“もう少し話がしたかった” 熊本地震で死亡した大学生の両親

一連の熊本地震で2度目の震度7を観測した日から8年となった16日、当時、熊本県南阿蘇村で、自宅のアパートが倒壊して亡くなった男子大学生の両親がNHKの取材に応じ、父親は「なくなったものが返ってこないのは、間違いないということをやっと実感した」と息子への思いを語りました。

かつて東海大学農学部のキャンパスがあった南阿蘇村の黒川地区には学生およそ800人が暮らしていましたが、8年前の熊本地震で自宅が倒壊するなどして学生3人が亡くなりました。

このうち、当時、農学部の2年生で、自宅のアパートが倒壊して亡くなった大野睦さん(当時20歳)の東京の実家では、地震から8年となった16日に合わせて、家族や友人たちが集まり、睦さんをしのびました。

睦さんの父親の大野浩介さんは、NHKの取材に対し、「会えない、話せない、成長を見られない。もう少し話がしたかった。8年がたっても、どうやって立ち上がろうかというくらいで、なくなったものが返ってこないのは、間違いないということをやっと実感したという感じかも知れません」と振り返りました。

一方、「周りに応援してくれる人たちがたくさんいてくれたおかげで、きょうまでやってこられました。悲しい思いだけだときっと、今にはつながっていないと思います」と語りました。

母親の大野久美子さんは「睦が亡くなった日と、いつも行ったりきたりしているようです。今もいつでも一緒にいて、『そちらはどうですか』と問われている感じがします」と振り返りました。

また、ことし1月の能登半島地震については「睦と同じように、建物が倒壊して亡くなった方が多いと感じていて、『なぜ同じことが繰り返されるのだろう』と感じます。できることは限られると思いますが、考え続けることによって、何かが変わっていくこともあるのかなと思うので、考えることをやめないで、睦と考え続けていきたい」と話していました。