ライドシェア 本格的な導入に向け実証実験始まる 神奈川 三浦

一般のドライバーが有料で自家用車を使って人を運ぶ「ライドシェア」の本格的な導入に向けた実証実験が神奈川県三浦市で17日夜から始まりました。

この実証実験は三浦市が主体になって行います。

市内では、マグロの水揚げなどで知られ、飲食店も建ち並ぶ観光地の三崎港周辺で夜間のタクシーが不足しているという指摘が出ています。

17日夜に、三崎港近くの観光施設で出発式が行われ、黒岩知事が「ライドシェアで帰りの足を確保し、飲みに出かける人が増えれば町が活性化していく。そんな流れをつくりたい」とあいさつしました。

このあと、実際にアプリを使ってライドシェアで配車を依頼し、自家用車に乗り込む実演が行われました。

ドライバーは、市内在住か、市内で働いている人に限られ、タクシー会社の運行管理のもと午後7時から午前1時までの間、稼働します。

県によりますと、初日の17日はライドシェアの自家用車が5台待機し、4件の配車依頼があったということです。

「ライドシェア」は、国が新たにつくった制度のもと、今月8日から都内など一部の地域ですでにサービスが始まっています。

県や市などは、ことし12月まで実証実験を行い地域のニーズや課題を把握したうえで、本格的に導入したいとしています。

実証実験のドライバーは

今回のライドシェアの実証実験でドライバーを務める出口彩さんは三浦市で暮らし、ふだんは看護師として働いています。

夜勤がない日など空いた時間ならできると考え、ドライバーに応募しました。

出口さんは「夜勤もしているので夜は強いほうだと思います。三浦の町がすごく好きなので、三浦のためになるのであれば、ちょっとやってみようかと思いました」と話していました。

出口さんら今回ドライバーを務める人は皆、自家用車を使って有償で人を運んだ経験はないため、事前にタクシー会社による研修を受けました。

研修会では、接客する時の注意点や、トラブルへの対応のしかたなどについて指導を受けました。

その間にタクシー会社の担当者は参加者の自家用車が安全に走行できるかどうか点検を行っていました。

実証実験が始まった17日夜、出口さんは勤務に入る前にアルコールチェックと体温の計測を行ってから、勤務に入りました。

配車はアプリで行われるため、ドライバーは自宅や、市内に設けられた専用の待機場所などで配車の依頼を待つことができます。

出口さんのもとになかなか依頼は届きませんでしたが、待機を始めてから2時間余りが過ぎた午後9時45分ごろ、ようやく初めての依頼が来ました。

出口さんは飲食店まで乗客を迎えに行き、事前にアプリ上で指定された目的地まで無事に送り届けていました。

出口さんは「お客さんを乗せる時や、アプリの操作が初めてなので慣れないところもありましたが、わりとスムーズにできました。安全面などを気をつけながらやっていきたい」と話していました。

地域の交通計画に詳しい専門家は

地域の交通計画に詳しい日本大学の大沢昌玄教授は、三浦市の現状について「残念ながら夜間人口で見ると元気がない状況になっている。電車で来たとしても観光施設がある三崎港までバスに乗って10分から20分程度移動しないといけないので、交通の便が担保されなければ、観光地としての三浦も危うくなってしまう」と指摘しています。

そうした中でライドシェアの実証実験が行われることについて「移動できる担保があることによって外出して、さらに外出先から家に帰れる担保もあることによって経済活動が回る。ライドシェアを活用することによって経済や観光が回るとういうのは三浦市らしい取り組みではないか」としています。

そのうえで、今月から都内などで始まったタクシー会社が運営主体となるライドシェアとは違って、県や市が関与して実証実験を行う手法について「行政が最初に支援することによって、民間が高いと感じるハードルを低くする。うまくいったら行政が手を引いて民間主体で行う。交通分野の官民連携がうまく取れているよいケースになるのではないか」と話しています。