拉致被害者家族が米国連大使と面会 “全被害者の帰国実現を”

北朝鮮による拉致被害者の家族が、日本を訪れているアメリカのトーマスグリーンフィールド国連大使と面会し、親世代が高齢となる中、一刻の猶予もないとして、すべての被害者の帰国実現に向け、さらなる協力を求めました。

日本政府の調整のもと、総理大臣官邸で行われた面会では、横田めぐみさんの弟で拉致被害者の家族会の代表を務める拓也さんや、母親の早紀江さんらと、アメリカのトーマスグリーンフィールド国連大使が顔を合わせ、林官房長官も同席しました。

この中で、国連大使は「家族の痛みや喪失感は承知しており、アメリカ政府として、あらゆる機会に課題を取り上げ、すべての被害者の帰国を目指して取り組んでいく」と述べました。

そして、拓也さんは「50年近く前から人権が著しく侵害されている問題で、親世代は高齢化しており、時間がない。すべての被害者の一括帰国がかなうまで、北朝鮮への制裁を緩めることなく、日本と連携し、引き続きの支援をお願いしたい」と訴えました。

また、早紀江さんは「一生懸命育てた娘に元気なあいだになんとか一目会いたい。これからも支援をお願いしたい」と述べ、すべての被害者の帰国実現に向け、アメリカ側のさらなる協力を求めました。

拉致被害者家族 活動方針への理解求める

北朝鮮による拉致被害者の家族は、アメリカのトーマスグリーンフィールド国連大使と面会したあと記者団の取材に応じ「親の世代の家族が存命のうちに全拉致被害者の一括帰国が実現するなら、わが国が北朝鮮にかけている独自制裁を解除することに反対しない」とする家族会の活動方針への理解を求めたことを明らかにしました。

面会のあと、横田めぐみさんの弟で拉致被害者の家族会代表の横田拓也さんは「私たちの活動方針を大使にお伝えし、『アメリカ側にも、国連にもこの方針を理解してほしい』と伝えました。大使には以前からこの問題を解決しようとする信念の強さというものを感じていましたが、実際に会うことでそのことを改めて確認することができました。北朝鮮にとってはこうした面会もプレッシャーになっていると思います。この人権問題・人道問題の解決のためにキム・ジョンウン(金正恩)総書記には勇気ある英断をしてほしいです」などと話しました。

また、母親の横田早紀江さんは「母親的な気持ちで捉えてくださっていると感じました。被害者が帰ってくること、そして会えること、それだけが私たちの願いですと伝えました」などと話していました。

さらに田口八重子さんの長男の飯塚耕一郎さんは「真剣に私たちの話を聴いて、私たちの気持ちに共感してくれたのが印象的でした。拉致問題の国際的なシンポジウムも含めて今後も連携していきたい」などと話していました。

林官房長官「関係国と緊密に意思疎通」

林官房長官は午前の記者会見で「大使は真摯(しんし)にご家族のことばに耳を傾けておられ、思いを受け止めていただいたと考えている。また『党派を超え、政権を超え、アメリカは常にすべての被害者の家族と共にある』という力強いことばをいただいた」と述べました。

その上で「解決に向け、引き続きアメリカをはじめとする関係国と緊密に意思疎通をしていく。拉致被害者家族も高齢となる中で、時間的制約のある拉致問題はひとときもゆるがせにできない人道問題であり、引き続き、すべての拉致被害者の1日も早い帰国の実現に向けて全力で果断に取り組んでいく」と述べました。