り下げる作業が必要で、船を移動させる岸壁付近に仮設の桟橋を設置する作業がこのほど終わりました。

仮設の桟橋は、1基当たり長さ34メートル、幅が4.2メートルのものを3つつなげたもので、高さは1.5メートルあり、岸壁と海面の高低差を縮めて船に乗り降りできるようにしています。

地元の漁協によりますと、桟橋付近には漁船を20隻から30隻ほどとめることができ、来週から移動を始める予定だということです。

残りの漁船は港内の別の場所に移動させる予定で、すべてを移動させたあと隆起した海底を掘り下げる作業が行われます。

また、地震で壊れた荷さばき所や製氷施設も復旧させていくことにしています。

石川県漁業協同組合輪島支所の上濱敏彦統括参事は「桟橋を設置することで作業が進み始めるので、復旧にむけた第一歩を踏み出せたと思う。仮の措置ではあるが早く港を復旧して部分的にでも漁を再開できるようにしたい」と話していました。

石川県輪島市の漁業者からは、漁の再開時期の見通しが立たず、十分な収入が得られない状況に不安の声があがっています。

山本伸治さん(60)は40年余り、輪島港を拠点に刺し網漁を続けてきました。

例年であれば、3月から5月にかけて漁の最盛期を迎えるということですが、地震以降は一度も漁に出ることができず、漁の収入はありません。

漁の再開時期の見通しは示されておらず、山本さんは「本当なら今は漁もあって、収入がよい時期だ。漁に出られないのは苦しい」と話していました。

月に数回、漁港の復旧作業の仕事がありますが、その収入は漁に出ていた時の1割にも満たない金額だということです。

山本さんは「漁師は皆、生活していくために耐えている。ことし漁に出られなかったらやめるしかない。少しでも漁ができるようになってほしい」と話していました。